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第12話 にゃん太と秘密のお菓子

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「……ん。あ、あれ……? いつの間にか眠っちゃって……」
 気付いた時、既に窓の外は朝になっていた。
 テレビ画面はDVDのチャプター選択で止まっていて、食べきれなかったフライドポテトがテーブルの上に残っている。

 俺は冷たくなったポテトを一本摘まんで口に入れ、「確か昨日は映画ナイトで……」とおぼろげな記憶を手繰り寄せようとした。
 映画の前に何か大事件があったような気がするのに、まるで本のページがごっそり抜け落ちたようにその部分だけ思い出すことができない。嫌な感情は残っていないから、多分そんなに気にすることではないのかもしれないけれど……。

「……んん、那由太ぁ」
「あ、炎珠さんおはようございます!」
 取り敢えずDVDを消して朝の情報番組を映し、ハンバーガーの包み紙やナフキンをゴミ袋にひとまとめにする。
「那由太、大丈夫……?」
「え? 何がですか?」
「覚えてないの?」
「な、何を?」
 炎珠さんがぼんやり俺を見つめている。そうしているうちにソファの上で丸まっていた刹が起きだして、彼もまた俺を見るなり「大丈夫か」と訊いてきた。

「何なんですか。俺、どうしてそんなに心配されてるんですかっ?」
「つかぬこと訊くけど、那由太って今まで飲み会とかでお酒飲んだことある……?」
 炎珠さんの唐突な質問に驚いたが、俺は「うーん」と首を捻ってこれまでのことを思い出した。
 バイトの飲み会は年に数える程度あったけれど、お酒は飲んだか覚えていない……というか、あんまり参加していなかったし。

「あ、でも一度バイト仲間と飲んだことがあって、その時は翌朝も凄く気持ち悪くなっちゃったので……そこからアルコールが苦手になったっていう記憶はあります」
「………」
 炎珠さんと刹が目を見開いて俺を見つめている。

「そ、その時って……大丈夫だったの? バイト仲間に変なことされなかった?」
「さ、されてませんよ。翌日『お前は酔うと豹変する』とか言われたくらいかな……。特に暴れたり迷惑行為をした訳じゃなかったみたいで、それも笑い話で終わったし」
「だ、大丈夫かな刹」
「……大丈夫だろう。万が一昨日みたいなことが起きていたとしたら、笑い話では済まないだろうしな」
「何の話ですか?」
 何でもないよ、こっちの話。と炎珠さんが何かを誤魔化すように笑った。

 少し謎は残ったけれど、これといって謎を引きずることなくまた俺達三人の日常は進んでゆく。
 ただ少し変わったことといえば、刹の食事時や風呂上りに飲むビールの量が減ったということくらいだろうか。

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