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18.やっぱり私は
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「少し落ち着いた?ダリシア」
「うん……ありがとう」
城から逃げ帰るように私は寮に戻り、ミルの部屋に飛び込んだ。驚きながらも何かあったと察してくれた彼女は優しく迎え入れてくれて、登城用の少し脱ぎづらいドレスの着替えまで手伝ってくれた。てきぱきと丁寧に畳んでくれて、ささっとお茶を出し、大量のお菓子を並べてくれる。
「ミル、お菓子の量がすごいわ……」
「ん?そう?何かあったらやけ食いに付き合うって言ったじゃない?このくらいはないとね!」
ニカッと笑うミルに泣きながら抱きつき、城での出来事を話した。泣きながら途切れ途切れになる話を、うん、うん、と頷きながらミルはゆっくりと話を聞いてくれた。
「それは驚いたし、ショックだったね、ダリシア」
ミルに頭をよしよしされ、さらに涙が浮かんでくる。
「よしよし、うん、好きなだけ泣きな~。……うん、でもダリシアはショックだったろうけれど、とうさま達の心配も分からなくない部分もあるというか……」
「……そんなの、余計なお世話だわ」
「それはその通りだけど。特にダリシアとうさまは心配だったんじゃないかなあ。ダリシアに決めてもらいたい部分もあったのかもよ?」
「私が?決める?」
「うん。この前も話したじゃない?周りは大半が殿下とダリシアはいずれ婚約と思っていたから、ダリシアに出会いがなかったじゃない」
「……それは、それだけの理由じゃないとも思うのだけれど」
自分のことは自分がよく分かっている。結局、結果がこんなわけだし。
「~!だから!それはね!」
「あれだけ優しくて私を否定しないでくれたルーエン様だって、演技だったのだもの」
優しくフォローをしようとしてくれる友人の言葉に被せてしまう。だって、こちらが現実だもの。
「ありがとう、ミル。いつも私の味方でいてくれて。すごく、すごく嬉しいのよ」
有難いことなのに、今は何だか受け入れられなくて。ごめんなさいと心の中で謝る。
「ダリシア……」
ミルが珍しく言葉を言いあぐねてしまっている。
「ねぇ!このお菓子、本当にいただいていいの?私の好きなものが沢山!」
「も、もちろんよ!ダリシアと食べようと思って、うちの商会から仕入れてきたんだから!」
これ以上、暗く落ち込みたくなくて。ミルも困らせたくないし、お菓子に話題を移すことにした。カリン様の商会は異国のものが沢山で、お菓子も色とりどりで見ているだけでも楽しくなってくる。
「ダリシア、これ、新入荷なの。味見してみて?」
「ありがとう~!」
ミルが次々に新作を出してくれる。なんて贅沢な時間。まだまだ油断すると泣きそうになるけれど、キラキラした美味しいものに沢山囲まれていると、少しずつ気分が上を向ける。
ミルはそんな私を微笑みながら見ていてくれる。
「……確かに、ルーエン様が読めないか……」
ふと、ミルが一人言を溢す。
「ん?何?」
「いやいや、次、これ!これもオススメ!」
「わ、可愛い包装!」
「でしょ?召し上がれ~」
二人で、やれこっちのチョコが苦めで美味しいだの、このキャンディーの細工が綺麗だのと盛り上がっていると、部屋のドアがノックされた。
「はい?」
「ミル、部屋にダリシアは一緒かい?お客様がいらしていて」
女子寮の寮母のヘレンさんだ。
「ええ、一緒です。お客様?」
「ルーエン=カリタス公爵ご令息だよ。早く出ておあげ」
「「!!」」
ヘレンさんの言葉に二人で固まった。
「うん……ありがとう」
城から逃げ帰るように私は寮に戻り、ミルの部屋に飛び込んだ。驚きながらも何かあったと察してくれた彼女は優しく迎え入れてくれて、登城用の少し脱ぎづらいドレスの着替えまで手伝ってくれた。てきぱきと丁寧に畳んでくれて、ささっとお茶を出し、大量のお菓子を並べてくれる。
「ミル、お菓子の量がすごいわ……」
「ん?そう?何かあったらやけ食いに付き合うって言ったじゃない?このくらいはないとね!」
ニカッと笑うミルに泣きながら抱きつき、城での出来事を話した。泣きながら途切れ途切れになる話を、うん、うん、と頷きながらミルはゆっくりと話を聞いてくれた。
「それは驚いたし、ショックだったね、ダリシア」
ミルに頭をよしよしされ、さらに涙が浮かんでくる。
「よしよし、うん、好きなだけ泣きな~。……うん、でもダリシアはショックだったろうけれど、とうさま達の心配も分からなくない部分もあるというか……」
「……そんなの、余計なお世話だわ」
「それはその通りだけど。特にダリシアとうさまは心配だったんじゃないかなあ。ダリシアに決めてもらいたい部分もあったのかもよ?」
「私が?決める?」
「うん。この前も話したじゃない?周りは大半が殿下とダリシアはいずれ婚約と思っていたから、ダリシアに出会いがなかったじゃない」
「……それは、それだけの理由じゃないとも思うのだけれど」
自分のことは自分がよく分かっている。結局、結果がこんなわけだし。
「~!だから!それはね!」
「あれだけ優しくて私を否定しないでくれたルーエン様だって、演技だったのだもの」
優しくフォローをしようとしてくれる友人の言葉に被せてしまう。だって、こちらが現実だもの。
「ありがとう、ミル。いつも私の味方でいてくれて。すごく、すごく嬉しいのよ」
有難いことなのに、今は何だか受け入れられなくて。ごめんなさいと心の中で謝る。
「ダリシア……」
ミルが珍しく言葉を言いあぐねてしまっている。
「ねぇ!このお菓子、本当にいただいていいの?私の好きなものが沢山!」
「も、もちろんよ!ダリシアと食べようと思って、うちの商会から仕入れてきたんだから!」
これ以上、暗く落ち込みたくなくて。ミルも困らせたくないし、お菓子に話題を移すことにした。カリン様の商会は異国のものが沢山で、お菓子も色とりどりで見ているだけでも楽しくなってくる。
「ダリシア、これ、新入荷なの。味見してみて?」
「ありがとう~!」
ミルが次々に新作を出してくれる。なんて贅沢な時間。まだまだ油断すると泣きそうになるけれど、キラキラした美味しいものに沢山囲まれていると、少しずつ気分が上を向ける。
ミルはそんな私を微笑みながら見ていてくれる。
「……確かに、ルーエン様が読めないか……」
ふと、ミルが一人言を溢す。
「ん?何?」
「いやいや、次、これ!これもオススメ!」
「わ、可愛い包装!」
「でしょ?召し上がれ~」
二人で、やれこっちのチョコが苦めで美味しいだの、このキャンディーの細工が綺麗だのと盛り上がっていると、部屋のドアがノックされた。
「はい?」
「ミル、部屋にダリシアは一緒かい?お客様がいらしていて」
女子寮の寮母のヘレンさんだ。
「ええ、一緒です。お客様?」
「ルーエン=カリタス公爵ご令息だよ。早く出ておあげ」
「「!!」」
ヘレンさんの言葉に二人で固まった。
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