異世界ダンジョン総合学園へようこそ!

gulu

文字の大きさ
14 / 61
~いちがっき!~厳冬のキリギリス

13話目:価値と呪いの押し付け合い

しおりを挟む
 一味を引き連れてダンジョンに向かう≪ドルイド≫のグループに声をかける。

「げへへへ……そこのお姉さん方、ちょいと耳よりな話があるんでゲスがちょいとお時間を――――」

 しかし、一瞥だけされてさっさと立ち去ろうとしていた。

「あー! 勿体ないなー! 四年生の先輩も舌を巻くくらい良い装備があるから交換しようかなって思ってたのになー!」

 それを聞き、戦闘を歩いていたエリート様であるエメトの足が止まった。

「……それは事実ですか?」
「マジ、マジ! ワタシ、ウソ、イワナイアル!」

 舌を巻くというか飲み込んで何も言えなくなるくらい叡智な装備なのだが、まぁ嘘ではないからヨシ!

「エメト様、戯言を真に受けられては……」
「いいえ、事実でしょう。顔を見れば分かります」

 えっ……僕が本当のことを言ってるか、顔を見れば分かるくらい見ているってこと……?
 そ、そんな……ちょっとキュンってしちゃう♡

「あの人を上から見下そうとする表情。素人目であろうとも理解できるほどの逸品である可能性があります」

 キュンってしたのはハートじゃなくて心臓でした。
 たぶん不整脈とかそういうやつだと思う。

「しかし、我々にはもう先任の皆様から十分な支援と装備を頂いておりますが」
「……あれ、そうなの? 装備の調達とか困ってない感じ?」

 下級生全員の悩みかと思いきや、どうやら違うらしい。
 ず~っと同じ面子だから仲が良い≪ドルイド≫パーティーだと思っていたのだが、どうやら予想よりも仲間意識が高く、学年を超えて協力している感じか。

 なんかよく見たらちょっと光ってる装備もあるし。
 あれか、ゲーミングアーマーとかソードとかあるのか?
 光ればいいってもんじゃねぇぞ、薄毛の人に謝れ。

「装備に困ってないならいいや。お邪魔しやっしたー!」
「待ちなさい。そちらから声をかけておいて、何処へ行くつもりですか?」

 さっさと退散しようと思ったが、止められてしまう。
 パジャマパーティーのお誘いだったら嬉しいのだが。

「四年生すら舌を巻く装備をお持ちなのでしょう? 見せてください。それとも虚栄の大旗でも振りましたか? それなら失礼しました。あなたはそういう方だったということで」
「はあああぁぁ!! 嘘じゃありませんけどおおおぉ!? あのアラブスのパイセンお墨付きなんですがああぁぁ!?」

 その名前を聞き、取り巻きの人達がざわつき始めた。

「あの≪獣骨の狂戦士≫が認めるほどのものを……!?」
「いったい、どんなモノなんでしょう……」

 やっべ、パイセンの名前言っちゃった。
 でもいいや、死なばもろともって言うし。

 ここに漢の旗を立てる!
 ビキニアーマー被害者の会、参る!

「そうら御覧じろ! これが! ワイの! 最強の手札や!」

 そうして取り出すは輝けるビキニアーマー。
 誰もが目を奪われるビキニアーマー。
 言葉も奪われ誰も何も言えなくなるビキニアーマー。

 嗚呼、ビキニアーマー……ビキニアーマー…………。

「………じゃ、ぼく帰るから」

 やるべきことはやった。
 やるべきじゃないことをやらかしたともいう。

「待ちなさい。まだ私は評価を下していません」

 だというのに、このエリート様は帰してくれません。

「なんだよ何が評価だよ! 変態ってあだ名がド変態になるかドドド変態になるかくらいしか違わないやろ!?」
「あなたはいったい何を言っているのですか?」

 ちくしょう、なんて羞恥プレイだ!
 ウチの業界だとご褒美でもあり拷問でもあるぞ!?

「なるほど……逸らしの加護がついていますね。鎧部分の頑強性も、我々が持つ装備よりも遥かに優れている。これは上級生の方でも唸る逸品」

 でもビキニアーマーなんだぜ!?
 どんだけSSRであったとしても、ビキニアーマーという一点で全てのメリットを叩き潰す呪いの装備なんだぜ!?

「しかし、困りましたね」
「そりゃ困るでしょうよ。困らねぇ方が困るよ」
「これに見合うだけのモノを、こちらで用意できるかどうか」

 …………はい?

「エメト様、本気ですか!?」
「あんた本気でこれ着る気なの!? 正気に戻りなさいよ!」

 あまりの衝撃に、思わずお付きの人と一緒にツッコミを入れてしまう。
 いやダンジョンガチ勢だとは思ってたけど、ここまで人として大事なもの捨ててたら心配になるよ!?

「見て! よく見てこれ! 肌面積計算が八割占めちゃってる! オセロだったら負け確レベルの肌色よ!?」
「それが何か?」
「何か? じゃないの! こんなの来てたら痴女だって―――――」
「ロングケープを羽織るなり、クロースを身体に巻くなりして隠せばよいのでは?」

 ………………あっ!

「そ、その手があったかあああああぁぁぁ!!!!!」
「っ!?」

 バカバカ! ワイのバカ!
 そうだよビキニアーマーしか着ちゃいけないってルールなんてなかった!

 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!
 これならホルンに渡せばよかった!
 そうしたら最強の前衛が誕生したのに!!

 いや、それでもビキニアーマーを渡すのは難易度が高いな?
 というか布か何かを身体に巻いて隠すにしても……それ、逆にエドくないか?
 身体のラインとかくっきり出るし……その……豊満なところが……ねぇ?

 それならトゥラならどうだ!?
 あの幼児体型だったら……ダメだ、児ポ法で捕まる。
 あれは海を越えるどころか異世界の境界も越えてやってくる可能性が高い。

 結論、俺は間違ってなかった。
 酸っぱい葡萄理論かもしれないが、これで納得しよう。

「はぁ……まぁいっか。じゃ、ワシはこの辺で……」
「待ちなさい。アナタにまだ対価を渡していません」
「いや、いいよ適当で」

 もうオジサン疲れた。
 今日はもうさっさとご飯食べて寝たい。

「待ちなさいと言っているでしょう」
「ほわぁっ!?」

 だというのに、この高飛車お嬢様はガチ恋距離まで詰めてきてこちらを掴んできた。

「まさか、何も受け取らないつもりですか?」
「別にそれでもいいけど? ぶっちゃけ期待してないし」

 さっさと帰りたいという気持ちばかりが先行しまったせいか、地雷を踏んでしまったらしい。
 彼女の表情は変わらないが、その代わりに目と目が合わさるほどまで詰めてきた。

「若輩者ゆえ、私はまだ家名を名乗れません。ですが、それでも私は与える者の一族……数が多いだけの種族に施されるなど……あってはならないことです」

 め……めんどくせぇ……すこぶるめんどくさいぞ、このオナゴ!?
 ゲームだとこういう子が大好きだけどさぁ!
 実際にコミュるとなると厄介なことこの上ないよ!?

「じゃ~……貸しでいいよ! なんかあとで返してくれればいいから!」
「私は誰かに借りを作らない主義です」
「じゃあ丁度いいじゃん? 俺は借りを作ることができない人に貸しを作ることができた……うん、対価として十分じゃない!?」
「それで、納得しろとでも?」
「そっちの主義が安っぽい建前なら納得できないだろうね」

 家格が高く、誇りもある人物の主義を曲げるのだ。
 意味と価値としては破格のものだろう。
 少なくとも、それを言っている本人が異を唱えるなんてできないだろうがな!

 キサマの敗因は! クソ真面目で! プライドがクソ高いことだ!
 ガハハハハ!

「じゃ、僕ちんはこれで……」
「待ちなさい」
「まだあんの!? もう帰らせてよぉ!!」
「この借りを作ってもらいながら手ぶらで帰らせては沽券に関わります。いずれこの借りを返すまで、これを預けておきましょう」

 そう言って、彼女は指にはめてある十の指輪の内の一つを俺の指にはめてきた。

「構いません。その指は一度だけですが、どんな攻撃も防ぎます。ただし防いだら壊れ、ダンジョンから戻るまで直らないでしょう」
「へぇ~、聞く感じまぁまぁ便利そう。でもいいの? これボスの攻撃も防げるってことでしょ? 強くない?」
「あなたは最奥に行くまで、一度も攻撃されないのですか?」

 あー、一度しか防げないといっても道中で攻撃されるからスグ壊れるのか。
 ちょっとした保険みたいなもんか。

「エメト様、その指輪は―――――」
「構いません。私が良いと言っているのです」

 お付きの人が心配そうにしているが、彼女はそれをたしなめている。
 どうも性能だけじゃなくて、他にもなんか意味とか価値がありそうな指輪っぽい。

「この指輪、ほんとに俺が持ってていいの? なんか重い理由とかあるなら教えてほしいんだけど」
「……教えません」
「あー! そんなこと言っちゃうんだー!? 貸しのある男子が聞いてるのに教えないんだー!?」

 自分でもムカつくような顔をして煽ってみるが、彼女は余裕しゃくしゃくの表情をしている。

「ええ、教えません。先ほど、その男子に意地悪されたのでお返しです」

 そう言って≪ドルイド≫パーティーの面々と一緒に去って行ってしまった。

「……くそぅ、負けた!」

 貸しを作って一方的におねだりしたりアゴで使ったりしようと思ったのに、めっちゃ意味ありそうな指輪を渡すことで、それ以上の価値を押し付けてきやがった!

 五分五分に見えて完全に首輪をはめにきたぞアイツ!?

「これだから女ってやつぁよぉ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

処理中です...