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~いちがっき!~厳冬のキリギリス

29話目:初めてのクラス会

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『ヨーシ、いくぜお前ら! ドッセェイ!!』

 掛け声と共に扉が破砕され、粉塵と共に男連中が雪崩れ込んできた!?

「ヒビキぃ! 覚悟ぉ!!」
「殺意が高すぎるッピよ!?」

 武器を片手に押し入り強盗がやってきた!
 俺は 目の前が 真っ暗になった。

 もうダメだ、おしまいなんだぁ……。

「――――っとっと、エメト……さん?」
「その手をお離しください」

 いざ煉獄というところで、エメトが指で術を放つモーションに入っていたおかげで男子達は止まってくれた。

 もちろん服はいつの間にか着ていた。
 良かった……これでなんとか首の皮一枚ギチギチに繋がった。

 俺は首の皮一枚しか残っていなくても、しぶとく生きてみせるぞ!

「ヒビキィ! なんで女子を……それも高嶺の花のエメトさんを連れ込んだんだぁ!?」
「待て! 落ち着け! その花、トゲどころか毒もあったぞ!? しかも即死クラスの!!」

 なんなら俺、そのせいで殺されるかどうかの瀬戸際だったぞ。

「なんだァ……どうしてトゲがあるって知ってんだ? お前、まさか脱がして……ッ!?」

 殺されるかどうかじゃなかった。
 まだまだ全然余裕で今際の際だったわ。

「違う! いいか、落ち着け! こいつがここにいるのには理由があって―――――」

 そこで俺の虹色の脳細胞が弾けた。
 それはもう、十連鎖するくらいに弾けた。

「いいか! 実はエメトさんは……俺たちに助けを求めに来ていたんだッ!!」
「「「な……なんだってえええぇ!?」」」

「彼女のパーティーメンバーが、ダンジョンで怪物に囚われてしまった……。乙女の涙に駆けつけるは騎士の本懐! 今こそ我らが救援に向かうのだぁ!」

 …………といった感じで大見得張って演説したものの、男子達の反応は悪い。

「オカシイ……こいつ、こんな騎士道を語るような奴だったか?」

 ギクッ

「どっちかってぇと、騎士道を騙って闇討ちするタイプだよな」
「な~んか隠してるな、こいつ」

 ギクッ、ギクッ

「……ナニモ、タクランデ、ナイヨ。ホント、ダヨ」

 疑いの視線が全身に突き刺さる。
 しかも返し刃がついてるせいで、下手に引き抜くと傷口がズタズタになりそうだ。

「隠し事なんかしてねぇし~! 解決したら≪ドルイド≫総出でハーレムウハウハ☆アハンイヤンプレイなことするだなんて約束とかしてないしぃ~!?」

 …………冷たい風が通り過ぎていく。
 扉が壊れてるせいだと思いたい。

「てめぇ! なんて羨ましいことを!」
「卑怯者めが! 私刑私刑私刑死刑死刑死刑!!」
「我と祖なる大父の名誉に従い、君に贖罪の機会を授ける。今ここに、清浄なる命をもって黒き罪を洗い流さん」

 アカン、死ぬぅ!!
 だがここで引いたら負けの土俵際だ!
 ここは押す! 押し倒してベッドにチェックインして勝つ!!

「はああぁぁ~~? なにが卑怯なんですか~!? 羨ましいならキミらも一緒に来ればいいんじゃないですか~~!?」

 しばらくの沈黙、そして―――――。

「エメトさん、オレ達に任せてください」
「クラスメイトのよしみじゃないっすか。頼ってくださいよ☆」
「か弱き乙女の助けを求むる声に応えずして、何が騎士か。どうか我に騎士としての本懐を遂げる機会を与えたもう」

 チョロイなこいつら。
 ちょっと先行きが不安になってきたぞ。

 そして肝心のエメトといえば、手を差し出す男共を前にどうすればいいか分からず、こちらに助けを求めていた。

「お前の問題だろ? なら、お前が頭を下げて、お前が言うべきことを言わなきゃアカンやろ」

 何とかするって言ったのは俺だが、言わせたのはお前だろう。
 仲間を助けたいって思ったのも、その為なら何でもするって決意を見せたのもお前だろう。

 なら、責任を背負うべきなのもお前じゃないとな。
 横からしゃしゃり出てきた俺が奪うわけにはいかんでしょ。
 大事なもんなんだろ? ソレ。

「……御三方。ご助力の申し出、大変嬉しく存じ上げます。このエメト、皆様の慈悲に深く感謝しております」

 そうして彼女は深々と丁寧に頭を下げる。
 それを見た三つ首のおバカ達は満更でもなさそうな顔をしていた。

 だが足りない、まだ足りない。

「オーイ、なに終わったような雰囲気出してんだ! 本番はこれからだろうが!」
「おぅ、そうだった! で、この面子でダンジョンに行くのか?」
「ハァ? 馬鹿言うんじゃないよ。もっと人呼んで来い!」
「呼ぶって……誰をだ? 多すぎてもダンジョンに入れねぇだろ」
「決まってるだろ、全員だ。クラスメイト……全員を呼んでこぉい!!」

 しばしの沈黙、そして――――――。

「「「はああぁぁぁ~~~!?」」」

 三人の絶叫が、寮中に響き渡った。

 それから数時間後……ものの見事に全員が集まってくれた。
 最大の難所が女子寮だったが、普段が品行方正のマジメ優等生だったエメトが頭を下げたことで何とか俺も特例として入れてもらうことに成功した。

 だってコミュニケーション不全に陥ってた奴に任せるの超不安だし。

 途中、何度も悲鳴が上がったけど俺は悪くない。
 女子寮だと油断して、だらしない格好をしてたお前らが悪い。

 いや、ほんとにさ……もうちょっと格好に気を付けようぜ……?
 ブラを片手にくるくる回しながら歩くのは流石にアカンよ。

 まぁそんな粉々に砕けた一部の女子の尊厳はさておき、エメトは集まったクラスメイト全員に事態の説明をしてくれた。

 過不足なく、端的に、とても分かりやすく。
 俺だったら一時間くらいは引っ張れる話の内容だが、ものの数分で終わってしまった。

 さて……そんな見るも涙、語るも涙、触るも涙で絵柄が一致した。
 大当たりでコインジャラジャラとなれば良かったが、場の空気までは一致しなかった。

「助けに行くったってなぁ……ダンジョンの残り時間どれくらいだ?」
「下手すりゃ二次被害でオレらまで<遭難者>になるよな……」
「レベル高い≪ドルイド≫のグループで駄目なら、どうしようもないんじゃねぇか……?」

 何人かの男子は乗り気だったが、他のクラスメイト達はかなり消極的だ。

 まぁそりゃそうよね。
 俺だって最初は同じ気持ちだったし。

 エメトにワンモア全裸土下座させるか?
 いや、多分俺の仕業だってことにされて殺される。
 比喩抜きで死ぬ。

 あ~ぁ、仕方ない……なんとかするか。

「じゃあアレだ。おみゃーらは仲が良くないクラスメイトだから見捨てるってことでいい?」
「いや! そこまでは言って―――――」

 一人が勢いよく否定したものの、言葉が続けられないようだ。
 つまり未練があるってことだな?

「いやいや、何もおかしくないって。我が身が可愛くて何が悪い? 何も悪くない、悪いはずもないよなぁ?」

 こうして逃げ道を用意してやってるのに、誰も頷かない。
 気まずそうに顔を逸らすだけ。
 倫理観がしっかりしていて、大変結構。

 中途半端な情は危険って、お母さん言ったよね?
 だからその代償を払ってもらうね。

 先ずは≪ホーンズ≫からだ。

「話が変わるけどさ、その≪ホーンズ≫の角って、それで完成系?」
「え? あぁ、まだ成長するけど……それがどうした?」
「いやぁ? 気になっただけ。……クラスメイトを見捨てても、その角って真っ直ぐに育つのかなって」
「ッ……!」

 一本角は真っ直ぐ綺麗に伸びてるほどいいんだよね?
 だから無知な俺が聞いてるだけだ。
 人を見捨てるような人間でも、立派に育つような角なのかって。

 「ヒトを見捨てるような奴の角は曲がるぞ!」とは言わない。
 あくまで相手に想像してもらうことが大事なのだ。
 ここら辺は現代ネットの強さというか悪さというか、そこら辺で学んだなぁ。

 んじゃ次は≪ライカンズ≫ね。

「そんで……≪ライカンズ≫の皆、不参加ってことでいい? ≪ヘイズ≫って呼ばれてる俺は参加するけど」

 その言葉を聞き、何人かが苦悶の表情を浮かべた。

 爪と牙という武器を持ち、強さこそが≪ライカンズ≫の象徴だと言われている。
 そんな勇敢な種族は尻尾を巻いて逃げて、ひ弱で非力な異世界人の≪ヘイズ≫は戦う。
 まぁ~、他の種族の目が一斉に集まってるこの場で逃げるのは、プライドが邪魔して無理よなぁ。
 
 大変ね、強くて誇り高い種族の皆様って。
 俺は弱いからなーんも気にしない。
 弱いってことは、こういうことが出来るってことなのよ。

「ところでさぁ――――――」

 このままドンドンと"意見"を叩き込もうとしたところを、エメトが肩を叩いて止めてきた。
 何をするのかと思ったら、凛とした姿勢で皆の前に立った。

「皆様方。無理なお願いをしていることは承知しております。クラスメイトであるにも拘(かか)わらず、困った時だけ頼るとは、なんと都合のいいことかということも重々承知しております」

「それでもどうか……どうか皆様のお力をお借りしたく。同胞……いえ、私の大切な友人を。そして皆様にとって知り得るはずであったクラスメイトの為に。どうか今一度、皆様との学園生活をやり直す機会をお与えください。今、皆様のお力こそが、必要なのです」

 そうして彼女はお手本のように深々と頭を下げ、再びクラスメイトの皆に顔を向ける。

 涙も弱さも見えないその顔では、同情をひくことは無理だろう。

 だが、言葉には力がある。
 彼女の持つ真剣さと並々ならぬ決意が感じ取れる。

 同胞が<遭難者>になるかどうかという瀬戸際。
 心の弱い者ならば、そのまま折れてしまう状況であっても、彼女はまだ自身の強さを保っていた。

 その彼女が頭を下げて頼み込んだ。
 あなた達の力が必要なのだと、助けてくれと。

「……やるか!」
「やろう!」
「オォー!」

 それはクラスメイト達の心に火をつけるのに、十分なものであった。
 先ほどまでの重い空気はなくなり、いつもと同じようなムードになった。

 その空気に感化されたのか、女子達がエメトを励ますように手を握る。

「初めまして、エメトさん。……フフ、おかしいよね。ずっとクラスメイトだったのに、今更初めましてだなんて」
「……そうですね、おかしなものです。私はそれにずっと気づけずにいました。そのせいで、彼女は……」
「ううん、エメトさんのせいじゃないわ。だから謝ったりしないで? むしろ頭を下げるべきなのはあっちの奴だから」

 ……あれ?
 なんで俺の方を指さしてるの?

「なんでだよ! 俺、悪くないよね!?」
「いや、常識的に考えてこんな夜中に呼び出して、しかも女子寮に侵入したなら頭の一つでも下げるべきだと思うけど」
「はあぁ~!? この問題の中心人物はエメトさんですよねぇ~? なら、頭を下げるのもエメトさんじゃないんですかぁ~!?」
「でも、意見を出したのはアンタよね?」

 それは……まぁ……はい………。

「じゃあアナタにも責任あるわよね? 全部の責任をエメトさんにだけ被せるのはスジが違くない?」
「まぁ……種族的には……そういう見方をする人も……いなくはない、ですかね?」
「種族関係ないから。アンタの常識の問題だから」
「常識なんてものは! 人によって違う! だからそれを基準のするのはオカシイなり!」
「じゃあ多数決とってみる? はい、こいつも悪いって思ってるひとー!」

 ≪ドルイド≫を除く、全員が挙手をした。
 まだ半年くらいしか一緒にいないのに、皆が一致団結できて、お父さん嬉しいよ。

「だけど僕は謝らない! だって頭を下げたら、せっかくの作戦が耳から地面に落っこちちゃうから!」
「アンタねぇ、諦めが悪いにも……待って、作戦?」
「そりゃあ普通にやったら負けるし」

 俺が何のためにお前たちを叩き起こしたと思う?
 鉄砲玉になってもらう為だよ!

 いくぜ、クラス総出の弾丸の嵐!
 化物に変わったクラスメイトを射殺しにイケぇ!!
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