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魔王登場。
結論、ヤバすぎる。
二ノ宮は絶望の混沌のなか考えた。
まるで選択肢を間違えたら問答無用でゲームオーバーにする、理不尽即死ゲーのような緊張感。
1、無謀にも戦う。
2、可能性にかけて逃げる。
3、希望をもって和解してみる。
4、現実は非常。死の忘却を迎え入れる。
(選択ミスは許されない……どうする!)
さすがに選択肢4はないだろう。選んだ瞬間にゲームオーバーだ。
なら選択肢3か。希望を捨てては奇跡は手に入らない。魔王と和解して終わるエンディングがあってもいいじゃないですか。
「先に言っておくが貴様に選択肢はない。あえて選ぶことが許されるのなら、あがいたあげく苦しんで死ぬか無抵抗のまま苦しんで死ぬかのどちらかだ」
さすが魔王、無慈悲である。
最初から選択肢は4以外なかったのだ。
「ま、待て! なんというか……そうだ、とりまお前の目的を教えてくれまいか!?」
言葉遣いがおかしくなるぐらい二ノ宮はテンパっていた。
「我の目的……? それは勇者のお前を抹殺……いや、こんな仮面に縛られた演技はもう不要だったな……さあ、あとはお前の時間だ。恐れるな、見守っている、すぐそばで」
川柳みたいな言葉と共に魔王が自分の仮面に触れると、まるで風船を針でつついたかのように、リアリティ重視で鉄で作られたはずの仮面が嘘みたいに砕け散った。
「え……」
明かされた魔王の素顔に、二ノ宮は驚いた。
「み、南さん……?」
魔王の正体は、いつも自分の席で読書をしている、クラスでは沈黙の女神とも噂される静かなる女生徒──南だった。
「うう……」
顔を露わにした南は、さきほどまでの異次元が嘘のように顔を真っ赤にしてうつむいた。
「ご、ごめんね、二ノ宮くん……び、びっくりしたよね……」
「え、あ、うん。すげえ演技で半端なかったよ」
絶対に小道具係をやっていると思っていた沈黙の女神がまさかの魔王であり、二ノ宮は素の会話を続けてしまう。
「二ノ宮くん……わ、私、私ね! ──二ノ宮くんのことが好きなの!」
南の大胆な告白に、二ノ宮、そして客席もざわついた。
「……ずっと好きだったの……あなたは明るくて、馬鹿みたいなところもあるけど、それでもみなを惹きつける輝きがあって……私にはないものをたくさんもっているあなたを……私は……」
告白を聞きながら、二ノ宮は存在しないネクタイを締めなおした。
(ふむ……ここに来てモテキ到来とは世の中は誠に不可思議なることのようですな)
存在しない性格になった二ノ宮は、顔をうつ向かせている南の言葉を聞き続ける。
「私は……あなたのそばにいたい。でも、私にはそれができない。だって、小雪さんや椿姫ちゃんみたいな魅力ないから……でも、もう1人の私に気づかされたの──私には魅力はなくても暴力があるんだって」
おや? と二ノ宮は思った。
「その他の力なんて、結局は暴力の付属品でしかないんだよ。魅力、経済力、政治力──民主主義の根幹となったこの3大力も、そこに暴力がないことを念願に置いただけの薄っぺらで脆弱な力でしかない。奪えばよかったんだよ、欲しいなら。ねえ二ノ宮くんそうでしょ私間違ってる?」
おやおや? と二ノ宮は思った。
「我慢したんだよずっともういいよね今まで下位の力に抑えられてきた最上位の力を解き放っていいよねそれができるのにやらないのはおかしいよね欲しいもう我慢できないねえ二ノ宮くん──あなたという全てを奪っていいよね?」
ダメですね、と二ノ宮は思った。
結論、ヤバすぎる。
二ノ宮は絶望の混沌のなか考えた。
まるで選択肢を間違えたら問答無用でゲームオーバーにする、理不尽即死ゲーのような緊張感。
1、無謀にも戦う。
2、可能性にかけて逃げる。
3、希望をもって和解してみる。
4、現実は非常。死の忘却を迎え入れる。
(選択ミスは許されない……どうする!)
さすがに選択肢4はないだろう。選んだ瞬間にゲームオーバーだ。
なら選択肢3か。希望を捨てては奇跡は手に入らない。魔王と和解して終わるエンディングがあってもいいじゃないですか。
「先に言っておくが貴様に選択肢はない。あえて選ぶことが許されるのなら、あがいたあげく苦しんで死ぬか無抵抗のまま苦しんで死ぬかのどちらかだ」
さすが魔王、無慈悲である。
最初から選択肢は4以外なかったのだ。
「ま、待て! なんというか……そうだ、とりまお前の目的を教えてくれまいか!?」
言葉遣いがおかしくなるぐらい二ノ宮はテンパっていた。
「我の目的……? それは勇者のお前を抹殺……いや、こんな仮面に縛られた演技はもう不要だったな……さあ、あとはお前の時間だ。恐れるな、見守っている、すぐそばで」
川柳みたいな言葉と共に魔王が自分の仮面に触れると、まるで風船を針でつついたかのように、リアリティ重視で鉄で作られたはずの仮面が嘘みたいに砕け散った。
「え……」
明かされた魔王の素顔に、二ノ宮は驚いた。
「み、南さん……?」
魔王の正体は、いつも自分の席で読書をしている、クラスでは沈黙の女神とも噂される静かなる女生徒──南だった。
「うう……」
顔を露わにした南は、さきほどまでの異次元が嘘のように顔を真っ赤にしてうつむいた。
「ご、ごめんね、二ノ宮くん……び、びっくりしたよね……」
「え、あ、うん。すげえ演技で半端なかったよ」
絶対に小道具係をやっていると思っていた沈黙の女神がまさかの魔王であり、二ノ宮は素の会話を続けてしまう。
「二ノ宮くん……わ、私、私ね! ──二ノ宮くんのことが好きなの!」
南の大胆な告白に、二ノ宮、そして客席もざわついた。
「……ずっと好きだったの……あなたは明るくて、馬鹿みたいなところもあるけど、それでもみなを惹きつける輝きがあって……私にはないものをたくさんもっているあなたを……私は……」
告白を聞きながら、二ノ宮は存在しないネクタイを締めなおした。
(ふむ……ここに来てモテキ到来とは世の中は誠に不可思議なることのようですな)
存在しない性格になった二ノ宮は、顔をうつ向かせている南の言葉を聞き続ける。
「私は……あなたのそばにいたい。でも、私にはそれができない。だって、小雪さんや椿姫ちゃんみたいな魅力ないから……でも、もう1人の私に気づかされたの──私には魅力はなくても暴力があるんだって」
おや? と二ノ宮は思った。
「その他の力なんて、結局は暴力の付属品でしかないんだよ。魅力、経済力、政治力──民主主義の根幹となったこの3大力も、そこに暴力がないことを念願に置いただけの薄っぺらで脆弱な力でしかない。奪えばよかったんだよ、欲しいなら。ねえ二ノ宮くんそうでしょ私間違ってる?」
おやおや? と二ノ宮は思った。
「我慢したんだよずっともういいよね今まで下位の力に抑えられてきた最上位の力を解き放っていいよねそれができるのにやらないのはおかしいよね欲しいもう我慢できないねえ二ノ宮くん──あなたという全てを奪っていいよね?」
ダメですね、と二ノ宮は思った。
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