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gulu

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~いちがっき!~厳冬のキリギリス

21話目:<忌み枝>のダンジョン

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 パワーレベリング……高レベルの人が低レベルの人のレベルを強引に上げる行為だ。
 オンラインゲームでは色々と物議をかもす行為なのだが、初心者がいるだけ恵まれてるだろいう界隈からの怨嗟の声は今日もどこかで響いているだろう。

 まぁそんな限界集落の話はさておき、こちとら現実でダンジョンに挑んでいるのでノーコストで強くなれるなら好都合である。
 自分がレベル上げに苦労したからお前らも苦労しろと言われても嫌なのでござる。
 というわけで、翌日すぐにパワーレベリングをすることになった。

「さて、ここで問題である! パワーレベリングとは言ったが、どうすると思う? トゥラ、答えてみよ!」
「エッ、いきなりボク!? えっと、えっと……先生がダンジョンについてきてくれて、モンスターを全部倒してくれるとか?」
「うむ、不正解! ワエ様のレベルではお前たちの≪ダンジョンの挿枝≫で出現するダンジョンには入れん! 強すぎてはじき出されるからな!」

 そう、ダンジョンは身体でモンスターは抗体。
 強すぎる侵入者は脅威として無理やり追い出されるようになっている。

「では他に何が考えられる? 次、ホルン!」
「あの~……そしたら、先生が入れるダンジョンに、ワタシ達が入る……ですか?」
「惜しいが違う! 自分より強すぎるダンジョンには、<ダンジョン耐性>が足りんせいで入ってもすぐ追い出される」

 じゃあパワーレベリングできないじゃん!

「さて、それならばどうする? ヨグ、答えてみるがよい!」
「ァッ……!? ェ、ェゥ……」
「うむ、愛い! 代わりにヒビキ、答えてやれ!」
「はい! 俺と結婚してくれるって言いました!」
「!?!?」
「馬鹿者! ワエ様が予約済みだ!」
「!?!?!?!?!?」
「まぁ冗談はさておき、ヒビキの答えを聞こう!」
「ん~、レベル上げに最適な低レベルダンジョンに入れてくれるとかですか? こう、めっちゃ逃げるけど倒したら一発でレベルが上がるモンスターが大量にいるダンジョンとか」
「うむ! 不正解! そんな都合の良いものはない!」

 ないんかい。
 そうなると、かなり手間暇がかかる方法になる気がする。

「あとは、先生が<レベルダウンポーション>を飲んで弱くなって、ギリ入れる強いダンジョンで敵を倒してくれるとか? 逆に<レベルアップポーション>みたいので俺達を強くして先生レベルのダンジョンに連れてってくれるとか?」
「わざわざレベルを下げるわけなかろう。それに、<レベルアップポーション>というものがあるなら、それ飲ませれば解決であろう」
「いや、ほら、時間制限付きとかそういう条件があるとか。あ~と~は~……まぁマトモな方法じゃないなぁって」

 先生と二人っきりなら言えるだけど、流石にプリプリでアキュアキュアな女子と一緒の時に言うのは憚られる。

「では正解を発表する! <ダンジョンの忌み枝>を使う!」
「初めて聞く単語ですけど、なんですかそれ?」
「お前たち、<ダンジョンの挿枝>は持っているな? ダンジョンを踏破していく毎に成長していくが、ごくまれに正常ではない成長をするものがある。それが<忌み枝>だ」
「字面的にやばそーな代物なんですが、大丈夫なものなんすか?」
「大丈夫なわけがあるか。お前の世界で無理やりダンジョンを発生させたのもこの<忌み枝>だぞ?」

 なにそれ!?
 初耳なんですけど、それ俺が聞いていいやつ!?

「<忌み枝>を挿せばそこがダンジョンと化す。しかも学園のものと違い、"死ねばそれまで"だ。代わりに、レベル制限はなくなるがな」
「デメリットの方がデカすぎないっすかね!?」

 今まで雑に死ねたのに一発でアウトは流石にやばすぎなのよ!

「だから<探索者>を常に募集して育成しておるのだ。ちなみに普通のダンジョンで稼げなくなった者は弱い<忌み枝>のダンジョンで命を繋いでいくことになる」

 自分のレベルで入れるダンジョンじゃもう稼げなくなったから、命を的にするってわけね……。
 けど一発で死ぬといっても弱いところならまぁ…………。

「先生、その<忌み枝>のダンジョンにもトラップは……?」
「普通にあるぞ。もちろん、致命的なものが山盛りだ」

 油断してたら普通に死ぬじゃんそれ!
 エグい! エグいよ異世界のダンジョン事情!!
 もっと夢とか愛とか希望とか詰め込んで!!

「だが見返りは大きいぞ! 屋敷にあった剣が、<忌み枝>によってダンジョン化した際にどんな攻撃も防ぐ魔剣になったりな!」
「へぇ~!……それ、聖剣って言いません? なんで魔剣って言われてるんすか?」
「味方が負傷した際、持っていた者も同じ傷を負うことから、代償の魔剣と呼ばれるようになったからのぅ」

 後衛を死ぬ気で守らないと自分も死ぬとか呪いの装備の類では?
 しかも<忌み枝>のダンジョンは死んだら終わりだから、下手したらそれを拾うことがもう罠じゃん。

「というわけで、今からお前たちを<忌み枝>のダンジョンでパワーレベリングする!」
「やだやだやだぃ! 死にたくないやぃ! というか途中でエトルリア先生が死んだらどうするんですか!? 俺達脱出できずにモンスターのエサっすよ!?」
「安心せい、大体の攻撃に耐性を持っとるから早々死なんし復活できる。なんならヒビキと初対面の時に笑い死にしたせいで、新たに耐性も手に入れたからのぅ」

 耐性で攻撃が効かない上に倒しても蘇るとかマジで何の種族なのアナタ。
 ってかそんな人を一度殺したの俺!?

「まぁ説明も終わったしさっさと行くぞ」

 俺達は逃げ出した。
 しかし、エトルリア先生に回り込まれた。
 そしてダンジョンの中に放り投げられた。

 女子組が周囲を見て震え上がっている。
 今までのダンジョンがアトラクションだと思えるくらいに、悪趣味なオブジェクトが陳列されてたからだ。

「くっさ!! ここくっさ!!!!」
「<忌み枝>のダンジョンに入った最初の感想がそれか、大物だのぉヒビキ」

 だって臭いもんは臭いんだもん。
 あとそこら辺のオブジェクトは死んでるから襲ってこないから怖くないし。
 生きてたら逆に怖いけどね!

「まぁ臭いと一緒にダンジョンも掃除するか。離れずついてくるようにな」

 そこからは、一方的な蹂躙が始まった。

 空から降り注ぐ黒の雨。
 輝ける大地に触れるだけで粒となって消えるモンスター。
 見えないところで断末魔だけが聞こえる道中。

 歩く度に勝手にこっちのレベルが上がっていくのを感じる。
 みんな怖くてエトルリア先生にしがみついてる。
 俺はやることないので後ろで演奏してバフしてる。
 たぶん誤差にもなってないけど。

「みんなー! 先生の邪魔になるからさー! 僕ちゃんに抱き着いた方がいいと思うんだけどー!」
「足手まといが足を引っ張られると余計に危険になるであろうが」

 そっすね、ぶっちゃけ先生の近くが一番安全っすよね。
 俺も抱き着きたいけど、抱き着ける場所がねえ。

 待てよ?
 涙目でアワアワしてるヨグさんとかホルンに抱き着けばいいのでは!?

「ちなみに変な事をしたら誤射するかもしれんからな?」
「変な事じゃありません! 純粋な気持ち! 純愛です!」
「純度100%なら性欲も純粋理論は止めんか」

 そんなことを言いながらも、ボスがいるであろう場所へと到達した。
 しかし、そこには何もいなかった。
 多分、途中で巻き込まれて死んだんだろう。

 死ねば終わりの理不尽なダンジョンだと思っていたが、エトルリア先生の方がよほど理不尽である。
 もう全部この人だけでいいんじゃないかな。

「うむ! 殲滅も終わったな! では次のダンジョンへ行くぞ!」
「え? ここだけじゃないんすか?」
「日帰りパワーレベリング合宿と言ったであろう。他にも確認されている<忌み枝>のダンジョンを踏破するぞ!」
「「「ええええぇぇ~~~~~!?!?」」」

 トゥラ達は涙目になって悲鳴をあげるか、それで止まるエトルリア先生ではなかった。
 ときにはお手玉のように、ときにひきずるように、無理やり連れていかれ……日暮れ頃にようやく解放された。

「うむ、うむ。レベルはそこまで高くない<忌み枝>のダンジョンであったが、お前たちのレベルを上げるには十分だったな!」

 三人娘は喋る気力もないくらい疲れ果てているのに、一日中ブッパしてたのに元気なエトルリア先生は本当になんなんだろう。
 ちょっとエッチな目で見るのが厳しくなってきたかもしれない。
 代わりに俺がエッチになればいいか!

「それにしてもヒビキ、お前はずっと楽器を弾いとるだけだったの」
「だってやることないですし、おすし」
「というか一度もミスしなかったが、ああいうのに慣れとるのか?」
「はい! 日本は安全で安心な国です! 平和で豊かな国です! ジッサイ・ホントウ!」
「途端にうさん臭くなったな」

 いや、異世界よりも安全だと思いますよ?
 でもその異世界からの外来生物ならぬダンジョンのせいでちょっとヤバくなってるんですけど。

「ふむ……ヒビキ、ワエ様の目を見よ」
「…………今、アイコンタクトで好きって言いました?」
「言っとらんわ。だがこれで分かったことがある……お前は鈍感すぎる!」
「な……なんだってぇー!?」

 つまり鈍感系主人公だったって……コト!?
 それならもうヒロインは近くにいたり!?
 ラッキースケベも転がってたり~!?

「さきほど殺気を当ててみたのだが」
「さっき殺気を当てたっていいました?????」
「まったく動じなかったな。他の三人はショックで気絶したというのに」

 後ろを見るとほんとに倒れてるやんけ!
 教師がそんなことしていいのか!?
 倒れた皆は誰が運ぶと思ってるんですか!!
 俺が運びます! 合法的に運ばせてください!!

「微妙な感覚でピンチを嗅ぎとる<探索者>は珍しくないが、その逆は珍しすぎて保存したくなるレベルだのぉ」
「なんか珍獣扱いされてる気がする」
「絶滅危惧種の方が近いか? 危険を察知できずに死んでいく個体だからな」

 ドードー鳥みたいだな俺。
 絶滅しないようにメスを要求する!
 メスガキでも可とする!!

「そのおかげか、演奏を失敗することはないと。ある意味、恵まれてると言っていいな。土壇場であろうとも、恐怖や緊張でミスすることがないと言えるからな」
「つまり<探索者>としての才能があると!」
「運が悪いと死にやすいがな。まぁ用心せい」
「運とか俺が一番好きで嫌われてるものなんですけど」

 だいたい何かあったら悪いことがあったらこっちに飛んでくるもん。
 というかこの学園に来てからもヤベーもんがピッチングマシーンの如く連射されてるもん。

「ふむ……思いついたぞ! 夏休み前の課題が!」
「このタイミングで言われると、すごぶる嫌な予感しかしないんですけど!?」
「なに、簡単な納品クエストである。指定されたものを確保しろというものだな!」

 おぉぅ……それ運が悪いと全然欲しいものが出てこないやつ……物欲センサーがビンビンに働くやつ……。

「そんな不安そうな顔をするでない。入手手段は問わん。つまり、ダンジョンで稼いでその金で調達するという手もある!」
「あっ、それなら簡単―――――」
「ただしヒビキ、お前だけはダンジョン内で手に入れてくるように」
「なんでぇ!?」
「お前の場合、絶対にあちこちに手を伸ばして調達するであろう? ダンジョンに潜る課題だというのに、それでは課題にならん」

 それは、そう。
 実際いろんな人に交渉して手に入れる気だったし。

 けどそれが封じられたということは、自力で入手しないといけないわけで……。
 つまり敵は本能寺ではなく、物欲センサーに有り!……というわけだ。

「フッ、その程度の課題……お茶でヘソのごまを取るようなもんですよ!」
「かなりの難題だな」

 へへん、見せてやるよ。
 異世界側に物欲センサーなんてものがないことを!
 そして……レア素材を一発で引いて、コモン素材は1000連沼った俺の豪運をね!

 さて……夏休み、俺帰れるかなぁ…………。
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