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しおりを挟む「姉ちゃん、返事は、YESだろ?」
「そこは、はいでしょ」
「……2人とも」
帰ったはずの弟妹たちが、出入り口から顔を覗かせていた。芽衣子は頭を抱えたくなった。
(帰ったと思ったのに)
「天唯兄ちゃんに本当の義兄ちゃんになってほしいんだ」
「あんな親より、百万倍いい。俺らに姉ちゃんたちを祝福させてよ」
(こういう時は、いつも天唯の味方をするのよね)
弟妹たちにも説得され、芽衣子は婚約をすることにしたが、それでも本当に結婚する気はなかった。天唯が、本気だと思っていなかったのだ。婚姻届を見ても、本格的だなと思っていても全く信じていなかった。
弟妹たちが祝福できて、後味よくスッキリになればいいと思っていただけなのだが、結婚式の日取りやらドレスやらが、着々と決まっていくうちに本気なのだとわかった芽衣子は、再び頭を抱えたくなってしまった。
(まずい、まずい。本気になりすぎてる)
「天唯」
「今更、ここまでするとは思ってなかったなんて言うなよ」
「……」
芽衣子の幼なじみだけはある。天唯にもう一度、結婚してくれと言われて泣いてしまった。
「俺は本気だ。芽衣子、君を誰より愛してる」
「っ、」
「俺が一目惚れしたのは、芽衣子だ」
「え?」
「小さい頃にシーツを被って、結婚式ごっこしたろ?」
「……そんなこと、あったね」
「あの時に本物の結婚式をするなら、お前とだと思ってた」
芽衣子は、懐かしいと思ってしまった。
(全然乗り気に見えなかったけど。無理やり私が舞い込んでやったのに)
「それにファーストキスも、奪われたしな」
「……あれ? キスしたんだっけ?」
「覚えてないのか? お前のごっこ遊びは、いつもリアルだったのに」
「……」
芽衣子は、昔の自分に何をやってるんだと身悶えてしまったが、天唯は面白そうにしていた。
「覚えてないなら」
芽衣子の口に天唯の唇があたった。
「これが、ファーストキスだ」
「……天唯」
その日、子供の頃の夢を見た。芽衣子がリアルな結婚式ごっこをして、キスとは呼べない痛みを伴うキスをして、大泣きしたことを思い出して目が覚めてから笑い転げてしまって、頭の心配をされてしまったのは、ご愛嬌だ。
「芽衣子!」
「天唯。笑いすぎて苦しい」
「……は?」
緊急で連絡がいった天唯が、息を切らして病室に駆け込んで来た。
先生や看護師が、何とも言えない顔をしていた。
「芽衣子。具合は?」
「息苦しいのは、笑いすぎて辛いだけだから、絶好調よ」
「……夢か?」
「えぇ、懐かしい夢を見たわ」
天唯は、頭は正常だとわかってくれたようで、先生たちを病室から出したのは、すぐだった。
それでも、心配して、何かあればナースコールを押すように念押ししていた。
「芽衣子」
「リアルごっこ遊びを思い出したの。とても懐かしい夢だったわ。小さい頃にした結婚式よ」
「……それで、どうして爆笑するんだ?」
「本当のファーストキスした直後2人で大泣きしたでしょ?」
「まさか、それを思い出して笑ってたのか?」
「血だらけになって痛みで、綺麗さっぱり忘れていたみたい」
それを聞いて、脱力したように天唯は芽衣子を抱きしめた。
「……連絡きて、心臓が止まるかと思った」
「天唯」
「慌てすぎて、車にも轢かれそうになった」
「っ、」
「それなのに笑ってるだけで、頭の心配されてるとは思わなかった」
怒るかと思えば、芽衣子を怒ることはなかった。ただ、二度目のファーストキスからキスをするのが当たり前のようになっていたが、幼い頃のように血だらけになることはなかった。
(彼には誰よりも幸せになってほしいな)
芽衣子が、幼なじみに思うことは、そればかりになった。
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