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しおりを挟む天唯の父親は、お見舞いに来たが芽衣子の顔色の悪さから長居を避けた。
丁度いいと言うのも変だが、怒鳴り声が聞こえて、廊下に出れば芽衣子の両親がいた。
芽衣子の両親は喧嘩ばかりしていて、離婚しても顔を合わせては喧嘩していた。この日も、芽衣子の顔を見に来たはずが、我慢ならない相手と鉢合わせて怒鳴り合わずにいられなかったようだ。
空いている部屋で話し合いが行われることになった。病院側も迷惑していたようだ。
「2人とも、いい加減にしてくれ!」
「もう、うんざり」
芽衣子の弟妹たちが、姉に会いに来て喧嘩し合う2人を見つけていた。そこに天唯の父親が現れたのだ。
「いい加減にしろ! 娘が、大変な時に何してるんだ!」
「俺の娘じゃない!」
「姉ちゃんのとこにまで来て、そんなこと言うことないでしょ!」
「そうだ。そんなのみんな知ってる。喧嘩したいなら、別のとこでしろよ!」
「生意気なこと言うな! 今まで、育ててやったんだぞ!! もっと感謝したらどうだ?!」
「なら、最後まで父親でいろよ!」
「そんなこと、できるわけがないだろ。俺の娘じゃないんだから。お前らもだ」
そこに別の人物の声が割って入った。
「なら、もういい。迷惑だから、ここには来ないで」
天唯に車椅子を押してもらった芽衣子が、そこにいた。
「芽衣子」
「母さんも、私の本当の父親を思い出して連れて来てくれるなら会う。でも、できないなら、お見舞いに来ないで」
「芽衣子。そんなこと言わないで、あなたは娘なのよ」
「だとしても、私は側にいてほしくない。会ってみたいのは、本当の父親よ」
その言葉にそれまで育ててくれた父親が逆ギレした。
「お前もか! この恩知らずが!」
「そうかもね。でも、これまでのことを全部台無しにしたのは、そっちが先でしょ」
そこから、芽衣子が具合が悪そうにしていても散々なことを言う親から被ったのは、天唯だった。声を荒げて怒鳴る姿は、手を上げようとした時に似ていた。
(デジャヴね。……そう、あの時も、きっと、私のことで何か言われたのね)
芽衣子は、そんなことを思ってしまった。流石に手を上げることはなかったが、芽衣子がいなければ誰かしらが手を上げていたかも知れない。
「ただの幼なじみだろ。黙ってろ!」
「そうだな。あんたは、俺のこと血の繋がった息子だと期待してたみたいだが、俺はずっと違うって知ってた。それと俺は、ただの幼なじみじゃない。芽衣子の婚約者だ。彼女を守るのは、当然だ」
「っ、」
血の繋がりがないとわかった途端、更に絶望した顔をしていた。そのせいか、大事な部分に色々言うことはなかった。
(そこまでは調べてなかったみたいね。……あれ? なんか、凄い言葉が付属してなかった??)
芽衣子の弟妹たちは、婚約と聞いて喜んでいたし、母も何か言おうとして、天唯の父親に笑顔で追い返されていた。それは、芽衣子も父も同じだった。怒鳴りつける元気もなくなったようで、酷く小さくなっていたかと思うと天唯の母のところに行かねばと思ったのか。走り出していて、色んな人に怒られる声が聞こえたが、残された者が追いかけることはなかった。
芽衣子は、ぼんやりしながら病室へと戻った。車椅子は、天唯が押してくれていて、2人とも黙っていた。
「浅見さん? 大丈夫ですか?」
「あ、はい。……多分」
看護師が、血圧を測って低すぎるとなり、ベッドで安静にすることになった。
「……婚約者?」
「悪い。揉めそうだと思って、親父に婚約したって先に言った」
天唯が、ようやく罰が悪そうに答えてくれた。
「天唯。私は……。え? 先に言った??」
「婚約してくれ。いや、すぐにでも結婚しよう」
「天唯」
「君を1人で逝かせない。死なせたくない。家族になろう」
芽衣子は、その言葉に物凄く驚いていた。こんな勢いよく色々とすっ飛ばされてプロポーズされるとは思ってもいなかった。
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