初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

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第2章

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「ウィスタリア様」
「何か?」
「ウィスタリア様は、ご存じないかもしれませんが、第二皇子は……」
「ご病気なのでしょう? すぐに侍医を呼んでください」
「恐れながら、侍医を呼んでも治療はできません。治る薬など、この世のどこにもないのです」
「完治しないから、治療できないと? こんなに苦しんでいるのに何の薬も出せないと? それは、侍医が決めることでは?」
「っ、」


女官が、レンを連れて戻ったのを見るなり、そんなことを言った。他の女官も、側に寄りたくないとばかりに離れたところにいた。


「ここに居たくないなら、今すぐ出て行っていいですよ。その代わり、もう二度と来ないでください。そんな人の顔など見たくもない」


ウィスタリアは、怒りのままそう言葉にした。すると女官たちは、我先にと殆どの者が出て行った。


「ウィスタリア様、侍医を呼びました」
「客室の準備ができました」
「……そちらの部屋にしたの?」


ウィスタリアは、どうしてわざわざするのか疑問に思っただけなのだが、先程の怒りが残っていたようだ。


「す、すみません。こちらの客室なら、外の光が直接入らないので、殿下には楽かと思って……」
「光が、駄目なのですか?」


レンは、こくりと頷いた。

女官は、身内に同じ病気の者がいるらしく、勝手なことをしたとウィスタリアに謝ったが、ウィスタリアは嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう。あなたたちの名前は?」
「カヤと申します」
「フヨウです」


レンを客室で休ませていると侍医がやって来た。急いで来たらしく、汗だくで肩で息をしていた。


「殿下! 何が大人しくしているですか!! 今日という今日は、しばらくの間、薬湯を飲んでいただきますからね!」
「……勘弁してくれ。あれは、不味くてかなわない」


侍医とは仲がいいようだ。ウィスタリアは、子供のようなことを言うレンに、かつての幼い頃の妹が駄々をこねている時のことを思い出してしまった。


(どんなに具合が悪くとも、苦すぎるからって薬を飲まずによく悪化させていたっけ。……懐かしい)


自分を殺した妹を思い出したのとフロリアンにそっくりなだけでなく、そっくりな彼がジュニパーを選んだことを思い出して、泣きそうな顔をしてしまった。

そっくりでも、名前が似ていないことにホッとしていた。


「ウィスタリア様。大丈夫ですか?」


カヤが目ざとくウィスタリアが泣きそうなことに気づいた。フヨウも、ウィスタリアを見て悲しげにした。

2人共、レンのことを心配していると思ったようだ。


「ウィスタリア様……?」


侍医だけが、きょとんとした顔をしてウィスタリアを見ていた。そんな侍医にレンは、呆れた顔をしていた。


「私の天姫様ですよ。天姫様、彼は私の子供の頃からの侍医のスオウです」
「へ? っ、こ、これは、失礼いたしました!!」


どうやら、患者である殿下しか手に入っていなかったようだ。いつもと違う部屋に呼ばれたのも気づいていなかったようだ。


「スオウ。天姫様を先に見てくれ」
「いえ、私は大丈夫です。少し疲れてしまっただけですから」
「駄目だ。私に触れたんだ。スオウ、診てくれ」
「殿下。以前から申し上げておりますが、伝染る病ではありません」
「それでもだ。病でなくとも、善くないものを呼び込んだかも知れない」


レンは、それが一番心配だったようだ。スオウは、オロオロしてレンとウィスタリアを見た。

ウィスタリアは、どっちも診てもらうことにして、その代わりお互いに処方された通りのことをすることで妥協することになった。


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