34 / 163
第2章 鮮烈なるイモータル
第33話 キミと、ひと時を重ねて
しおりを挟む
「魔物狩りは得意じゃない。頼りにしてるぞ、エキスパート」
「もちろんです。あなたの出番などありませんよ、イドラ」
イドラは腰のケースからナイフを取り出す。マイナスナイフがある左側とは逆、右側のケースだ。
イモータルを唯一傷つけられる稀代のギフトも、魔物相手ではなんの役にも立たない。なにせ斬るたびに傷を治してしまう。むしろ迷惑だ。
そんなわけでイドラは魔物と戦う場合、自分の傷を治すときだけマイナスナイフを使い、もっぱら通常のナイフで応戦していた。当然、ギフトでもなんでもないただのナイフ一本で魔物を殺すのは難しく、イモータルよりはマシにしても決して油断はできないのが常だ。
ティティシップは群れで行動する魔物だったが、多くはせいぜいが三から五匹程度。九匹もいるのは稀であり、場所を選んで待ち伏せしてきたのも、中々に賢しらだった。
気は抜けない。ティティシップは二本の触角が花弁のように広がっていて、先から魔法による音波を発する。複数の個体が同時にそれをすることで、音波は重なって効果が増幅する。
魔法の音波は平衡感覚を奪う。一匹二匹ではどうということもないが、三匹も音波が重なればまともに立ってはいられない。五匹いれば意識も危うい。
九匹いれば——耳栓をしていても絶命は免れまい。
ヴェートラルを殺し直す前にこんな小物どもでつまずいてはいられない。イドラが柄を握る手に力を込め、前へ出ようとすると、それより先に無造作にミロウが群れの中へと歩み出していった。
「おいっ」
ミロウもその手に武器はない。単独で動くのは危険だとイドラが呼び止めようとすると、ミロウが近づいたティティシップがばらばらに崩れ落ちた。
「ギィ、ギィ——ッ!?」
音波を合わせる前に仲間のひとりを失い、ティティシップたちは狼狽の喚き声を上げる。その間も止まることなくミロウは腕を振るい、するともう一匹が胴体から真っ二つになった。
「一体なにが……」
ミロウはただ近づき、腕を動かしているだけだ。それで魔物が二匹、瞬く間に絶命した。
——光った?
イドラの視界で、闇夜の中、ミロウの手元の少し先になにかがきらめく。彼女はカンテラをリングで腰に提げていて、白い手の素肌が淡い光に照らされる。
(……手袋を外した?)
そこでイドラはいつの間にか、ミロウがずっと着けていたダークブラウンの手袋を外していることに気付いた。
しなやかな手。その細い指先から、何本か——ほとんど透明に近い糸が伸びている。
「すごい……あれもギフトなんですね。十本の糸が指先から、それぞれ独自に動いてる」
ソニアの強化された眼は、その十条の軌跡を完璧に捉えているようだった。
精密十指、その名の所以を理解する。
糸のギフト。それも、十本。見ようによってはギフトが十個あるようなものだ。もっともそれを別個に動かせるのは彼女自身の能力だろうが。
「イモータルならいざ知らず。群れるばかりが能の魔物ごときに、わたくしの輝糸は止められませんわ」
不可視の嵐が起きていた。光の筋がかすかにきらめいたかと思うと、近づく魔物の体が切断される。
もはや戦闘ではなく蹂躙、それか単なる作業だった。油断や慢心など入る余地なく、ミロウが繰り出す見えない死の線から逃れようとするティティシップを、周囲のエクソシストたちは的確に狙って仕留めている。
多人数での連携に慣れている動きだ。ソニアがひとり加わるだけでいっぱいいっぱいだったイドラには到底できない、団体行動が骨の髄まで馴染んだ戦い方。
「は。まさか、本当に出番がないとは」
最後の一匹は、エメラルド色の剣で斬り捨てられた。エクソシストの男性が息を吐き、剣を鞘に仕舞う。
イドラもまた、一滴の血もついていないナイフをケースに戻すほかなかった。割り入る隙さえなく、エクソシストたちは一瞬にしてティティシップの群れを動かない肉塊にしてしまった。ほとんどはミロウによるものだが。
「驚きましたかイドラ。これこそレツェリ司教様から精密十指の名を賜ったわたくしのギフト、そして我ら葬送協会の団結力です」
「ああ、驚いたよ。でもよかったのか?」
「——? よかったのか、とはどういうことでしょう」
「いや、だって、ここに陣を敷くんだろ? お前が魔物を解体殺害したせいで、もうその辺血の海なんだけど」
「……。あ」
最後の一匹のように、ただ斬られただけであれば出血などたかが知れている。
しかしミロウの糸によって倒された死骸は、四肢や胴体を切断され、散乱した夥しい血液で草の生えた地面を濡らしていた。
「あは。スクレイピーは死ねば砂になったのにねー、魔物は面倒だぁ。ミロウちゃんってばいいとこ見せようとして張り切っちゃった?」
鼻につく、むせ返るような血の臭い。その中でもベルチャーナはあっけらかんと笑う。
どう考えても、ここで野営は精神衛生の立場から厳しかった。
「…………すみません。ここで魔物を最後まで解体して、それからまた少し場所を移しましょう」
一気に声が弱々しくなったリーダーの指示により、一同は再度暗中の森を進むことになった。
*
魔物の解体は動物のそれと大差ない。血を抜き、内臓を除き、皮を剥ぐ。それから部位《パーツ》ごとに分割と、大まかに言えばこんなところだ。
簡単な作業ではなかったが、人数が人数だ。流石に手際もよく、イドラも手伝ったものの大した仕事もなくすぐに終わった。ワダツミによって水を用意できたのもかなり役立った。肉には若干桃の香りがついたが、別にいいだろう。
ティティシップを倒した広場の先にはちょっとした窪地があった。窪地は雨が降ると水が流れ落ちてきたり、魔物の接近に気が付きづらくなる恐れがあるため、通り過ぎてその向こう側で野営をすることになった。
一日を終える前に、空腹になった約三十の胃を満たさねばならない。食事の準備も皆で分担するとすぐに済んだ。
旅の食事など温かであれば十二分に豪勢だ。大鍋で煮込んだスープの中に、先ほどの魔物肉をぶち込んで火を通す。砕いたパンがたくさん入ってとろみのついた、北方のシチューに近い料理だった。
「器は行き渡りましたね。では、我らが神の恵みに感謝します」
軽い木の器にスープがよそわれ、匙とともに配られる。一同は分隊ごとに固まり、それを受け取ると思い思いの場所に腰を下ろした。
イドラたちパーケトの隊は、太い木のそばに自然と集まった。とは言ってもミロウは全体のリーダーとして前に出ているので、たった三人だ。
「我らが神の恵みに感謝します……これやっぱ言うんだな」
「まあねー、葬送協会も一応ロトコル教の一部だし。形だけでも言っとかないと」
「か、形だけでいいんですか……?」
メドイン村でも日常的に行われた食事の挨拶は、旅を始めるとつい欠かすことも多かった。神への感謝に意識を割く余裕が常にあるとは限らない。
ともかく、明日も早い。イドラは無造作にスープの中に匙を入れ、ティティシップの脚かどこかの肉をすくって口へ運ぶ。
硬い。そのうえ、噛みしめるたびに獣っぽさが口の中に広がる。スープの味は薄く、具材もほぼないため、肉の味をごまかすには足りない。あとちょっと桃の風味がする。
(……まあ、悪くないな)
それでも肉がまったくないよりはマシだ。そもそもの量も少ないのだし。
温かい飯が口にできるだけ恵まれている。この環境下では味も上出来だ。
「うーん、ザ・魔物のお肉って感じ。聞いた話では世の中にはおいしい魔物もいるらしいけど、ベルちゃんはあんまり食べたいとは思わないなー」
大きな木の根の上に座ったベルチャーナも、言葉とは裏腹ないつもと同じにこやかさで匙を動かす。
機械じみて胃に栄養を詰めながら、イドラが思案するのは別の事柄だった。
——おそらく傾向から、発作が起こるのは二時間後くらいか。
昨夜と同じ失態はできない。ソニアが発作を起こす前に、すぐ対処できるよう準備しておく必要がある。
「……? ソニア、食べないのか?」
ふと、その彼女を見ると、その手は匙を持ったまま止まっていた。
呼びかけられたソニアは弾かれたように顔を上げ、あからさまな作り笑顔を浮かべる。
「あ、すみません。ちょっと……」
そう言って、口に匙を運ぼうとするものの、やはり直前で止めてしまう。
「もしかして、さっき魔物の肉がマズいって言ったこと気にしてるのか? ごめん、あれは少し、僕も脅かしすぎたよ。別に吐くほどおいしくないわけじゃないさ」
「い、いえ。そうじゃなくて……」
まだ戸惑う雰囲気のまま、ソニアはゆっくりと小さな口に匙を差し込み、そこに載ったものを咀嚼する。やがてどこか沈んだ表情で嚥下した。
「やっぱり……あの、実は味をあんまり感じなくて。匂いなんかはわかるんですけど……たぶん、これもイモータル化の影響なんでしょうね。あはは……」
「——」
何故か申し訳なさそうに、ソニアは笑う。子どもらしくない卑屈な微笑。
味覚に支障が出ている。その事実を聞いてなによりも、そのことにまるで気が付かなかった自分に対してイドラは驚いた。
いっしょに過ごして、宿でも同じ卓を囲んで。これまでなにを見てきたのだろう?
——節穴か、僕の眼は!
「でもでもっ、この方がよかったのかもしれません。おいしくないっていう魔物の味、わからなくて済みますから」
そんな顔で笑うな。喉まででかかった言葉は、野菜と肉の味がほんのり溶けた液体で押し込んだ。
ソニアという少女の人生は、狂いに狂っている。一年前、体をおかしくされた時から大きくねじ曲げられている。
恐ろしいのは、犯人やその動機がまるでわかっていないことだ。彼女自身に一切の非がなく、怒りも後悔もやり場がない。どんな思いを抱えてあの集落の岩屋に閉じ込められていたのか、想像するだけで胸が痛くなる。
罪人である自分はいい。イドラは、イモータルなどという怪物にあろうことか感傷を覚え、そのせいで恩人を助け損なった。これはイドラにとって明確な罪であり、罰を受けるべきものだ。
しかし、ソニアは絶対に違う。誰かを貶めたわけでも、失敗したわけでもない。
理不尽に人生を奪われた。あるはずだった、幸福で平凡な日々を失わされた。
ただ、やるせなかった。世界はどこまでも残酷で、不条理ばかりが満ちているのだと否応なしに思わされた。
「……ああ、マズいなぁ、本当においしくない! 相変わらず最悪だな魔物の肉は!」
そうではないと信じたかった。イドラは衝動的に、胸にある名状しがたいもやもやとした思いを吐き出すように大声で言って、やにわに立ち上がった。
「うぇっ、イ、イドラさんっ!?」
「みんなもそう思うよなぁ! 魔物の肉はおいしいか!?」
周囲のエクソシストたちは、一瞬ぽかんとイドラを見たが——
「おいしくなーい! いいなぁソニアちゃんってば味覚薄いんだってー? この味を感じなくて済むなんて羨ましいー!」
にっと笑って、わざわざ周囲に届くように上げたベルチャーナの声で、目に見えて空気が変わる。
「そりゃあいい、魔物を喰うよりは腐肉の方がまだマシだろうよ!」
「言えてるな、幼児の作るメシ以下だ!」
「そうだそうだ! 味付けしたの俺だけど!!」
近い距離だ。もしかしたら、噂の不死殺しの一行がする会話につい聞き耳を立てていた者もいたのかもしれない。
「白髪の嬢ちゃんが羨ましいぜ!」
「まったくだ、ああ不味い不味い! こんなくそったれな飯を味わわなくていいなんてツイてるよ!」
大げさな悪態をついて騒ぎ、エクソシストたちは嫌な顔を作りながらも食事の手を進める。
先ほどまでも静かなわけではなかったが、これではちょっとした宴だ。
状況がわかっているのかいないのか。おそらくはソニアの事情など聞こえていない者が大半だっただろうが、流れに便乗する騒ぎたがりが大勢いたのかもしれない。
「みなさんまで、そんな……」
その軽さ、言ってみれば深い関心のなさが、ソニアにとって心地のいいものであればいいとイドラは願った。それこそが一年前、彼女の手のひらから零れ落ちた日常の正常さだ。
「迷惑だったか?」
我に返ると、軽率で思慮のない行動だったと自省した。不安に思いながら隣を窺うと、少女は「ううん」と小さくはにかんで、周囲と同じように器の中身を口にする。
さっきとは違う、自虐的でない笑みだった。
余計な、出すぎたことをしてしまったのではないか。そんな思いに駆られかけていたイドラはほっと息をつき、硬い肉を噛みしめる。
「……嘘つき。おいしいじゃないですか、このお肉」
少女の呟きは喧噪の中にかき消され、彼女の内以外には響かなかった。
*
下りきった夜の帳が、森の闇をさらに色濃く染め上げる。
深夜。耳を澄ませば虫の声。夜行性の獣や魔物に遭遇しないことを祈りながら、イドラとソニアは寝床を抜け出した。
「すいません、わたしのせいで……」
少しよろめいた足取りで、イドラに手を引かれたソニアが謝る。その直後、おぼつかない足は地面から浮いた木の根につまずき、大きく体勢を崩す。
「きゃっ」
「危ない! ……平気か?」
「は、はい。ごめんなさい」
前のめりに倒れかけた体を、イドラはすぐに受け止めた。
——熱い。
伝わるソニアの体温は、高熱を患っているかのように高かった。
発作の前兆。息も荒く苦しげで、動いていることもあって上気した顔はうっすらとだけ汗ばんでいる。
「無事ならいい。謝るのは、もうナシだ。これは決めたことなんだから」
「そう、ですよね。すみま——じゃなかった。えっと、お世話になります?」
「……それもちょっと違和感あるけども」
だが大事はない。本格的になる前にマイナスナイフで対処する。そのために皆のいる寝床を抜け出し、離れた方へと向かっているのだ。
「この辺りまで来ればいいだろう」
あまり遠くに行きすぎて、戻り方がわからなくなってしまったら笑い話にもならない。
ちょうど、草の柔らかくて寝そべるには都合のいい場所を見つけ、そこにソニアを座らせる。
「今夜も……お願いします。イドラさん」
服をまくって腹部を晒し、仰向けになるとソニアはいくぶん楽になったらしく、長く息を吐く。
呼吸によって、白いお腹がかすかに上下する。そこにはクモの巣を思わせる模様が淡く光って浮かんでいた。
「ああ。すぐに終えるから、力を抜いて楽にしてくれ」
「はい——」
潤んだ瞳が閉じられる。ソニアは身じろぎひとつせず、ただイドラを待っている。
きん、と短く、鋭い音が響く。ケースからマイナスナイフを抜いた音だ。手の内で柄を半回転させ、イドラは慣れ親しんだ獲物を逆手に持つと、屈みこんで少女に近づく。
「——……っ」
青みを帯びた、不死を殺す天恵が陶器のような肌を刺す。白皙の少女はその入り込んでくる負数の刃に身をゆだね、小さく湿った吐息を漏らした。
肌を重ね、静かな夜が過ぎていく。その数だけ、傷ついた心同士が混じり合い、つながりを強くする。
逢瀬のような密やかな儀礼を、草や葉の間から小さな虫たちだけが見つめていた。
「もちろんです。あなたの出番などありませんよ、イドラ」
イドラは腰のケースからナイフを取り出す。マイナスナイフがある左側とは逆、右側のケースだ。
イモータルを唯一傷つけられる稀代のギフトも、魔物相手ではなんの役にも立たない。なにせ斬るたびに傷を治してしまう。むしろ迷惑だ。
そんなわけでイドラは魔物と戦う場合、自分の傷を治すときだけマイナスナイフを使い、もっぱら通常のナイフで応戦していた。当然、ギフトでもなんでもないただのナイフ一本で魔物を殺すのは難しく、イモータルよりはマシにしても決して油断はできないのが常だ。
ティティシップは群れで行動する魔物だったが、多くはせいぜいが三から五匹程度。九匹もいるのは稀であり、場所を選んで待ち伏せしてきたのも、中々に賢しらだった。
気は抜けない。ティティシップは二本の触角が花弁のように広がっていて、先から魔法による音波を発する。複数の個体が同時にそれをすることで、音波は重なって効果が増幅する。
魔法の音波は平衡感覚を奪う。一匹二匹ではどうということもないが、三匹も音波が重なればまともに立ってはいられない。五匹いれば意識も危うい。
九匹いれば——耳栓をしていても絶命は免れまい。
ヴェートラルを殺し直す前にこんな小物どもでつまずいてはいられない。イドラが柄を握る手に力を込め、前へ出ようとすると、それより先に無造作にミロウが群れの中へと歩み出していった。
「おいっ」
ミロウもその手に武器はない。単独で動くのは危険だとイドラが呼び止めようとすると、ミロウが近づいたティティシップがばらばらに崩れ落ちた。
「ギィ、ギィ——ッ!?」
音波を合わせる前に仲間のひとりを失い、ティティシップたちは狼狽の喚き声を上げる。その間も止まることなくミロウは腕を振るい、するともう一匹が胴体から真っ二つになった。
「一体なにが……」
ミロウはただ近づき、腕を動かしているだけだ。それで魔物が二匹、瞬く間に絶命した。
——光った?
イドラの視界で、闇夜の中、ミロウの手元の少し先になにかがきらめく。彼女はカンテラをリングで腰に提げていて、白い手の素肌が淡い光に照らされる。
(……手袋を外した?)
そこでイドラはいつの間にか、ミロウがずっと着けていたダークブラウンの手袋を外していることに気付いた。
しなやかな手。その細い指先から、何本か——ほとんど透明に近い糸が伸びている。
「すごい……あれもギフトなんですね。十本の糸が指先から、それぞれ独自に動いてる」
ソニアの強化された眼は、その十条の軌跡を完璧に捉えているようだった。
精密十指、その名の所以を理解する。
糸のギフト。それも、十本。見ようによってはギフトが十個あるようなものだ。もっともそれを別個に動かせるのは彼女自身の能力だろうが。
「イモータルならいざ知らず。群れるばかりが能の魔物ごときに、わたくしの輝糸は止められませんわ」
不可視の嵐が起きていた。光の筋がかすかにきらめいたかと思うと、近づく魔物の体が切断される。
もはや戦闘ではなく蹂躙、それか単なる作業だった。油断や慢心など入る余地なく、ミロウが繰り出す見えない死の線から逃れようとするティティシップを、周囲のエクソシストたちは的確に狙って仕留めている。
多人数での連携に慣れている動きだ。ソニアがひとり加わるだけでいっぱいいっぱいだったイドラには到底できない、団体行動が骨の髄まで馴染んだ戦い方。
「は。まさか、本当に出番がないとは」
最後の一匹は、エメラルド色の剣で斬り捨てられた。エクソシストの男性が息を吐き、剣を鞘に仕舞う。
イドラもまた、一滴の血もついていないナイフをケースに戻すほかなかった。割り入る隙さえなく、エクソシストたちは一瞬にしてティティシップの群れを動かない肉塊にしてしまった。ほとんどはミロウによるものだが。
「驚きましたかイドラ。これこそレツェリ司教様から精密十指の名を賜ったわたくしのギフト、そして我ら葬送協会の団結力です」
「ああ、驚いたよ。でもよかったのか?」
「——? よかったのか、とはどういうことでしょう」
「いや、だって、ここに陣を敷くんだろ? お前が魔物を解体殺害したせいで、もうその辺血の海なんだけど」
「……。あ」
最後の一匹のように、ただ斬られただけであれば出血などたかが知れている。
しかしミロウの糸によって倒された死骸は、四肢や胴体を切断され、散乱した夥しい血液で草の生えた地面を濡らしていた。
「あは。スクレイピーは死ねば砂になったのにねー、魔物は面倒だぁ。ミロウちゃんってばいいとこ見せようとして張り切っちゃった?」
鼻につく、むせ返るような血の臭い。その中でもベルチャーナはあっけらかんと笑う。
どう考えても、ここで野営は精神衛生の立場から厳しかった。
「…………すみません。ここで魔物を最後まで解体して、それからまた少し場所を移しましょう」
一気に声が弱々しくなったリーダーの指示により、一同は再度暗中の森を進むことになった。
*
魔物の解体は動物のそれと大差ない。血を抜き、内臓を除き、皮を剥ぐ。それから部位《パーツ》ごとに分割と、大まかに言えばこんなところだ。
簡単な作業ではなかったが、人数が人数だ。流石に手際もよく、イドラも手伝ったものの大した仕事もなくすぐに終わった。ワダツミによって水を用意できたのもかなり役立った。肉には若干桃の香りがついたが、別にいいだろう。
ティティシップを倒した広場の先にはちょっとした窪地があった。窪地は雨が降ると水が流れ落ちてきたり、魔物の接近に気が付きづらくなる恐れがあるため、通り過ぎてその向こう側で野営をすることになった。
一日を終える前に、空腹になった約三十の胃を満たさねばならない。食事の準備も皆で分担するとすぐに済んだ。
旅の食事など温かであれば十二分に豪勢だ。大鍋で煮込んだスープの中に、先ほどの魔物肉をぶち込んで火を通す。砕いたパンがたくさん入ってとろみのついた、北方のシチューに近い料理だった。
「器は行き渡りましたね。では、我らが神の恵みに感謝します」
軽い木の器にスープがよそわれ、匙とともに配られる。一同は分隊ごとに固まり、それを受け取ると思い思いの場所に腰を下ろした。
イドラたちパーケトの隊は、太い木のそばに自然と集まった。とは言ってもミロウは全体のリーダーとして前に出ているので、たった三人だ。
「我らが神の恵みに感謝します……これやっぱ言うんだな」
「まあねー、葬送協会も一応ロトコル教の一部だし。形だけでも言っとかないと」
「か、形だけでいいんですか……?」
メドイン村でも日常的に行われた食事の挨拶は、旅を始めるとつい欠かすことも多かった。神への感謝に意識を割く余裕が常にあるとは限らない。
ともかく、明日も早い。イドラは無造作にスープの中に匙を入れ、ティティシップの脚かどこかの肉をすくって口へ運ぶ。
硬い。そのうえ、噛みしめるたびに獣っぽさが口の中に広がる。スープの味は薄く、具材もほぼないため、肉の味をごまかすには足りない。あとちょっと桃の風味がする。
(……まあ、悪くないな)
それでも肉がまったくないよりはマシだ。そもそもの量も少ないのだし。
温かい飯が口にできるだけ恵まれている。この環境下では味も上出来だ。
「うーん、ザ・魔物のお肉って感じ。聞いた話では世の中にはおいしい魔物もいるらしいけど、ベルちゃんはあんまり食べたいとは思わないなー」
大きな木の根の上に座ったベルチャーナも、言葉とは裏腹ないつもと同じにこやかさで匙を動かす。
機械じみて胃に栄養を詰めながら、イドラが思案するのは別の事柄だった。
——おそらく傾向から、発作が起こるのは二時間後くらいか。
昨夜と同じ失態はできない。ソニアが発作を起こす前に、すぐ対処できるよう準備しておく必要がある。
「……? ソニア、食べないのか?」
ふと、その彼女を見ると、その手は匙を持ったまま止まっていた。
呼びかけられたソニアは弾かれたように顔を上げ、あからさまな作り笑顔を浮かべる。
「あ、すみません。ちょっと……」
そう言って、口に匙を運ぼうとするものの、やはり直前で止めてしまう。
「もしかして、さっき魔物の肉がマズいって言ったこと気にしてるのか? ごめん、あれは少し、僕も脅かしすぎたよ。別に吐くほどおいしくないわけじゃないさ」
「い、いえ。そうじゃなくて……」
まだ戸惑う雰囲気のまま、ソニアはゆっくりと小さな口に匙を差し込み、そこに載ったものを咀嚼する。やがてどこか沈んだ表情で嚥下した。
「やっぱり……あの、実は味をあんまり感じなくて。匂いなんかはわかるんですけど……たぶん、これもイモータル化の影響なんでしょうね。あはは……」
「——」
何故か申し訳なさそうに、ソニアは笑う。子どもらしくない卑屈な微笑。
味覚に支障が出ている。その事実を聞いてなによりも、そのことにまるで気が付かなかった自分に対してイドラは驚いた。
いっしょに過ごして、宿でも同じ卓を囲んで。これまでなにを見てきたのだろう?
——節穴か、僕の眼は!
「でもでもっ、この方がよかったのかもしれません。おいしくないっていう魔物の味、わからなくて済みますから」
そんな顔で笑うな。喉まででかかった言葉は、野菜と肉の味がほんのり溶けた液体で押し込んだ。
ソニアという少女の人生は、狂いに狂っている。一年前、体をおかしくされた時から大きくねじ曲げられている。
恐ろしいのは、犯人やその動機がまるでわかっていないことだ。彼女自身に一切の非がなく、怒りも後悔もやり場がない。どんな思いを抱えてあの集落の岩屋に閉じ込められていたのか、想像するだけで胸が痛くなる。
罪人である自分はいい。イドラは、イモータルなどという怪物にあろうことか感傷を覚え、そのせいで恩人を助け損なった。これはイドラにとって明確な罪であり、罰を受けるべきものだ。
しかし、ソニアは絶対に違う。誰かを貶めたわけでも、失敗したわけでもない。
理不尽に人生を奪われた。あるはずだった、幸福で平凡な日々を失わされた。
ただ、やるせなかった。世界はどこまでも残酷で、不条理ばかりが満ちているのだと否応なしに思わされた。
「……ああ、マズいなぁ、本当においしくない! 相変わらず最悪だな魔物の肉は!」
そうではないと信じたかった。イドラは衝動的に、胸にある名状しがたいもやもやとした思いを吐き出すように大声で言って、やにわに立ち上がった。
「うぇっ、イ、イドラさんっ!?」
「みんなもそう思うよなぁ! 魔物の肉はおいしいか!?」
周囲のエクソシストたちは、一瞬ぽかんとイドラを見たが——
「おいしくなーい! いいなぁソニアちゃんってば味覚薄いんだってー? この味を感じなくて済むなんて羨ましいー!」
にっと笑って、わざわざ周囲に届くように上げたベルチャーナの声で、目に見えて空気が変わる。
「そりゃあいい、魔物を喰うよりは腐肉の方がまだマシだろうよ!」
「言えてるな、幼児の作るメシ以下だ!」
「そうだそうだ! 味付けしたの俺だけど!!」
近い距離だ。もしかしたら、噂の不死殺しの一行がする会話につい聞き耳を立てていた者もいたのかもしれない。
「白髪の嬢ちゃんが羨ましいぜ!」
「まったくだ、ああ不味い不味い! こんなくそったれな飯を味わわなくていいなんてツイてるよ!」
大げさな悪態をついて騒ぎ、エクソシストたちは嫌な顔を作りながらも食事の手を進める。
先ほどまでも静かなわけではなかったが、これではちょっとした宴だ。
状況がわかっているのかいないのか。おそらくはソニアの事情など聞こえていない者が大半だっただろうが、流れに便乗する騒ぎたがりが大勢いたのかもしれない。
「みなさんまで、そんな……」
その軽さ、言ってみれば深い関心のなさが、ソニアにとって心地のいいものであればいいとイドラは願った。それこそが一年前、彼女の手のひらから零れ落ちた日常の正常さだ。
「迷惑だったか?」
我に返ると、軽率で思慮のない行動だったと自省した。不安に思いながら隣を窺うと、少女は「ううん」と小さくはにかんで、周囲と同じように器の中身を口にする。
さっきとは違う、自虐的でない笑みだった。
余計な、出すぎたことをしてしまったのではないか。そんな思いに駆られかけていたイドラはほっと息をつき、硬い肉を噛みしめる。
「……嘘つき。おいしいじゃないですか、このお肉」
少女の呟きは喧噪の中にかき消され、彼女の内以外には響かなかった。
*
下りきった夜の帳が、森の闇をさらに色濃く染め上げる。
深夜。耳を澄ませば虫の声。夜行性の獣や魔物に遭遇しないことを祈りながら、イドラとソニアは寝床を抜け出した。
「すいません、わたしのせいで……」
少しよろめいた足取りで、イドラに手を引かれたソニアが謝る。その直後、おぼつかない足は地面から浮いた木の根につまずき、大きく体勢を崩す。
「きゃっ」
「危ない! ……平気か?」
「は、はい。ごめんなさい」
前のめりに倒れかけた体を、イドラはすぐに受け止めた。
——熱い。
伝わるソニアの体温は、高熱を患っているかのように高かった。
発作の前兆。息も荒く苦しげで、動いていることもあって上気した顔はうっすらとだけ汗ばんでいる。
「無事ならいい。謝るのは、もうナシだ。これは決めたことなんだから」
「そう、ですよね。すみま——じゃなかった。えっと、お世話になります?」
「……それもちょっと違和感あるけども」
だが大事はない。本格的になる前にマイナスナイフで対処する。そのために皆のいる寝床を抜け出し、離れた方へと向かっているのだ。
「この辺りまで来ればいいだろう」
あまり遠くに行きすぎて、戻り方がわからなくなってしまったら笑い話にもならない。
ちょうど、草の柔らかくて寝そべるには都合のいい場所を見つけ、そこにソニアを座らせる。
「今夜も……お願いします。イドラさん」
服をまくって腹部を晒し、仰向けになるとソニアはいくぶん楽になったらしく、長く息を吐く。
呼吸によって、白いお腹がかすかに上下する。そこにはクモの巣を思わせる模様が淡く光って浮かんでいた。
「ああ。すぐに終えるから、力を抜いて楽にしてくれ」
「はい——」
潤んだ瞳が閉じられる。ソニアは身じろぎひとつせず、ただイドラを待っている。
きん、と短く、鋭い音が響く。ケースからマイナスナイフを抜いた音だ。手の内で柄を半回転させ、イドラは慣れ親しんだ獲物を逆手に持つと、屈みこんで少女に近づく。
「——……っ」
青みを帯びた、不死を殺す天恵が陶器のような肌を刺す。白皙の少女はその入り込んでくる負数の刃に身をゆだね、小さく湿った吐息を漏らした。
肌を重ね、静かな夜が過ぎていく。その数だけ、傷ついた心同士が混じり合い、つながりを強くする。
逢瀬のような密やかな儀礼を、草や葉の間から小さな虫たちだけが見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる