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第2章
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しおりを挟むウィスタリアは、タイミングよく入って来たことに驚き、あちらは起きていると思ってはいなかったようで、ウィスタリア以上に驚いていた。そ
それもおかしな話だ。ウィスタリアは寝ていると思っていても、一声かけるべきではないか?
しばらく固まっていたが、すぐに動き始めたというか。話し始めたのは、扉を開けた方だった。
しかも、大げさな声を出した。かなり演技っぽい気はしたが、ズカズカと近づいて来た。それも、ウィスタリアは初めてのことだった。
こんな無遠慮な使用人にウィスタリアは、未だかつて会ったことがなかった。
「まぁ! 天姫様、お目覚めになられていたのですね!!」
「天姫……?」
聞き慣れない単語にウィスタリアは、首を傾げた。
普通に話せばいいと思うのに芝居がかった感じで、手がやたらと動く彼女に胡散臭さを感じずにはいられなかったが、これが彼女の普通だとしたら……。
(できれば、今、応対したくないかも。絶対、真剣に取り合ったら、こっちが疲れるタイプだわ。普通の人と話したい)
ウィスタリアは、パッと見ただけで、そんなことを思ってしまった。
それは、彼女の癖のようなものだ。もっとも、そんな風に観察していても、あまりあてにならないこともある。初対面は特に難しいからわかりづらいが、それでも情報は多い方がいい。
(それにしても、見慣れない格好ね。あぁ、でも、図書館で見たことある気はするけど……。あれは、おとぎ話みたいな空想のお話だったはず。だとするとここは隣国ではないわね。……そう言えば、そこに天から舞い降りた姫のお話があった気がする。どんな話だったかまでは覚えてないけど。そのお姫様のおかげで、世界が良くなったとかだったかな)
そんな着慣れないし、見慣れない服を、当たり前のように着こなしていることにウィスタリアは、自分が知っている国ではないと直感した。
どうして、そんな格好をしているのかがわからなかったし、何なら自分も着慣れない服をまとっていて、ぎょっともした。
そこに気づいても良かったはずなのに気が動転していたようだ。やはり、まだ疲れているようだ。
(着てるものに気づかないって、相当よね)
とりあえず様子を見ることにした。下手なことを言うより、状況を把握したかった。
でも、女性はそんなウィスタリアに気づいていないようだが、ウィスタリアが疑問に思ったことに答えてくれた。
「はい。天姫様は、天より遣わされた方。この国の危機の時に現れると言われておられる方のことです」
「……」
女性の言葉に誤解があると思った。というか、誤解しか、そこにない。それだけは、その言葉だけで、寝起きのウィスタリアにもよくわかった。
だが、それを言ったところですぐに信じてもらえそうもないこともなかった。それを証明できるものをウィスタリアは持っていないのだ。
(これは、難題だわ。違うって証明するのは、どうすればいいのよ)
ウィスタリアは、頭を抱えたくなった。だからといって、そうだとも言いたくない。そんなことに頭を悩ませることになるとは、ウィスタリアは思ってもみなかった。
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