見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

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千沙都たちは結婚してからも子供が生まれるまでは、変わらず猫の話題が中心になっていた。

それが、子供が生まれてからは、我が子の話題とお互いのことをよく話す温かな家庭を築くことができた。

でも、猫中心なのが、どうやら遺伝子レベルで組み込まれてしまっているようだ。


「にゃー」
「「え?」」


我が子の第一声が、猫語だったことに千沙都と理人は同じ顔して固まったのは、ご愛嬌ということにしておこう。


「パパとママだよ~」
「なぁ~」
「いや、何で猫語なんだよ」
「人間の言葉より、飼い猫の言葉を先に覚えたみたいね。やるわね」
「千沙都。そこ、感心するとこか?」
「逆に凄くない?」
「まぁ、確かに逆に凄いけど」


千沙都たちの家で飼われている愛猫のマーロが、どこかしたり顔をしているように見えたのは、気のせいだと思いたい。

お互いの実家の愛猫たちは虹の橋をみんな渡ってしまい、結婚してから飼い始めたのだが、何やらこの猫は麻呂サンに似ている行動をするのだ。

元々は野良猫だったが、他の猫に追われて必死になって千沙都の足元に来て助けを求めたのだ。


(なんか、デジャブを感じるわ)


追いかけて来た猫たちは、千沙都を見て何やらそいつをこっちに寄越せと言わんばかりに威嚇されたが、千沙都は引き渡すことはしなかった。

マーロを抱えて逃げたのだ。その後、病院に連れて行って、理人に事情を話して我が家で飼うことになったのだが、色んなところで麻呂サンを彷彿とさせるため、名前をマーロとした。

それが、いつの間にやら我が子に立派な猫になるための英才教育を施しているとは思いたくないところだ。


(赤ちゃんの側で、いい声で鳴いていたものね。これを狙っていたとしたら、なんて恐ろしい子育てをしてくれたんだか)


千沙都は、内心でそんなことを思ったが、立派な猫好きになるためにしていると思うことにした。猫になるためではないはずだ。


「まぁ、俺らの子供だから、猫好き確定だな」
「だね」


千沙都たちが、それに笑っているうちに我が子も楽しくなったのか笑っていた。


(癒されるな~。猫の赤ちゃんも可愛いけど、我が子となるとまた違うわよね)


こうして、千沙都は猫好きな夫と猫語を話す我が子と完璧なベビーシッターぶりを披露するマーロと幸せいっぱいで、笑顔溢れる毎日を送ることになった。

寧々のところの三つ子たちが大きくなり、千沙都のところに2年おきに子供が生まれていくことになり、三つ子に驚いていたのにそれを上回る子供の母親に千沙都がなっている未来が、訪れることになるとは、猫語を話す初めての子供の時には欠片も想像してはいなかった。

ただ、子供たちみんなが両親に負けず劣らずな猫好きになったのは、立派な猫のシッターマーロがいたからだと両親にも、義両親にも、寧々にすら思われ、千沙都たちも全く同じことを思った。


(マーロは、麻呂サンの生まれ変わりなような気がしてならないわ。私が椅子に座ってると足を枕にして眠るのとか。ピンチになると私を見るということか。他にも似てるところがあるのよね)


そんなことを千沙都は思っていたが、その話をしたのは理人にだけだった。


「確かに似てるかもな。千沙都のところに逃げて来るところとか。あの映像にそっくりだもんな」
「覚えてるの?」
「あぁ、覚えてる。顔つきも似てないか?」
「それ、私も思ってた。この、立派な麻呂眉があるせいだと思ってたけど」
「麻呂眉が、目印になってるのかもな。千沙都のこと、麻呂サンも好きだったのかもな。でも、猫好きだから、猫に生まれ変わって、君の元に来たのかもな」
「そうだったらいいな」


千沙都は、理人と話してそんなことを思った。

その後、目まぐるしい日常の中にほっこりとするものもまじることになって、千沙都の家は賑やかなものとなった。

成長する子供たちに万年新婚カップルのような両親だと思われることになっても、千沙都たちが変わることはなかった。


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