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踊りの師匠とアオダイショウ(転換編)
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木の上でアオダイショウが、じっと若旦那たちの首実検をしています。隣でワン七も見守っています。
そしてアオダイショウが犯人をワン七に伝えたら、ワン七が斎藤新八に合図を送り、犯人に縄を打とうという算段です。
「えー、今回の事件について、哀れな歌女房師匠に対する、政府の見解に関して・・・」
斎藤新八はアオダイショウがしかと犯人を見定めるように、いい加減な長話を続けて時間稼ぎをしています。
ワン七もじーっとアオダイショウの様子をうかがっていたのですが、アオダイショウはいっこうに犯人を指し示しません。
そしてとうとう、
「いませんね。この中に犯人はいませんよ。」
と言ったので、ワン七は木の枝から落ちんばかりにがくっと肩を落としました。
そして斎藤新八に『犯人見つからず』の合図を送りました。
全員を帰してから、木に登ってきた斎藤新八は憮然として、ワン七に問いかけました。
「どういうことだ?犯人らしき人物は、皆調べたのだぞ。それじゃあ犯人はどこにいるんだ。」
ワン七はしばらく腕組みをして考えていましたが、
「もう一度、歌女美師匠に話を聞きましょう。」
と言って、奥の間に向かいました。
「師匠を囲いたいと申し出たのは、どういう方ですか。いや、これは捜査のためですから正直に言っていただかないと困ります。」
と、ワン七はちょっと歌女美師匠に圧力をかけました。
「お一人は、東海辺りの大きな藩の方です。もう一人はそれよりも小さな藩の留守居役の方です。」
「え、二か所から申し込まれていたのですか。で、おかみさんはそのことについて何か言ってませんでしたか。」
「小さい方の藩の方は、この家にお忍びで、二人のお供を連れて来られました。おっかさんは、『あんたとこみたいなちっぽけな藩なんて、冗談じゃないよ。こっちはもう、さる大藩の方から誘いを受けてるんだよ。』と怒鳴ったんです。それでも留守居役の方は、『必ず歌女美殿をいつまでも大切にするから、どうかお願いする。』と言って、頭を下げたんです。でもおっかさんは、『こんな小藩にそんな金があるとは思えないね。さっさと帰りな。』と追い帰そうとしました。お供の二人は、今にも刀を抜きそうな剣幕だったのですが、留守居役の方がそれを制して、お三人は帰りました。」
「なるほど、そんなことがあったんですかい。体が悪いのによく話してくださった。ところでおかみさんの葬式はいつですか。」
「明後日の四つからです。」
もうだいぶ暗くなって、ワン七と斎藤新八は、帰路に就きながら相談しました。
「葬式の時にもう一度、アオダイショウの姉さんに首実検をしてもらいましょう。」
「葬式に来るかな。」
「来る方にかけます。あの二人はきっと、歌女美師匠の様子を見に来ます。」
「そうだな。武士の面子があるものな。」
「逃げられるといけませんから、巡査の方も何人か配置しておいてください。」
「武士ならいつも重い大小をさしているから、左足の大きさを見ればすぐに分かるよ。」
「でも間違いがあってはいけませんから、アオダイショウの姉さんに首実検をしてもらいます。」
「分かってる、分かってる。ワン七は本当に捕物の鬼だな。」
そしてアオダイショウが犯人をワン七に伝えたら、ワン七が斎藤新八に合図を送り、犯人に縄を打とうという算段です。
「えー、今回の事件について、哀れな歌女房師匠に対する、政府の見解に関して・・・」
斎藤新八はアオダイショウがしかと犯人を見定めるように、いい加減な長話を続けて時間稼ぎをしています。
ワン七もじーっとアオダイショウの様子をうかがっていたのですが、アオダイショウはいっこうに犯人を指し示しません。
そしてとうとう、
「いませんね。この中に犯人はいませんよ。」
と言ったので、ワン七は木の枝から落ちんばかりにがくっと肩を落としました。
そして斎藤新八に『犯人見つからず』の合図を送りました。
全員を帰してから、木に登ってきた斎藤新八は憮然として、ワン七に問いかけました。
「どういうことだ?犯人らしき人物は、皆調べたのだぞ。それじゃあ犯人はどこにいるんだ。」
ワン七はしばらく腕組みをして考えていましたが、
「もう一度、歌女美師匠に話を聞きましょう。」
と言って、奥の間に向かいました。
「師匠を囲いたいと申し出たのは、どういう方ですか。いや、これは捜査のためですから正直に言っていただかないと困ります。」
と、ワン七はちょっと歌女美師匠に圧力をかけました。
「お一人は、東海辺りの大きな藩の方です。もう一人はそれよりも小さな藩の留守居役の方です。」
「え、二か所から申し込まれていたのですか。で、おかみさんはそのことについて何か言ってませんでしたか。」
「小さい方の藩の方は、この家にお忍びで、二人のお供を連れて来られました。おっかさんは、『あんたとこみたいなちっぽけな藩なんて、冗談じゃないよ。こっちはもう、さる大藩の方から誘いを受けてるんだよ。』と怒鳴ったんです。それでも留守居役の方は、『必ず歌女美殿をいつまでも大切にするから、どうかお願いする。』と言って、頭を下げたんです。でもおっかさんは、『こんな小藩にそんな金があるとは思えないね。さっさと帰りな。』と追い帰そうとしました。お供の二人は、今にも刀を抜きそうな剣幕だったのですが、留守居役の方がそれを制して、お三人は帰りました。」
「なるほど、そんなことがあったんですかい。体が悪いのによく話してくださった。ところでおかみさんの葬式はいつですか。」
「明後日の四つからです。」
もうだいぶ暗くなって、ワン七と斎藤新八は、帰路に就きながら相談しました。
「葬式の時にもう一度、アオダイショウの姉さんに首実検をしてもらいましょう。」
「葬式に来るかな。」
「来る方にかけます。あの二人はきっと、歌女美師匠の様子を見に来ます。」
「そうだな。武士の面子があるものな。」
「逃げられるといけませんから、巡査の方も何人か配置しておいてください。」
「武士ならいつも重い大小をさしているから、左足の大きさを見ればすぐに分かるよ。」
「でも間違いがあってはいけませんから、アオダイショウの姉さんに首実検をしてもらいます。」
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