異世界転生して主人公殺害RTAの最速タイムを更新してしまった僕はこれからどうすればいいんでしょうか!?

gulu

文字の大きさ
22 / 30

22話:悲劇の主役との邂逅

しおりを挟む
 キリークに帰った僕は衛兵の詰め所に向かい、駐屯していた人達に今日の出来事を話した。
 ニュートマンティスの巣穴を潰した事、そしてタラークの人達と出会った事…結構な近場であるせいか、とても真剣に聞いてくれた。
 地図を見ながら目撃した場所と照らし合わせながら話をすると、徐々に険しい表情となっていった。

「ここか…結構近いな。そいつらから何か貰ったりしたか?」
「お礼という事で、お金を少々」

 僕がポケットからお金の入った麻袋を取り出すと、訝しむような目を向けられた。

「なぁ、その金は本当に―――いや、なんでもない」

 そう言って衛兵の人達は気まずそうな顔をして顔を背けた。
 この人達が言おうとした事は分かる…「キリークの情報を売って手に入れた金なんじゃないか?」と言おうしたのだろう。
 僕がお金を欲しているという動機があるのもそうだが、根本的には性別…いや、種族としての違いによって疑われている。
 キリークの人達は男と交わらない事でその純潔を保ち、それを破ればキリークではなくなる。
 そうなれば女の子だけではなく男の子も産む可能性があり、その男の子がもしかしたら他のキリークの純潔をも破るかもしれない。
 そうなれば裏切り者なんてものじゃあない、一族を滅ぼすテロリストとして排斥させられる事だろう。

 つまるところ、怖いのだ。
 別の種族が…男が……キリーク以外の全てが。
 
 そう考えれば僕に対して未だ警戒しているのも仕方がないと思えるし、それについて追求するのも野暮というものだ。
 というか転生者であるクレオが異端なだけである、将来的にはエイブラハムさんと同じ扱いになるんじゃないかな…。



「そうか…タラークの男共がいたか。少年、どうしてそいつらがタラークだと分かった?」
「しっかり整えられた装備が、全員分用意されてました。それだけの技術力と資源を持つとなれば個人ではありえません」

 夜、館の人払いされた個室でトリュファイナさんに衛兵さんに話した事と同じ内容を話す。
 流石に露骨に怪しんだりはされなかったが、何度も質問された。
 トリュファイナさんの質問責めが終わって一息ついたところで、今度は僕から尋ねる。

「もしもタラークとの戦争が始まったらどうしますか? こちらから攻め込みますか?」
「昔ならいざしらず、今はそんなことを望んではいない。……弱気であると思うか?」
「いいえ、そうは思いません。ただ、相手が…そして身内がそう思うかどうかは分かりませんけれども」

 僕の言葉を聞いてトリュファイナさんがやれやれといった感じで溜息をつく。
 やはり人を導く立場というのは、とても苦労するのだろう。

「我らキリークはタラークを山岳の奥地へと、海側へと追いやった。だから、もしも負けたらどのような報復があるか…それが恐ろしい、だから虚勢を張ろうとするのだ」

 実際、タラークでもそういった人達がいる。
 過去の恨みをつのらせて、憎悪を燃やし、そして征服する事に命を賭けている人達が。
 僕はゲームでその人達の味方をしたからよーく知っている。
 その時の僕には立派なお題目なんてない、ただ"ちょうどよかった"から手伝っただけである。

「和解は無理であろう。それでもせめて、互いに不干渉であればと思うのだが…それすらも難しいか」
「それは贅沢ですよ。家が隣同士の人達でも互いに不満を溜め込んで喧嘩する時があるんですよ」
「……そうか、贅沢な要望だったか」

 僕らは互いに苦笑し合う。
 今のこの世界は間違いなくゲームの時よマシだ。
 けれども、どうしようもない事は変わらず存在している。
 せめてタラーク側の意見でも分かれば…。

「ユリウス……」
「ん? 誰だそれは?」

 ふと、タラークについて考えているとひとりの名前を呟いてしまった。
 ユリウス・ソール、タラークの青年である。
 彼はタラーク権力者の一人息子でありながら、戦争に反対していた。
 タラークの中でも良識があり、人気や実力もある将来を熱望される若者であったのだが、戦争を望む人達にとっては邪魔でしかなかった。
 彼は権力者達によって斥候隊を任され、その任務を果たしていた。
 そんなある日、彼はキリークの兵に見つかってしまい、無惨な死体となって帰ってきた。
 これによりタラークの民は一丸となってキリークへの復讐を誓う事になったのだ。
 ……というシナリオであり、実際は利用されて暗殺されたのだ。

 ならば、それを食い止めれば戦争を止める事ができるかもしれない。
 僕はゲームの知識であることはぼかして、ユリウスという人物について説明する。

「なるほど…確かにタラークの意見が全て一致しているとは限らない。だが、不用意に接触して大丈夫なのか?」
「まぁ、僕はこれでも男ですから」

 クレオがキリークの伝統衣装…まぁ女物の服を好まないせいで、僕に着せようとする人がいるけど、こんなんでも男である。
 少なくとも、僕が男であるというだけでタラークの人達はいきなり襲ってきたりはしないはずだ。
 ……うん、別の意味でも襲う事はないと思う、思いたい。


 そして翌日から僕は前にタラークの人達と出会った場所の近くを散策する事にした。
 原作の時系列を考えればユリウスは死んでいない、今だからこそ彼と接触する事ができる。
 初日は空振り、そして二日目も会えない…。
 そして三日目、危険を承知で六本足のムコノに任せるように走らせると、山岳地帯の森で出会うことが出来た。

「皆、待ってくれ! 彼は大丈夫だ!」

 突然大きなトカゲが現れたせいでその場にいた人達は武器を構えたのだが、前に会ったその人だけは冷静に皆を落ち着かせていた。

「す、すいません! どうやら驚かせてしまったようで…」

 僕はすぐにムコノから降りて挨拶すると、他の人達は子供である僕を見て安堵していた。
 そしてリーダー格だと思われる男の人から質問がきた。
 
「久しぶりだね、マジックユーザーの少年。こんな所でどうしたのかな?」
「お金になるものを探してるんです。そちらは何を探してるんですか?」
「何も面白くない、ただの調査だよ」

 そう言って手に持っていた紙を丸めて、ポンポンと手で叩く。
 恐らく地図だろう。
 それが攻める為のものなのか、それとも守る為のものなのか、両方であるといった方が正しいだろう。

「……よければ、ご一緒しても?」
「ああ、構わないよ。キミはここら辺に詳しそうだね、頼りにさせてもらうよ」

 そうして僕とリーダーの人は握手をする。
 いきなりの飛び入り参加ではあるものの、他の人達も概ね好意的に僕に接してくれた。

 山中を歩きながら、僕は自己紹介をしながら探りを入れる事にした。

「僕はフィル・グリムです。皆さんはタラークの人達ですよね?」
「……あぁ、よく分かったね。どうして分かったのかな」
「ギルドの仕事をしているなら、そんな高品質な装備で統一されているのは不自然です。だから山賊でも無さそうですから、あとは消去法でタラークの人かなと思いました」

 正直に答えたせいで警戒されるかと思いきや、リーダーの人は苦笑されて返答してくれた。

「ご明察さ、俺らはタラークの斥候隊で色々と調べている。……なんでだと思う?」
「―――キリークの街を、攻める為ですか?」

 相手の核心に踏み込む勢いで、僕は答える。
 もしかしたらこの場で拘束されるかもしれないが、彼はその場で大笑いしてしまった。

「ハハハハッ! そうか、いやいや失敬…子供は想像力が豊かだ」
「ち、違うんですか?」
「まぁそういう連中もいるさ、だけど本来の目的は竜だよ。数日前に山に突然現れ、そしてどこかに去っていった。俺らは他に危険がないか調べているってわけさ」

 ………あぁ、あれが原因だったのか。
 どうしよう、僕も原因のひとつだから凄く気まずい。
 かといって竜言語を教えてくれましたとか、アズラエルの肋骨を埋め直されましたとか言えるはずもなく…。

「俺の名前はユリウス・ソール。よろしくな、フィル君」

 兜を脱いであらわとなったその顔は、僕が知る悲劇の男と同じものであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...