異世界ダンジョン総合学園へようこそ!

gulu

文字の大きさ
43 / 61
~にがっき!~赤色の新星

42話目:6月■日アタレフの記録②

しおりを挟む
 これだけの赫色に晒されているにも拘わらず、死体の山は灰になっていない。
 むしろ死体そのものが燃える原因であるかのように見える。

 だというのに、小さな子供は必死の形相で赫色へ思い出という名の薪を焚べている。

 関係ない奴の思い出なんざどうでもいい。
 だが、一つだけ見過ごせないものがある。

 オレにとって幸せな思い出なんざ一つもなかった。
 いまさら欲しいとも思わなかった。

 だが……だが……。
 かつてオレが羨んだモノを、手に入れられなかったものを。

 惜しげもなく、投げ捨てて燃やすその行為には我慢ならなかった。

 赤色を同化したオレは思わずそいつの手を掴んでしまう。
 驚愕しながらもオレを見るその瞳の色は……赤と青の混じった、紫だった。

 ―――――瞬間、オレの意識が弾き出された。
 馬鹿なことをしたと後悔しても、もう遅い。

「アタレフ……くん……!?」

 意識は取り戻されたが、身体はまだオレが制圧できている。
 すぐさま≪ヘイズ≫の手を使い、わざとオレの喉を刺させた。

 無論、オレはスグに死にダンジョンの外へと弾き出されるが、これで逃げることに成功した。
 あとで何か聞かれたとしても、混乱したお前を取り押さえようとして失敗したとでも言えばいいだろう。

 そうしてオレははほとぼりが冷めるまで治療室で待つことにした。
 問題があるとすれば……奴の執念を甘く見ていたことだ。

「アタレフくん……見たよね?」

 目が覚めた時、目の前にはオレを見下す≪ヘイズ≫の顔があった。
 部屋が暗いせいで表情はまったく読めないが、喉に当たる冷たいモノが奴の意思表示だと理解した。

 ダンジョンで殺せずともダンジョンの外でなら殺せる。
 至極当然の考えであり、その可能性を想定できなかったオレの落ち度だ。

 オレここで死んだとしても、コイツまで累が及ばないだろう。
 誰もが認める優等生を疑うどころか庇う奴だらけで、オレは死んで当然の≪キメラ≫なのだから。

 しかし、コイツは予想外のことを言い出した。

「お願い……あの事は、誰にも言わないで……」
「……ハァ?」

 思わず呆けた声が出てしまった。
 今、主導権を握っているのはこの女だ。
 だというのに、なぜ懇願した?

 オレを脅迫して従わせることもできる。
 なんなら殺して口封じすることもできる。
 優等生のこいつに疑いはかからず、死んで当然の≪キメラ≫が勝手に死んだだけで終わる。

 だというのに、何故?
 誰も見ていないこの状況で、薄衣のヴェールを被り騙す相手もいないというのに。

「分かった。だが、一つだけ教えろ。あの死体の山……アレは、何だ?」
「多分……友達と……友達になるはずだった子と……知り合うはずだった人達……それと、家族のはず」
「……そうか。それだけ聞ければ十分だ」

 逆に聞きたいことが増えたが、何も尋ねないでおく。
 少なくとも、あの死体の中の一つにオレが含まれていないなら、踏み込む必要のない疑問だ。

「分かった、口外しないでおいてやる。だが、そもそも意味ないだろ? オレが何を言ったところで、誰も信じない。お前が一言否定するだけで済む話だぞ」
「―――――それでも、言わないでほしいの」

 部屋が暗いせいで、どんな顔をしているのか分からない。
 だが、表層心理の奥を覗いたオレには、あの赫色の中にいた子供の泣き顔を幻視してしまった。

 紫の瞳……奇しくも、オレと同じ色の瞳。
 誰とも違うオレが、唯一同じだと思えてしまった色。

「ハァ……分かったから、喉に当ててる刃物を離してくれ」
「え? これ、アタシの指だよ。まだ喉が痛いかもしれないから、痛み止めの奇跡を使ってるんだけど」
「紛らわしい……次からもっと温かい手でやってくれ」

 こうしてオレ達の繋がりかけた糸は切れた。
 ここまで関わり合うことは、金輪際ないだろう。

 それからあの日以降、オレとアイツはいつも通りの日常に戻った。
 前よりもこちらに絡んでくることはなくなったが、挨拶だけは欠かさずやってくる。

 監視しているとでも言いたいのか?
 どうでもいいことだ。

 心残りがあるとするならば――――――あの心の中にいた子供に、ソレをぞんざいに扱うなと言えなかったことだけか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

処理中です...