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ラティーファとナーシャルディーンの結婚式は、そんなことがあって延期になった。
ファティマの養父は、ラティーファの父だ。あの、とんでもないヤズィードというのをファティマと婚約させたいとヤズィードの家に申し出たのは、この男なのだ。
何よりファティマが、目覚めないままでは結婚式などできるわけがない。実の父が、とんでもないのと婚約させたせいで、こんなことになったのだ。ラティーファは、結婚式の延期よりも、婚約そのものをなしにしようとまでしたくらいだった。
「ラティーファ。そんなことをしては、ファティマが目覚めた時に悲しむ」
「っ、」
「結婚式は、しばらく延期しよう」
「でも、私はあの家から、あなたの家に嫁ぐなど迷惑にしかならないことをすることがたえられそうもありません。義妹にあんなことをしたのとバージンロードを歩くだなんて、考えただけでも、ゾッとします」
「……それなら、養子先を考えたらいい。ファティマの実父も、養子縁組みを白紙に戻すと侯爵と話し合いをしているそうだからな」
「そう。……あんなことをされたら、黙っていられませんものね」
ラティーファは、義妹ではなくなることに悲しくなってしまったが、そんなことを言える立場ではない。ファティマの家族に申し訳なくて、仕方がなかった。
それがわかって、ナーシャルディーンも何とも言えない顔をしていた。
ラティーファは、父が王妃にいいように使われただけだと周りに知られることになった。実の娘は、それに妙に納得してしまった。いくら父でも、そんなことをするほどではないと思っていたら、唆されたとわかって納得してしまったのだ。
あの家を出ることにしたが、養子にしてもいいと言っていたところから断られ、他からも断られ続けることになってしまった。それもこれも、父が王妃に唆されたとは言え、王女を怪我させるようなのとファティマを婚約させて、連れ戻させようとしたせいだ。
実の娘の結婚式が間近だというのにそんなことをしたのだ。そんな実父のいる娘を養子にしたら、縁を切ったとしても、何かやらかさないわけがない。
それに王女に怪我を負わせようとして、彼女の世話係を怪我させてまで家に連れ戻させて、何をしたかったのか。
「あのままにしておけば、王子のどちらかと婚約できたかもしれないのに」
「本当よね。何をしたかったのやら」
「まぁ、あの家の元侯爵夫人も、何をなさりたいのかわからない方でしたけど」
「あれは、彼女のセンスがないだけよ」
そんな風に貴族の夫人たちは、侯爵家を笑いものにしていた。
こうなってしまうとナーシャルディーンの家の公爵家も、ラティーファを嫁にすると頑張るのも難しくなるのも、すぐのことだった。
「やはり、お断りしていただこう」
ラティーファは、ナーシャルディーンに恥をかかせられないとして嫌われようとしたが、駄目だった。もう、どうしていいかがわからなくなっていた。
そして、ナーシャルディーンも、途方に暮れながら、ラティーファが刺繍してくれたハンカチを眺めていた。
ファティマは、未だに目を覚まさない。彼女を頼るなんてしたくないが、こんな時にファティマならばと2人は考えずにはいられなかった。
「素晴らしい刺繍ですね」
「っ、」
そこに現れたのは、ファティマに似た顔をした少年がナーシャルディーンの側にいた。
助言がほしいと思っていたナーシャルディーンは、それが……。
「ファティマ……?」
「……私が、女に見えますか?」
「は? あ、いや、すまない。そういう意味では……」
「わかっています。まぁ、似ているでしょうね。ファティマは、私の姉ですから」
「彼女の弟か」
ファティマの1つ下の弟が、そこにいた。
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