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第3章
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しおりを挟む(ここが、こんなにも思っていたのと違うことになっているのだもの。あちらの世界も思っているより酷くなっていないといいけど。……なってないか。あの病がバロメーターになっているはずだし、それにあの子が幸せなら、それでいい)
リーリエとなってからも、そんなことを考えていた。助けたい人たちは、元気に暮らしているという確信はあった。
それ以外のものたちがとんでもない目にあっていようとも自業自得だと思っていた。あの世界に戻りたいと思うこともなかった。
ここに戻りたかったわけではないが、心残りがあったのは事実のため、それをなくすのに頭を使うことにした。
リーリエは、王太子が王位継承権を放棄してからのその後のことよりも、プリムローズのことが気になった。
姉を殺してでも、幸せを手にしようとしたのだ。殺されたのに戻って来て、リーリエとなったというのに気にするのはおかしな話なのだが、あちらで見た思い描いたような妹にそっくりな女性と出会ったことで、あぁなる要素がこちらのプリムローズにもあったのではないかと思えた。
それと利用しようとした気持ちが消えることはなかったのも大きかった。やはり、祖父母までいかずとも、両親のように妹のことを煩わしいと思うところがウィスタリアにもあったようだ。
全くいい姉ではなかった。いい姉を演じていただけのような気がしてならなかった。
(生まれた時から苦労と共に生きていたことで、理想の妹となったのだとしたら、こちらのプリムローズは姉を殺したことに罪悪感を感じているのかすら怪しいものだけど。……そうなる方向に転がっていくのを止めなかったのよね)
思い通りになると思って喜んでいたのが、そうはならなかったことで、プリムローズは姉を殺す必要があったのかと今は思えているのだろうか?
祖父母の養子になり、わがまま放題にしていても味方になってくれていた唯一の人たちは、余裕がなくなってプリムローズに当たり散らすのも、多くなった。
時折、やらかしたのをもみ消すのとわけが違ったのだ。出来の悪い孫娘を養子にしたことで、散々な目に合うことになったが、そうなるようにしたのも祖父母がしたことだ。
しかも、実の姉をその手で殺したイカれた女。祖父母は、本当にそんなことをしたとは思っていなかっただろうが、どうやら本当のようだとなり、追い詰められるようにプリムローズのことで馬鹿にされる日々に腹を立てないことはなかった。
勘当されて可哀想だからと養子にしたが、それを後悔していた祖父母は周りに色々と言われて、プリムローズのやらかしたことで頭を下げない日はなかったのは目に見えている。
それは、ウィスタリアが殺されることになる直前にしていたことだ。簡単に想像はできる。
(それなのに本人は何をしたかわかっていないのよね)
どんなに常識を教えようとしても、祖父母が甘やかすせいで、それを覚えようとすらしなくなってしまい、必要ないと思ってしまったプリムローズに元々末の娘を疎ましく思っていた両親はとっくに諦めてしまった結果が、ウィスタリアが関わらない束の間の間にあぁなってしまったのだ。
(常識というか。いなくなれば、自分が幸せになれるって、考えを他所の令嬢にやらなくてよかったわ。あれを他の令嬢にしていたとわかったら、流石に勘当だけでなくて、今の私が罪を償わせていたわ)
でも、両親が罪を償わせるよりも勘当したのは、身内だから大事にしたくなかったのもあったのだろう。一番は面倒だったに違いない。
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