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踊りの師匠とアオダイショウ(結末編)
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こうして葬式の当日、ワン七はアオダイショウと一緒に木の上に隠れて、あの二人が来ないかと窺っていました。
一方、斎藤新八は訪れる人々の様子を、目を皿のようにして注視していました。
男女のお弟子さんなど弔問客がたくさんいる中、町人風なのに一目見て武士だと分かる所作や体つきの二人連れを見つけたので、斎藤新八は目を離さないようにしておりました。
すると、
「あの二人に間違いない。おかみさんを絞め殺したのは、あの二人だよ!」
とアオダイショウが叫びました。
ワン七は大きな身振りで、『その二人です!』と、合図を送りました。
斎藤新八は両手を広げて二人の前に立ちはだかり、低く重い声で唸るように言いました。
「神妙に願います。葬式の場での騒動は、藩にも迷惑がかかるでしょう。」
剣豪に言い竦まれて、二人の武士はおとなしくお縄につきました。
巡査たちが二人に縄を打って、番所へと連行していきました。
こうして、真実はすっかり露見しました。
ただし二人の武士は、自分たちの犯行だと白状しましたが、決して自分たちの姓名も、藩の名前も言いませんでした。
そして、自分たちが何者であるかを表すものは、何も身に付けておりませんでした。
よせばいいのに、歌女房の敵討ちとばかりに例の上官が、どうしても藩の名前を吐かそうとして、
「しゃべらなければ拷問にかけるぞ。」
と浅はかにも脅しました。
拷問にかけられるため一瞬縄を外された武士は、上官の刀をあっという間に抜き取って、もう一人の武士の首を切り落とし、自分も刀の刃を首に押し当てて引き切り、自害してしまいました。
目の前で惨劇を見せられて、血まみれになった上官は、腰を抜かしてただただ驚くばかりでした。
こうして事件は幕を閉じたのです。
例の上官はずいぶん降格させられました。お金で役職を買った、捜査の邪魔でしかない上官ですから、仕方ありません
「武士が拷問にかけられたら、耐えられない恥だ。それにしても人の首を一刀のもとにすぱっと切り落とすとは、なかなかの使い手と見た。惜しいことをした。」
とは、斎藤新八の後日談です。
歌女美師匠は、それからしだいに体が回復していき、今でもあの屋敷で大勢の弟子を抱えて、踊りの師匠として繁盛しています。
この事件後、数年が経って廃刀令が布告され、それから間もなく廃藩置県が実施されました。
つまり、武士たちが命がけで忠誠を誓った、藩という体制が無くなってしまったのです。
人殺しはいけませんが、あの忠義物の武士たちも哀れだと、ワン七は同情しました。
一方、斎藤新八は訪れる人々の様子を、目を皿のようにして注視していました。
男女のお弟子さんなど弔問客がたくさんいる中、町人風なのに一目見て武士だと分かる所作や体つきの二人連れを見つけたので、斎藤新八は目を離さないようにしておりました。
すると、
「あの二人に間違いない。おかみさんを絞め殺したのは、あの二人だよ!」
とアオダイショウが叫びました。
ワン七は大きな身振りで、『その二人です!』と、合図を送りました。
斎藤新八は両手を広げて二人の前に立ちはだかり、低く重い声で唸るように言いました。
「神妙に願います。葬式の場での騒動は、藩にも迷惑がかかるでしょう。」
剣豪に言い竦まれて、二人の武士はおとなしくお縄につきました。
巡査たちが二人に縄を打って、番所へと連行していきました。
こうして、真実はすっかり露見しました。
ただし二人の武士は、自分たちの犯行だと白状しましたが、決して自分たちの姓名も、藩の名前も言いませんでした。
そして、自分たちが何者であるかを表すものは、何も身に付けておりませんでした。
よせばいいのに、歌女房の敵討ちとばかりに例の上官が、どうしても藩の名前を吐かそうとして、
「しゃべらなければ拷問にかけるぞ。」
と浅はかにも脅しました。
拷問にかけられるため一瞬縄を外された武士は、上官の刀をあっという間に抜き取って、もう一人の武士の首を切り落とし、自分も刀の刃を首に押し当てて引き切り、自害してしまいました。
目の前で惨劇を見せられて、血まみれになった上官は、腰を抜かしてただただ驚くばかりでした。
こうして事件は幕を閉じたのです。
例の上官はずいぶん降格させられました。お金で役職を買った、捜査の邪魔でしかない上官ですから、仕方ありません
「武士が拷問にかけられたら、耐えられない恥だ。それにしても人の首を一刀のもとにすぱっと切り落とすとは、なかなかの使い手と見た。惜しいことをした。」
とは、斎藤新八の後日談です。
歌女美師匠は、それからしだいに体が回復していき、今でもあの屋敷で大勢の弟子を抱えて、踊りの師匠として繁盛しています。
この事件後、数年が経って廃刀令が布告され、それから間もなく廃藩置県が実施されました。
つまり、武士たちが命がけで忠誠を誓った、藩という体制が無くなってしまったのです。
人殺しはいけませんが、あの忠義物の武士たちも哀れだと、ワン七は同情しました。
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