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今、確かにそう聞こえた。しかも背後にいる遊隆の声じゃなかった。松岡さんかと思ったが、違う。もっと低くて、深みのある……そう、雀夜の声だ。
遊隆がその声に促されるように、俺の腰から離れた。
「……雪弥。もう一度、机の上乗って」
「え。う、うん……」
涙を拭い、机に座る。遊隆は俺の背中を背後にある教卓に寄りかからせ、左右に広げた足の間へ自身の腰を入れてきた。
「やっ……」
正面からでも背後からでも、怖いのは変わらない。だけど遊隆の顔が見られることにいくらか安堵した俺は、さっきよりもずっと体の力を抜くことができた。
「……くっ」
真剣な顔で俺の中に入ろうとしている遊隆。きっと、中が狭すぎて遊隆も苦しいんだと思った。
「……は、ぁ……。遊隆……」
「ん……?」
俺は早く遊隆に楽になってもらいたくて、口元に笑みを浮かべて囁いた。
「は、初めては遊隆がいいって……思ってたから、俺、すげえ幸せだよ……」
「雪弥……」
表情を緩めた遊隆が、大きな手で俺の頭を撫でる。それから、身を屈めて優しく口付けてくれた。
「俺も幸せ」
「遊隆……」
グッ、と下半身が圧迫された瞬間、俺は思わず両目を剥いて遊隆を見上げた。
「う、嘘……?」
「……ん」
「遊隆っ……!」
痛いより、怖いより、信じられないという気持ちの方が勝っていた。
見なくても、俺のそこに遊隆の腰が密着しているのが分かる。なんだか妙な達成感が沸き上がってきて、俺は頬が緩むのを止めることができなかった。
「痛くねえか、雪弥」
「ちょっと……でも、平気……」
遊隆が俺の腰を両手で支え、自身の腰を後方に引いた。
「あっ……!」
そして再び、奥深く侵入してくる。また引いて、また入ってくる。ゆっくりと、だけど何度も、何度も……
「あ、あっ、……やっ!」
中を擦られる感覚は果たして快感なのか苦痛なのか、まだ体が理解していない。それなのに自然と声が出てしまうのはどうしてか。自分で試していた時は間違っても声なんて出さなかったのに。
「遊隆ぁっ……」
俺の顔を見つめてくれている遊隆の顔が涙でぼやけてゆく。遊隆が俺を突く度に、机が音をたてて揺れる。
「雪弥、悪い……。良すぎて加減できねぇっ……」
「う、ぁっ……、あっ、あぁっ……」
俺は伸ばした手で遊隆のネクタイを掴んだ。
「こっち、いて……。あっ、あ……」
上から覆い被さるようにして、遊隆が俺を抱きしめてくれた。俺は机に背中を付けながら、両手両足で遊隆にしがみつく。もうスタッフやカメラの存在も、近くで鳴り続けるシャッター音も気にならなくなった。
「遊隆っ、遊隆……、……あぁっ!」
「好きだよ、雪弥……」
「っ……俺も好き! 遊隆、好きっ……」
火傷してしまうんじゃないかと思うほど、擦れているところが熱い。遊隆の太いそれが俺の中をかき回す熱。逃がさないように遊隆を締め付ける俺の熱。俺と遊隆の、二人分の熱だ。
「あっ!」
身を起こした遊隆が、腰の動きはそのままで俺のペニスを握った。長いこと放置されてすっかり硬さを無くしてしまった俺のそれが、遊隆の手で擦られて再び鎌首を持ち上げる。
「雪弥、好きなだけ出していいからな」
「うっ、ん……。……はぁっ、あ……!」
遊隆の手と腰の動きが早くなり、頭の芯に痺れが走った。
「ああぁっ、イきそっ……」
カメラが俺の下半身に近付けられる。
「いいよ、雪弥」
「うぁっ、あ、あぁっ……!」
内股が痙攣し、一気に快感が脳を突き抜けてゆく。やがてそれは卑猥な白い体液となって、俺の腹部や胸元に飛び散った。
「ふあぁっ……」
「俺もイくよ、雪弥……ぁっ」
「ん──」
勢いよく俺の中から引き抜いた遊隆が手際よくゴムを外し、俺の体液に重なるようにして腹の上に放出させた。
「くはぁ……」
遊隆が照れたように笑いながら、茫然自失の俺の頬を撫でる。ハッとして俺は上体を起こし、遊隆の唇にそっとキスをした。
「雪弥、大好きだよ」
「……俺も……」
額をくっつけ合い、互いに赤面して、少しだけ笑う。
「俺も遊隆が大好き」
ゆっくりとカメラが離れて行った。
「おっけ」
松岡さんの声がして、周りの緊張が一気に溶ける。
「オッケーです!」「お疲れ様!」「二人のガウン持ってきてー。あとタオル」
騒がしくなったスタジオに取り残された状態の俺と遊隆は、呼吸を弾ませながらまだ顔を寄せ合っていた。
「大丈夫か、雪弥?」
「うん。腰が砕け気味だけどな……」
「実は俺も。すっげえ良かった」
「遊隆……」
俺が何かを言おうとする前に、遊隆の体が離れてしまった。小走りで俺達の方に近付いてくる足音が聞こえたからだ。
「遊隆、雪弥! お疲れ様!」
タオルを持ってきてくれたのは桃陽だった。大きな目を輝かせて、今にも飛び跳ねそうなくらいに興奮している。
「サンキュ、桃陽」
遊隆がタオルを受け取り、まだ動けないでいる俺の体を拭いてくれた。
「遊隆、超良かったよ! 雪弥も初めてなのにすげえ良かった! 二人とも本当に良かった!」
「あ、ありがとう桃陽……ずっと見ててくれたんだ」
桃陽は俺の手を握って嬉しそうに笑っている。
「今日ね、休みだったから見学しに来たんだ。雀夜もだよ、気付いてた?」
「あ、そうだ雀夜は……」
首を曲げて室内を見回すが、雀夜の姿は既になかった。帰ってしまったんだろうか。
「見に来んなって言ったのによ……。あんな目でじっと見られてたら、勃つモンも勃たなくなるわ」
「でも遊隆、雪弥に咥えられてギンギンになってたじゃん」
「う、うるせえなぁお前は……。雪弥、シャワー借りに行こうぜ」
赤面して唇を尖らせながら、遊隆が衣装の制服を脱ぐ。俺もスタッフに渡されたガウンを羽織って、ゆっくりと机の上から床に下りた。
「疲れたぁ……」
その日は桃陽と遊隆と俺の三人で飯を食いに行き、酔っぱらって帰宅した俺と遊隆は服も着替えずに寝室へ直行した。どうしようもなく疲れていて、初体験の余韻に浸る余裕さえ無く、朝までぐっすりと眠った。
遊隆がその声に促されるように、俺の腰から離れた。
「……雪弥。もう一度、机の上乗って」
「え。う、うん……」
涙を拭い、机に座る。遊隆は俺の背中を背後にある教卓に寄りかからせ、左右に広げた足の間へ自身の腰を入れてきた。
「やっ……」
正面からでも背後からでも、怖いのは変わらない。だけど遊隆の顔が見られることにいくらか安堵した俺は、さっきよりもずっと体の力を抜くことができた。
「……くっ」
真剣な顔で俺の中に入ろうとしている遊隆。きっと、中が狭すぎて遊隆も苦しいんだと思った。
「……は、ぁ……。遊隆……」
「ん……?」
俺は早く遊隆に楽になってもらいたくて、口元に笑みを浮かべて囁いた。
「は、初めては遊隆がいいって……思ってたから、俺、すげえ幸せだよ……」
「雪弥……」
表情を緩めた遊隆が、大きな手で俺の頭を撫でる。それから、身を屈めて優しく口付けてくれた。
「俺も幸せ」
「遊隆……」
グッ、と下半身が圧迫された瞬間、俺は思わず両目を剥いて遊隆を見上げた。
「う、嘘……?」
「……ん」
「遊隆っ……!」
痛いより、怖いより、信じられないという気持ちの方が勝っていた。
見なくても、俺のそこに遊隆の腰が密着しているのが分かる。なんだか妙な達成感が沸き上がってきて、俺は頬が緩むのを止めることができなかった。
「痛くねえか、雪弥」
「ちょっと……でも、平気……」
遊隆が俺の腰を両手で支え、自身の腰を後方に引いた。
「あっ……!」
そして再び、奥深く侵入してくる。また引いて、また入ってくる。ゆっくりと、だけど何度も、何度も……
「あ、あっ、……やっ!」
中を擦られる感覚は果たして快感なのか苦痛なのか、まだ体が理解していない。それなのに自然と声が出てしまうのはどうしてか。自分で試していた時は間違っても声なんて出さなかったのに。
「遊隆ぁっ……」
俺の顔を見つめてくれている遊隆の顔が涙でぼやけてゆく。遊隆が俺を突く度に、机が音をたてて揺れる。
「雪弥、悪い……。良すぎて加減できねぇっ……」
「う、ぁっ……、あっ、あぁっ……」
俺は伸ばした手で遊隆のネクタイを掴んだ。
「こっち、いて……。あっ、あ……」
上から覆い被さるようにして、遊隆が俺を抱きしめてくれた。俺は机に背中を付けながら、両手両足で遊隆にしがみつく。もうスタッフやカメラの存在も、近くで鳴り続けるシャッター音も気にならなくなった。
「遊隆っ、遊隆……、……あぁっ!」
「好きだよ、雪弥……」
「っ……俺も好き! 遊隆、好きっ……」
火傷してしまうんじゃないかと思うほど、擦れているところが熱い。遊隆の太いそれが俺の中をかき回す熱。逃がさないように遊隆を締め付ける俺の熱。俺と遊隆の、二人分の熱だ。
「あっ!」
身を起こした遊隆が、腰の動きはそのままで俺のペニスを握った。長いこと放置されてすっかり硬さを無くしてしまった俺のそれが、遊隆の手で擦られて再び鎌首を持ち上げる。
「雪弥、好きなだけ出していいからな」
「うっ、ん……。……はぁっ、あ……!」
遊隆の手と腰の動きが早くなり、頭の芯に痺れが走った。
「ああぁっ、イきそっ……」
カメラが俺の下半身に近付けられる。
「いいよ、雪弥」
「うぁっ、あ、あぁっ……!」
内股が痙攣し、一気に快感が脳を突き抜けてゆく。やがてそれは卑猥な白い体液となって、俺の腹部や胸元に飛び散った。
「ふあぁっ……」
「俺もイくよ、雪弥……ぁっ」
「ん──」
勢いよく俺の中から引き抜いた遊隆が手際よくゴムを外し、俺の体液に重なるようにして腹の上に放出させた。
「くはぁ……」
遊隆が照れたように笑いながら、茫然自失の俺の頬を撫でる。ハッとして俺は上体を起こし、遊隆の唇にそっとキスをした。
「雪弥、大好きだよ」
「……俺も……」
額をくっつけ合い、互いに赤面して、少しだけ笑う。
「俺も遊隆が大好き」
ゆっくりとカメラが離れて行った。
「おっけ」
松岡さんの声がして、周りの緊張が一気に溶ける。
「オッケーです!」「お疲れ様!」「二人のガウン持ってきてー。あとタオル」
騒がしくなったスタジオに取り残された状態の俺と遊隆は、呼吸を弾ませながらまだ顔を寄せ合っていた。
「大丈夫か、雪弥?」
「うん。腰が砕け気味だけどな……」
「実は俺も。すっげえ良かった」
「遊隆……」
俺が何かを言おうとする前に、遊隆の体が離れてしまった。小走りで俺達の方に近付いてくる足音が聞こえたからだ。
「遊隆、雪弥! お疲れ様!」
タオルを持ってきてくれたのは桃陽だった。大きな目を輝かせて、今にも飛び跳ねそうなくらいに興奮している。
「サンキュ、桃陽」
遊隆がタオルを受け取り、まだ動けないでいる俺の体を拭いてくれた。
「遊隆、超良かったよ! 雪弥も初めてなのにすげえ良かった! 二人とも本当に良かった!」
「あ、ありがとう桃陽……ずっと見ててくれたんだ」
桃陽は俺の手を握って嬉しそうに笑っている。
「今日ね、休みだったから見学しに来たんだ。雀夜もだよ、気付いてた?」
「あ、そうだ雀夜は……」
首を曲げて室内を見回すが、雀夜の姿は既になかった。帰ってしまったんだろうか。
「見に来んなって言ったのによ……。あんな目でじっと見られてたら、勃つモンも勃たなくなるわ」
「でも遊隆、雪弥に咥えられてギンギンになってたじゃん」
「う、うるせえなぁお前は……。雪弥、シャワー借りに行こうぜ」
赤面して唇を尖らせながら、遊隆が衣装の制服を脱ぐ。俺もスタッフに渡されたガウンを羽織って、ゆっくりと机の上から床に下りた。
「疲れたぁ……」
その日は桃陽と遊隆と俺の三人で飯を食いに行き、酔っぱらって帰宅した俺と遊隆は服も着替えずに寝室へ直行した。どうしようもなく疲れていて、初体験の余韻に浸る余裕さえ無く、朝までぐっすりと眠った。
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