異世界ダンジョン総合学園へようこそ!

gulu

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~いちがっき!~厳冬のキリギリス

19話目:実績解除『黒の破壊者』

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「すいませーん! 忘れ物したんでちょっと取りに戻りまーす!」

 自衛隊さんが慌てて止めようとしたけど聞こえないフリして再び異世界へダイビング!
 もちろん、厳格な命令系統な軍人さんはこっちまで追ってこれない。

 こちとら無敵の未成年様だからなァ! ガハハハ!
 自由になった俺を止められるものはない!
 陽気なステップを踏みつつ、<黒の遺産>が鎮座している広間へ入る。

 相も変わらず煙の牢獄の中では男も女も眠り姫。
 多様性に配慮しつつ新しい性癖開拓に御苦労さまなことですねぇ。

『オヤヤン、アヤヤン? 珍しいお客様のご登城ダ♪』
「うーっす、パジャマパーティーに参加しにきたゾイ♪ ワイも夢の中に入れて♪」
『一人寂しく眠れナイ? 残念キミは微睡むことすら許されてナーイ♪ ダメダメムリムリ……不許可不許可不許可拒否拒否拒否拒否拒絶拒絶拒絶拒絶!』

 メルヘンをポルノに書き替えてやろうと思ったのに、壊れたオモチャみたいになりやがって。
 そんなに俺みたいな異物を入れたくないか。

「そうか、そうか。つまりキミはそんな奴なんだな?」

 まぁいいか、こいつには消えてもらう運命なんだし。
 
「フ~ン、フフッフフッン♪ フ~ン、フ~ン♪」

 鼻歌交じりに俺は<黒の遺産>を運ぶ。
 演奏についてはバフ効果とかは特にない、ただ歌いたいから歌っているだけである。

『アララ~のラットット♪ ネズミは狂気の滑車を回ス回ス♪ キミ、もしかしてボクチンを外に出してくれるのカイ? もっともっと、いっぱい人を巻き込んで♪ 早くお友達が帰ってきてほしいンダ♪』
「大体あってるよ~♪」

 こいつの行動原理は知らんけど、少なくとも夢の中に取り込む人数が増えれば増えるほど都合がいいのだろう。
 こちらの妨害をせず、愉快に歌って踊って笑い転げてる。

 好きに騒いでてくれ。
 それがお前の最後だから。

「ほーら、見えたぞ。出口だヨーン♪」

 俺が指さした先には、日本へ繋がる光の入り口。

「そういえばさ、<黒の遺産>を開けた鍵なんだけど、服と一緒に消滅したんだよ。世界の理とかなんとかに引っかかって」
『…………????』
「分かんねぇか、寝すぎて呆けた頭じゃ。もうすぐでお前も消えるって話だよ」

 <黒の遺産>は破壊できるものではない。
 鍵も<黒の遺産>の一部ならば壊れないはずだが消滅した。
 つまり、異世界にモノを持ち込むならば相応の処理と加工が必要なのだが……それを行わなければ消滅するというルールを悪用するわけだ。

『正気カナ!? 狂気カナ!? <消失時代>の真実も消えちゃうサ♪ そんなことできっこナイヨ♪』
「なんで?」

 至極真面目に聞いてみたのだが、何故か黙ってしまったのでもう一度聞いてみる。

「なんで、できないの?」
『だから<消失時代>の真実モ――――』
「それ、俺になんか関係ある?」
『………………』

 あ、絶句しちゃった。
 もしかして、そんなんで止めようとしたの?

『ならば逆さまに聞いてミヨウ! <黒の遺産>を! 恩恵を消してキミは何を手にスル!? 何の意味があるのカナ!?』
「え? 別にないけど」

 再びの沈黙…………取りあえず話は終わりっぽいのでまた<黒の遺産>を運ぶことにした。

『オカシイよ! オカシイよネ!? 無価値で無意味な行為で真実を葬る理由なんてないヨネ!?』
「理由がないと動けないの? 大変ねぇ、道化師って仕事は。まぁそれもスグに終わるから、ゆっくりしていってね!」
『質問ニ! 答えなヨ!』

 めんどくせぇな、こいつ。
 無視してもいいけど、黙ってやっててもうるさそうだし相手してやるか。

「別に大した理由はないよ? ここでずっと皆が寝てたら困る人が、少なくとも一人はいるから起こきてもらいたいだけ」
『それダケ…………それダケの理由デ?』
「うん、それだけ」

 キミはそれだけの理由で消えるんだ。
 悲しいね、黙祷。

 あ、まだ消えてないんだった。
 あとで暇になったらやるよ、行けたら行くの精神で。

 そうしてあと少し……というところで、予想外のボスが立ちふさがってしまった。

「ッスゥー…………違うんですよ、エトルリア先生。こいつがやれって言うから……」
『!?!?!?!?』

 取りあえず罪を全力でなすりつけてみたが、エトルリア先生の視線はこちらに串刺しにしたままだ。
 どぉ~すっかなぁ~~~~………死んでも生き返るんだっけ、先生。
 ならあとはどう殺すかだけど――――――。

「まったく、お前は……ほれ、さっさと運ぶぞ」
「手伝ってくれんの!? てっきり止めるもんだとばかり!!」

 自分が想像するよりも<消失時代>の真実とやらは重要なものらしいが、それを押しのけてまで手伝ってくれるのは完全に予想外だった。

「ってかエトルリア先生、なんでバレたんすか!?」
「ワエ様は表層心理を読めると言うたであろう」

 うん、だから絶対に読まれないように口じゃ言えないようなクソ映画を脳内再生していたのだが……。

「先ほどまで読めていたものが、急に理解不可能な思考で埋め尽くされれば、何かすると言っているようなものであろうに」

 しまった!
 読まれないようにしたことで逆にバレたのか!!

 こうなったら、次からは常に頭の中でシャチを飛ばすか宇宙でパンジャンドラムを転がすしかない。
 ……狂うわ! そんなもん!

『なんでカナ!? なんでダロ!? お姫様までオカシくなっちゃッタ! ここは狂ったワンダーランド!? 正気も狂気も値札のないセールス品なのカイ!?』
「まぁ正直なところ、<消失時代>の真実とやらに興味はある。あるのだが……生徒の背中を押すのが教師であろう?」

 不敵に笑う先生と一緒に、俺は<黒の遺産>を扉の外へと蹴りだした。

『&~==!"==$((##』

 たぶん断末魔か何かだと思うが、あっちには統一言語がないので何を言っているか分からない。
 <黒の遺産>と呼ばれた棺は砂となって消え去り、学園の中に漂っていた煙も霧散していった。

 さ~て…………ここからが大問題だ!
 なんせ学園が丸ごと犠牲になったとしても構わないくらいのお宝を消滅させたわけなので、絶対に面倒なことになる。
 なんなら反逆罪とかで俺の首がチョッキンされる可能性もあったりするのだろうか?

 どうしよう、亡命しようかな。
 問題は受け入れ先が二次元くらいにしかないことだが。

 まぁいいけどさ、別に後悔とかはしてないし。
 ……とか思っていたのだが、ナーフ必須のバランスブレイカーが用意されていた。

「ワエ様がやった! すまんな!」

 会議場にいたお偉いさん、全員が頭を抱えてしまった。

 聞いた話になるが、どうもあの人の偉業は……
 ・数百年<探索者>で今も現役
 ・<黒の遺産>回収率300%、行きで二つ、帰りに一つ回収してきた
 ・ボスが出た瞬間に土下座してきた
 ・ダンジョンに入った瞬間に踏破した
 ・なんならダンジョンに入る前にダンジョンが破壊された話は有名

 うん、話半分に聞いても信じられない与太話である。
 だけど実際に戦った場面を見た後だと、ちょっと本当だと思えてしまう。

「し、しかしですねぇエトルリア様……<黒の遺産>を破壊しておきながら、これからどうするおつもりですか!?」
「ふむ……どうしたいのだ? どうさせたいのだ? 言ってみるがいい」
「い、いやっ! 私は、その……!」

 ひっでぇパワハラ現場である。
 本来なら責められるべき人物が偉すぎて、誰も言及できない。

「で、では! そこの生徒について――――」
「ワエ様が指示し、ワエ様の言った通りに働いた。つまり、ワエ様の責任だな!」
「……ッ!!」

 ごめん、エトルリア先生。
 守られてる自覚はあるけど、ちょっとこの人たちに同情してる。

「いや、ほんと~~~~に悪いとは思っているのだ! 思っているからこそ、逃げも隠れもせずこうして皆の前に出てきたのだからのぉ」

 多分ですけど、逃げたり隠れてもらった方が助かるんだと思います。
 そしたら有耶無耶にできるもん。

「ク……ククッ……クフッ……クフフッ……!」

 場違いな笑い声の主を見ると、口元を妖艶に隠している≪ドルイド≫のカシェル卿……例の賭けをした人だった。

「いやはや、失礼。エトルリア殿に追及するなど、我らにできるはずもなく。つまらぬ集まりでした」
「まったくである! これからテストを作る仕事もあるというのに!」
「それはさぞや大変でしょう。壊すよりも、作る方が手がかかりますので。皆の様、此度の騒動は<不朽の英雄>たるエトルリア殿の尽力と、そちら生徒によって解決した。それでよろしいのでは?」

 その決定に誰も異論を唱えることはできず、会議は踊ることもなく終結してしまった。
 そうして皆が席を立ったというのに、一人だけ残っていた。
 今一番苦手としている≪ドルイド≫のカシェル卿である。

「エトルリア殿、そちらの生徒をご紹介いただいても?」
「初めまして、ジョーンズ・リプリー・エイリアンです」
「あぁ、思い出しました。ヒビキ、でしたね」

 そうだね、日本の時に自己紹介してたね。
 そのまま忘れてくれてると思ったのに覚えててくれたんだ。
 僕、嬉しいな。

 嬉しいわけねぇだろ!
 忘れたままでいてくれよ!
 記憶の奥底でじっとしててくれよ!

「夢の中に連れ込まれなかったことから、ずいぶんと特別な生徒のようですね」
「うむ! 正直なところ、ワエ様にもはかり切れん問題児である!」

 本人の目の前で問題児って言っちゃったよ、この人。
 そこは超問題児とか、激・問題児とかにしてほしかった。
 そしたら幻滅してくれるかもしれないのに。

「<黒の遺産>を破壊した手腕など、色々とお聞きしたいのですが……もう指輪は送られているのでしたね。残念でなりません」

 ごめん、スーパーエリートのエメトちゃん。
 こんな重い意味の指輪を送りやがってとか思って、マジでごめん。
 今は超感謝してる。
 この指輪のおかげで、キミの同種である超怖い人から逃げられたんだもん。

「またいずれ、お話できる機会をお作りできればと。それでは、また」

 そう言って、最後まで優美な立ち振る舞いをしながら去っていった。
 エロいという感情よりも、得体の知れなさからくる怖さが勝ってしまった数少ない人だ。

「…………もしかしてあの人、超怒ってる? 俺のこと大嫌い?」
「ん? いや、かなり気に入ってる態度じゃぞ。名前を覚えられる様子から、相当な入れ込み具合だな」
「あれでぇ!? っていうか、なんか俺がやらかしたのバレてません!?」
「あぁ、あやつも表層心理を読めるからな。そこから察せられたのだろう」
「……ん? それはおかしくありません?」

 俺はエトルリア先生に読まれないよう、頭の中でクソ映画上映会を開催してた。
 表層心理を読めたとしても、俺の作戦はバレないはずだ。

「冷静に考えてもみよ。異世界で挑発してきた童が、突如理解不能なモノで読心を妨害。それから一日も経たずに<黒の遺産>が破壊される……何かやった張本人だと言っているようなものであろう」
「…………ハッ!」
「ヒビキ……お前はたまに、もの凄く馬鹿になるなぁ」
「先生! 助けてくれないの先生!?」
「いや、あやつの事はワエ様も苦手じゃし」

 嘘だろ!?
 一枚でサーチ・除外・バウンス・ハンデス・ループ処理できるぶっ壊れカードのエトルリア先生でも苦手なの!?

「小さい頃はもうちょっと素直で良い子だったんだが……今では立派に捻くれてしまって。あれじゃ、好きな子に意地悪するタイプだと思え。権力のせいで規模がシャレにならんことになっとるが」

 どうしてそんな大人に成長してしまったんだ!?
 誰が与謝野晶子を殺してあんな大人を作ってしまったんだ!?

「まぁ学園にいる間は手出ししてこんだろう。その先は知らんが」
「もしかしてもう墓地とか予約されてる!?」
「まさかとは思うが……≪ドルイド≫に狙われて、死に逃げできると思っとるのか?」
「何されんの俺!? 何するの≪ドルイド≫の皆さん!?」

 こうなったらもっと自衛手段を増やさないと!
 ヨーゼフパイセンみたいに権力ある人に恩を売って!
 レヴィ先輩みたいな人も巻き込んで!
 あとついでにアラブスのパイセンも引きずり込んで!

 それに本命の学園卒業の為に寄生できるパーティーも探して!
 他の皆にも見捨てられないようにコミュして!

 やることが……やることが多い……!

 楽をする為に色々と動いているのに、どうしてこんなに大変なことになってしまったんだ!?
 誰か教えてくれえええええええ!!!!

「自業自得というものだ。諦めよ」

 なんでそんなこと言うの!?
 正論じゃ誰も救われないんですよ!!!!!
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