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第4話 先生に惚れた幽霊
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「先生、この話すごく面白いです」
「そうか?」
原稿のゲラを読みながら、俺は一口いちごソーダを飲んだ。冷たくて美味しい。体にしゅわしゅわが浸透して行くみたいだ。
「でもこのメインの悪霊と遭遇する部分、もう少し主人公の怯えた様子が出てるともっと怖くなりそうです」
「これはお前の話が元ネタだぞ。別に普通の人間ぽくて怖いと思わなかったんだろ」
「そうですけど……一般の読者を怖がらせるには、主人公の焦りとかが伝わるともっと良いかなって。こういう悪霊の類って、初めは怖くなさそうに見えて、一瞬でゾワッとさせるんです」
「なるほどな」
先生がゲラ紙にカラーペンで何かを書き足す。
俺はくすくすと笑いながら、いちごソーダをもう一口飲んだ。──なんて美味しいんだろ。
「普段はあまり俺の原稿に興味を持たねえのにな」
「俺はアシスタントでもあるんでしょ。たまには先生の役に立ちたいなって」
ソファの上。コップに注いだビールを飲む先生にぴったりと寄り添って、俺は読み終わったゲラをテーブルの上へと滑らせた。
「先生、俺が役に立つのは仕事のことだけじゃないですよ」
「ああそうだな。晩酌に付き合ってくれる奴がいるというのは有難い話だ」
「それだけじゃないでしょ?」
目を細めながら人差し指で先生の股間を押すと、ジャージ越しに先生の先生がビクリと反応するのが伝わってきた。
「どうした黎人。今日はセックス抜きで、ジュースとお菓子で夜更かしする日なんだろ」
──そんな約束してたのか。面倒臭いな。
「先生、……俺と、したくない?」
「したくない訳じゃねえが、お前確か昨日の晩飯に食った激辛ラーメンのせいで、ケツが燃えるように痛いとか……」
「………」
──れ、黎人とかいう奴、なんて品がないんだ。ネコの癖に激辛ラーメンなんか食べる方がおかしい。
「じゃ、じゃあお尻は使わなくていいですけど……。とにかく先生、俺もう欲しくて堪らないんです」
「今日の黎人は何か変だな」
「こんなに先生の近くにいるのに、変にならない方がおかしいです」
言いながら、何度も先生の頬にキスをする。いちごソーダのボトルをテーブルに置いて、カラダ全体で先生にしがみつく。
ああ、この無気力人間な男の匂い。俺にここまで執着させるのに、本人はちっとも俺の正体に気付いていない鈍感さ。それでも俺達のような存在に興味津々で、波長はすこぶる俺と合う。一時的に体を借りたこの「黎人くん」の感受性が強く、しかも先生と恋人同士だったのもラッキーだった。
生身の男と交わるために女性に憑依したこともあるけれど、やっぱり男の体のままでセックスしたい。
「先生、エッチなことして下さい……」
人差し指で触れていた部分を今度は手のひら全体で押すようにして揉みしだく。先生が心地好さそうに息をついて、俺はその耳の縁をゆっくりと舌でなぞっていった。
「おぉ……」
「先生、おちんちん硬くなってます」
「そりゃ、そんな風に揉まれたらな」
「見てもいい?」
「ん」
俺はソファを降りて先生の前に跪き、先生のジャージとパンツを脱がして舌なめずりをした。久し振りの男だ。たっぷり味わってやる。
「はぁ……」
「んぅ、……んっ……」
舌に感じるこの「熱」──これこそが生身の人間である証。男の精液は命そのものだ。堪らない。しゃぶればしゃぶるほど欲しくなる。
もっと……もっと、もっと欲しい。
「黎人、今日は随分とがっついてるな」
「はぁっ……。だって先生のちんちん、美味しくて……」
先生が俺の頭を撫でて、ふうぅと太い息を吐き出した。
「せんせ、……飲ませて……。先生の濃ゆい精液飲ませて……!」
「昨日も出したから、あんまり濃くはねえが……」
「それでもいい……お願い、せんせ……」
思い切り咥え込んで何度も頭を上下させれば、先生が荒い息を吐き出して「ああやべえ、何だそれイキそう」と俺の手を強く握りしめた。
「出すぞ黎人、……!」
「んんっ、……! ん、う……」
口の中に広がる精の味。舌の上に感じる熱。とろとろで粘っこくて、飲み込もうとすると喉のあちこちに引っかかる。
「はぁ、……美味し……」
「変だな。いつもは苦いから飲みたがらねえのに」
「勿体ないなぁ……今までの俺ってば、贅沢ですね」
俺は床から立ち上がり、先生の額にキスをしてから微笑んだ。
「俺は先生になら、何をされてもいいのに……」
「黎人」
「ね、先生……セックスしよ。先生の熱い精液、今度は俺のお尻にいっぱい出して……」
自分の下着を脱いで、まだ若干硬さを保っている先生のペニスを優しく擦る。すぐに挿入可能な形状になったそれの上にまたがり、そして「黎人」の狭い入口に──
──やめろ!
「うわっ……!」
突然俺の体が横に倒れ、ソファの上に投げ出された。
「な、なに……?」
「どうした黎人」
──これ以上先生に触るな。俺の体でも許さねえぞ!
「……は、今更ご本人登場か。もう遅いよ、先生は俺の物だ。……え? ああ、別に。アッチの世界に持っていく気はないよ。……うん、そう。ただ欲求不満なだけ。別に誰でもっていうか……たまたま彼の欲望が俺と一致したってだけで。……うんそれで、たまたまあんたの体を借りれたってだけ」
「お、おい黎人……。人のチンコ握ったまま何をぶつぶつ言ってるんだ。……チンコと喋ってるのか?」
──色情霊って奴か、お前。
「うーん、自分ではそんなつもりないよ。常にエロいことがしたくてしょうがないって訳じゃなくて、俺と波長の合う男とのセックスがしたい気分だったってだけ」
──どうでもいい、早く体を返せ。
「ここまできてセックスしないとか無理。別にいいでしょ、あんたにだって俺を通じて感覚は伝わるんだだし」
──だから言ってるんだ! さっきのフェラなんか深く咥え過ぎて危うくえずきそうになった!
「あはは。たまにはディープなのやってあげた方がいいよ、これだけいいモノ持ってるんだから勿体ない。別にずっと借りる訳じゃないから安心して。明日の朝には元通りだよ」
「おい黎人、さっきから何を独りで言ってるんだっ?」
「ごめんね先生、お待たせ。時間も限られてるし、今夜はいっぱいエッチしようね」
──おいやめろってば! マジで言ってんだ、やめろ!
「残念、やめないよ」
すりすりと先生のペニスを撫でて、今度こそ入口にあてがう。対面座位なんてラブラブなカップルらしくてうっとりしちゃうよ、黎人。
「おい黎人、大丈夫なのか──」
「挿れるよ、先生……おちんちんお尻にちょうだい……」
──やめろおぉッ!
「黎人っ……!」
───。
「んん、んあ、あ……んやああぁッ──!」
「れ、黎人っ……?」
信じられないほどの激痛。いや、もう痛いなんてモンじゃなかった。熱い。焼けた火鉢を突っ込まれたかのような熱を伴った、凄まじい激痛──。
「いっでええぇ──ッ!」
ソファに倒れ込んでのたうち回る俺の頭の中に、涙声になった「黎人」の言葉が届いた。
──だ、だから言っただろ! 激辛ラーメンのせいでケツが痛いんだってば! ふざけんなよお前ほんと、マジでケツが燃えるっての!
「大丈夫か黎人。ケツの穴が痛てぇのか、薬塗るか?」
「せ、せんせぇ……」
助けを求めるように手を伸ばすと、先生が俺の手をぎゅっと握りしめた。
……そして、痔の薬を渡された。
「大丈夫か、塗ってやろうか?」
「……平気、です」
よりによってこんな体に憑依してしまうとは。何て運が悪いんだ。誰だ、月夜にはいい出会いがあるなんて言った奴は。
「も、……もういい……」
──もういい。返す、こんな体!
「え、……あ……」
──いつか絶対に彼とセックスしてやるからな。その時は辛いモン食うなよ!
「……戻った。……はは、良かった……」
手のひらをニギニギさせて、自分の感覚を確かめる。戻れた。本当に良かった……こんな形で憑依されるなんて生まれて初めてだ。
「黎人……?」
「せ、先生……!」
俺は訳が分からないといった顔の夜城先生に飛び付いて、思い切りその胸に頬擦りした。
俺の先生。俺だけの先生。霊だろうと何だろうと、先生が俺以外の男とセックスするなんて絶対に嫌だ。
金輪際、先生には指一本触れさせない。
「先生、大好き……。俺、先生のことめちゃくちゃ大好きだって……ほんとにっ……うぅ、う……もどれで、よがっだぁ……」
「ううむ、今日の黎人はやはり変だな……。まあ可愛いから良いが」
鼻をすすりながら泣く俺を、先生が抱き寄せて優しく撫でてくれた。この広い胸に、不摂生な癖に逞しい腕。大好きな先生の匂い、声、温もり。
ここは俺だけの特等席だ。ずっとずっと、俺は先生の傍にいるんだ。
「先生、セックスしたい……」
「いやお前、ケツに爆弾を抱えてるだろ」
「じゃあもう一回咥えていいですか?」
「無理するな、次は俺が咥えるが……」
「いいんですっ、さっきのフェラなんかよりずっと気持ち良くしますから!」
「うぉっふ、……!」
世の中には「危険」とされている心霊スポットが幾つもある。
俺達の地元・九蓮宝町にある例の廃屋は、危険な霊の存在はない。
だけどあそこには、俺にとって一番「危険」な霊がいる。
ブロック塀に座って微笑む全裸の美青年が見えたなら気を付けて。──もしもあなたに素敵な彼氏がいるなら、特に。
第4話・終
「そうか?」
原稿のゲラを読みながら、俺は一口いちごソーダを飲んだ。冷たくて美味しい。体にしゅわしゅわが浸透して行くみたいだ。
「でもこのメインの悪霊と遭遇する部分、もう少し主人公の怯えた様子が出てるともっと怖くなりそうです」
「これはお前の話が元ネタだぞ。別に普通の人間ぽくて怖いと思わなかったんだろ」
「そうですけど……一般の読者を怖がらせるには、主人公の焦りとかが伝わるともっと良いかなって。こういう悪霊の類って、初めは怖くなさそうに見えて、一瞬でゾワッとさせるんです」
「なるほどな」
先生がゲラ紙にカラーペンで何かを書き足す。
俺はくすくすと笑いながら、いちごソーダをもう一口飲んだ。──なんて美味しいんだろ。
「普段はあまり俺の原稿に興味を持たねえのにな」
「俺はアシスタントでもあるんでしょ。たまには先生の役に立ちたいなって」
ソファの上。コップに注いだビールを飲む先生にぴったりと寄り添って、俺は読み終わったゲラをテーブルの上へと滑らせた。
「先生、俺が役に立つのは仕事のことだけじゃないですよ」
「ああそうだな。晩酌に付き合ってくれる奴がいるというのは有難い話だ」
「それだけじゃないでしょ?」
目を細めながら人差し指で先生の股間を押すと、ジャージ越しに先生の先生がビクリと反応するのが伝わってきた。
「どうした黎人。今日はセックス抜きで、ジュースとお菓子で夜更かしする日なんだろ」
──そんな約束してたのか。面倒臭いな。
「先生、……俺と、したくない?」
「したくない訳じゃねえが、お前確か昨日の晩飯に食った激辛ラーメンのせいで、ケツが燃えるように痛いとか……」
「………」
──れ、黎人とかいう奴、なんて品がないんだ。ネコの癖に激辛ラーメンなんか食べる方がおかしい。
「じゃ、じゃあお尻は使わなくていいですけど……。とにかく先生、俺もう欲しくて堪らないんです」
「今日の黎人は何か変だな」
「こんなに先生の近くにいるのに、変にならない方がおかしいです」
言いながら、何度も先生の頬にキスをする。いちごソーダのボトルをテーブルに置いて、カラダ全体で先生にしがみつく。
ああ、この無気力人間な男の匂い。俺にここまで執着させるのに、本人はちっとも俺の正体に気付いていない鈍感さ。それでも俺達のような存在に興味津々で、波長はすこぶる俺と合う。一時的に体を借りたこの「黎人くん」の感受性が強く、しかも先生と恋人同士だったのもラッキーだった。
生身の男と交わるために女性に憑依したこともあるけれど、やっぱり男の体のままでセックスしたい。
「先生、エッチなことして下さい……」
人差し指で触れていた部分を今度は手のひら全体で押すようにして揉みしだく。先生が心地好さそうに息をついて、俺はその耳の縁をゆっくりと舌でなぞっていった。
「おぉ……」
「先生、おちんちん硬くなってます」
「そりゃ、そんな風に揉まれたらな」
「見てもいい?」
「ん」
俺はソファを降りて先生の前に跪き、先生のジャージとパンツを脱がして舌なめずりをした。久し振りの男だ。たっぷり味わってやる。
「はぁ……」
「んぅ、……んっ……」
舌に感じるこの「熱」──これこそが生身の人間である証。男の精液は命そのものだ。堪らない。しゃぶればしゃぶるほど欲しくなる。
もっと……もっと、もっと欲しい。
「黎人、今日は随分とがっついてるな」
「はぁっ……。だって先生のちんちん、美味しくて……」
先生が俺の頭を撫でて、ふうぅと太い息を吐き出した。
「せんせ、……飲ませて……。先生の濃ゆい精液飲ませて……!」
「昨日も出したから、あんまり濃くはねえが……」
「それでもいい……お願い、せんせ……」
思い切り咥え込んで何度も頭を上下させれば、先生が荒い息を吐き出して「ああやべえ、何だそれイキそう」と俺の手を強く握りしめた。
「出すぞ黎人、……!」
「んんっ、……! ん、う……」
口の中に広がる精の味。舌の上に感じる熱。とろとろで粘っこくて、飲み込もうとすると喉のあちこちに引っかかる。
「はぁ、……美味し……」
「変だな。いつもは苦いから飲みたがらねえのに」
「勿体ないなぁ……今までの俺ってば、贅沢ですね」
俺は床から立ち上がり、先生の額にキスをしてから微笑んだ。
「俺は先生になら、何をされてもいいのに……」
「黎人」
「ね、先生……セックスしよ。先生の熱い精液、今度は俺のお尻にいっぱい出して……」
自分の下着を脱いで、まだ若干硬さを保っている先生のペニスを優しく擦る。すぐに挿入可能な形状になったそれの上にまたがり、そして「黎人」の狭い入口に──
──やめろ!
「うわっ……!」
突然俺の体が横に倒れ、ソファの上に投げ出された。
「な、なに……?」
「どうした黎人」
──これ以上先生に触るな。俺の体でも許さねえぞ!
「……は、今更ご本人登場か。もう遅いよ、先生は俺の物だ。……え? ああ、別に。アッチの世界に持っていく気はないよ。……うん、そう。ただ欲求不満なだけ。別に誰でもっていうか……たまたま彼の欲望が俺と一致したってだけで。……うんそれで、たまたまあんたの体を借りれたってだけ」
「お、おい黎人……。人のチンコ握ったまま何をぶつぶつ言ってるんだ。……チンコと喋ってるのか?」
──色情霊って奴か、お前。
「うーん、自分ではそんなつもりないよ。常にエロいことがしたくてしょうがないって訳じゃなくて、俺と波長の合う男とのセックスがしたい気分だったってだけ」
──どうでもいい、早く体を返せ。
「ここまできてセックスしないとか無理。別にいいでしょ、あんたにだって俺を通じて感覚は伝わるんだだし」
──だから言ってるんだ! さっきのフェラなんか深く咥え過ぎて危うくえずきそうになった!
「あはは。たまにはディープなのやってあげた方がいいよ、これだけいいモノ持ってるんだから勿体ない。別にずっと借りる訳じゃないから安心して。明日の朝には元通りだよ」
「おい黎人、さっきから何を独りで言ってるんだっ?」
「ごめんね先生、お待たせ。時間も限られてるし、今夜はいっぱいエッチしようね」
──おいやめろってば! マジで言ってんだ、やめろ!
「残念、やめないよ」
すりすりと先生のペニスを撫でて、今度こそ入口にあてがう。対面座位なんてラブラブなカップルらしくてうっとりしちゃうよ、黎人。
「おい黎人、大丈夫なのか──」
「挿れるよ、先生……おちんちんお尻にちょうだい……」
──やめろおぉッ!
「黎人っ……!」
───。
「んん、んあ、あ……んやああぁッ──!」
「れ、黎人っ……?」
信じられないほどの激痛。いや、もう痛いなんてモンじゃなかった。熱い。焼けた火鉢を突っ込まれたかのような熱を伴った、凄まじい激痛──。
「いっでええぇ──ッ!」
ソファに倒れ込んでのたうち回る俺の頭の中に、涙声になった「黎人」の言葉が届いた。
──だ、だから言っただろ! 激辛ラーメンのせいでケツが痛いんだってば! ふざけんなよお前ほんと、マジでケツが燃えるっての!
「大丈夫か黎人。ケツの穴が痛てぇのか、薬塗るか?」
「せ、せんせぇ……」
助けを求めるように手を伸ばすと、先生が俺の手をぎゅっと握りしめた。
……そして、痔の薬を渡された。
「大丈夫か、塗ってやろうか?」
「……平気、です」
よりによってこんな体に憑依してしまうとは。何て運が悪いんだ。誰だ、月夜にはいい出会いがあるなんて言った奴は。
「も、……もういい……」
──もういい。返す、こんな体!
「え、……あ……」
──いつか絶対に彼とセックスしてやるからな。その時は辛いモン食うなよ!
「……戻った。……はは、良かった……」
手のひらをニギニギさせて、自分の感覚を確かめる。戻れた。本当に良かった……こんな形で憑依されるなんて生まれて初めてだ。
「黎人……?」
「せ、先生……!」
俺は訳が分からないといった顔の夜城先生に飛び付いて、思い切りその胸に頬擦りした。
俺の先生。俺だけの先生。霊だろうと何だろうと、先生が俺以外の男とセックスするなんて絶対に嫌だ。
金輪際、先生には指一本触れさせない。
「先生、大好き……。俺、先生のことめちゃくちゃ大好きだって……ほんとにっ……うぅ、う……もどれで、よがっだぁ……」
「ううむ、今日の黎人はやはり変だな……。まあ可愛いから良いが」
鼻をすすりながら泣く俺を、先生が抱き寄せて優しく撫でてくれた。この広い胸に、不摂生な癖に逞しい腕。大好きな先生の匂い、声、温もり。
ここは俺だけの特等席だ。ずっとずっと、俺は先生の傍にいるんだ。
「先生、セックスしたい……」
「いやお前、ケツに爆弾を抱えてるだろ」
「じゃあもう一回咥えていいですか?」
「無理するな、次は俺が咥えるが……」
「いいんですっ、さっきのフェラなんかよりずっと気持ち良くしますから!」
「うぉっふ、……!」
世の中には「危険」とされている心霊スポットが幾つもある。
俺達の地元・九蓮宝町にある例の廃屋は、危険な霊の存在はない。
だけどあそこには、俺にとって一番「危険」な霊がいる。
ブロック塀に座って微笑む全裸の美青年が見えたなら気を付けて。──もしもあなたに素敵な彼氏がいるなら、特に。
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