歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

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懐かしい人に出会うなり、さも当たり前のようにこう言った。


「ふふっ、幸せそうね」
「そっちこそ」


前世で皇女だった2人は、生まれ変わっても覚えていた。今は、どちらも皇女ではない。

会えないなんて思うことはなかったが、お互い探そうとはしていなかった。そんなことしなくとも、会えると思っていた。

でも、この日、この時に会えるとは思っていなかったが、驚くことはなかった。

探し回ることに時間を費やすよりも、こうして出会った時に幸せなのだとわかってもらえるように頑張っていて、そっくりな幸せの途中な姿に笑顔になった。

1つ前では対面して話せなかったが、血の繋がりがなくなっても、ソウルメイトのように繋がっていた。


「どうした?」
「あれ、知り合い?」


2人には、それぞれ旦那様がいた。お互いの指には、それぞれが似合う指輪がされていた。

旦那たちは、意気投合する妻に不思議そうにしながら、妻が仲が良いならと夫たちも仲良くなるのも早かった。いや、それこそ、どこかで会ったことがあるような近親感があった。

そんな彼女たちの周りには、気づけば前世で会ったことのある人たちがいたが、彼女たちのように覚えている者はいなかった。


「えぇ、私の親友であり、ソウルメイトよ」


2人は、こんな風に愛する人とお互いが幸せな家庭を築くまで、何度も生まれ変わっていた。

どちらか、片方だけでなく、どちらも幸せになる結末はほんの一握りしかない。それも、長くなかった。それでも、彼女たちは幸せだと思っていた。

なぜ、もっと幸せのままでいられないのかと思うのは、相手の幸せが短いことについてだけだった。

ファバン国が、大国となり、あのディェリンとリーシーのことが正しく語られるまでの、数百年の間、この2人があの国に生まれなかったわけではなかった。

どちらも、リーシーのように2人とも後宮から逃げることができたり、できなかったりしたこともあった。

中には皇女でなく、皇子と偽って存在していた時もあった。でも、どちらも皇女だと片方でも知れ渡らなければ、2人は長く生きられなかった。運命の人ともいられなかった。

その間のことも、何があったかを朧気に覚えていた。自分が悲惨な最期を迎えても、もう一方の幸せを願っていたからこそ、呪いのような呪縛から逃れることができた。

あの大国とまでなったファバン国は、地殻変動によって海底に沈んだ。他の小国も巻き込んで。

本当はもっと早くにそうなるはずだったのを2人の皇女の力とあの国の人々の思いによって、どうにかなっていただけだった。

その国が一夜にして消えたことで、2人はこうして幸せを噛み締める日々を送ることができているのだ。

あの国がなくなったら、幸せになれる。でも、そんな風に幸せになるより、そんなことをせずに幸せになってみせると段々と呪いのような運命に立ち向かったことで、これまでの全てが報われた気がした。

そんな2人は、ハグしあった。それにより、お互いが幸せなこととこれまでのことを走馬灯のように思い返して、号泣した。


「っ、どうした?」
「どこか痛いのか?」


2人の夫が慌てふためく中で、お互いがどんな思いでこれまで生きて来たかを抱きしめあっている間に見ることになって、自分のことより相手がどれほど頑張ってきたかで、お互い泣いていた。


「いい人に巡り会えたわね」
「お互いにね」


もう、これが最後だと思った。


「もう、終わりにしよう」
「そうね。もう、私たちが一緒にならなくとも、幸せになれるものね」


一番最初に願ったのは、2人共お互いの幸せだった。だから、これ以上の幸せはないと願うのをやめた。

これにより、2人は……。


「あれ?」
「あなた、私……」


それまで、抱き合って号泣していた2人は、なんでそんなことをしていたのかを綺麗さっぱり忘れることになった。


「やだ。なんか、ごめんなさい」
「いえ、私の方こそ、すみません」


夫たちは、妻たちが急に余所余所しくなったが、それを深く追求することはなかった。

ただ、妻たちが、双子のように。


「「末永くお幸せに」」


そう声が揃って、それに驚いて笑う姿に号泣し始めた時よりも、感じ入るものがあった。

とても眩しいものを見た気がした。

こうして、2人は本当に幸せな人生を送ることができた。

そんな2人の仲睦まじい姿を羨み、彼女たちの周りには人が溢れて、みんなが笑顔になった。

記憶をすっかりなくした2人が、この後、何度転生しても、出会うことになっても前のように深く関わることはなかったが、何度生まれ変わっても諦めなかった2人は、別の困難にあおうとも、それに屈することはなかった。


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