天獄パラドクス~夢魔と不良とギリギリライフ

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
16 / 64
#2 男子高校生のフラグ

しおりを挟む
「ひ、あっ……」
「音で分かるぜ炎樽。自分のチンポ扱きまくってんだろ、見てえなぁ……」
「ん、んぁっ、……だって、仕方ない、じゃんかっ……」
 扱く度に溢れる体液も透明で見えないけれど、手に触れる感触ではしたなく先端を濡らしていることが分かるのが逆に恥ずかしい。

 恥ずかしいから、大胆になる。

「た、天和っ……、たかとも、……」
「エロいことしながら俺の名前呼ぶとか、マジで才能秘めてんな」
 耳に天和の熱い息がかかり、強く乳首を抓られる。その瞬間ひと際強烈な刺激がペニスを包み、俺はそこから手を離し背中を仰け反らせながら声を上げた。

「ああっ、──あ、ああぁっ!」
 触れてないのに射精が止まらない。腰が痙攣して立っていられず、背後の天和に思い切り全体重を預けてしまう。
「ふ、あぁっ……!」
 ……それと同時に制限時間の二十分が過ぎ、呆気なく俺の痴態がその場で露出した。


「ようやく見えたぜ炎樽、予想以上に酷でえ姿に──」
「あ、……? な、に……?」
 後ろから天和に抱えられ、学ランもシャツも胸まで捲られ、開いたファスナーから飛び出した俺のそれを……便座の前でしゃがんだマカロが咥えていた。

「ん。んん、……はぁ、美味し。ご馳走さま、炎樽」
「マカ、……お前……」

 唇の端から垂れた俺の精液を舌で舐め取り、マカロが満足げに腹をさすっている。放心している俺は事態が呑み込めなくてぼんやりそれを眺めていたが、背後で俺を抱えている天和の殺気を感じ取り、瞬時にして理性を取り戻した。

「ば、馬鹿っ、何やってんだよマカ!」
「だ、だって炎樽が無駄イキするって思ったら、種が勿体なく思えて……!」
「てめぇ、……最初からそこにいて、炎樽のチンコ咥える機会を狙ってたってことか……」
「違うっての天和! これは偶然、たまたま、不可抗力ってやつ!」

 青臭い精の匂いで酔っ払ったように顔を赤らめながら、マカロがパッとフィギュアサイズに体を縮める。怒られても怯える様子がないのは酔っているからだろうか。ふらふらと宙を飛びながら「久々の闘魂注入、最高!」とか言っている。

「小蠅野郎、叩き潰す! どけ、炎樽!」
「あは。潰される前に炎樽の鞄に戻ってるよ。昼休みが終わるまで、ごゆっくり!」

 そう言ってマカロがドアの上から外へ飛んで行ったのを見届けた俺は、げんなりしながらファスナーを上げて便座に座った。

「……せっかく透明になってたのに、何か予定が狂ったなぁ。今日こそ平和に飯食おうとしただけなのに……」
「俺がお前の教室まで行くのを待ってれば良かったんだ。ふらふら出歩いてっからこんな目に遭うんだぞ」

 言われて少しムッとなったが、教室で見た光景を思い出して俺はつい含み笑いをした。
「でも天和、ちゃんと一年生のお誘い断ってたな。こうやって抜く羽目にはなったけど、誘惑に負けると思ってたから見直したよ」
「あれも見てたってのか」
「偶然だけどね。毎日フラグが立つっていうのも大変だなって思ったよ」
 天和がそっぽを向いて頬をかき、「てめえで決めたことだ」と小さく呟いた。

 ただでさえ性欲に囚われがちな男という性別で、その上十代の盛んな時期。三日で精子は溜まるというから、その理論に沿えば少なくとも三日に一度は発散しないとならない。オナニーは恥ずかしいことじゃなく、セックスだって互いに正しい知識と責任を持って行なえば良いと思う。

 ただそこに「感情とか事情」が入ると話はまた違ってきて、ただ性欲を発散するためのセックスだと途端に卑猥なものとして見られることになる。愛がないとか遊びだとか、……そう言われるのはやっぱり、普段人には見せない姿を見せることになるからだろうか。

「………」

 だって俺は天和とこんなことをしてしまっているけれど、素っ裸になって恥ずかしい格好をしたりする、ってなったら……やっぱり「信頼できる好きな人」としかしたくない。と、思うし……。
 痛いだろうし、苦しいだろうし、泣くだろうし。
 ……大事にしてくれる人とじゃなきゃ、無理だろうなぁ。

「取り敢えず場所移動して、飯でも……」

 便座から腰を上げたその時、個室の向こうで知らない生徒達の声がした。

「おおい。ここ、誰か入ってんだろ。匂いやべえぞ」
「俺達も混ぜろ!」
 からかうような声色と共に個室のドアがノックされ、俺は立ち上がりかけた中腰のままぴたりと体を停止させた。
 天和がニヤつきながら、外の生徒達に向けて悪態をつく。

「てめぇら、邪魔すんなら後でぶっ飛ばすぞ」
「げっ、鬼堂か。やべぇ、邪魔したな」
「の、覗くだけも駄目か?」
 天和が俺の腕を引き、腰を絡めとって自分の体へ密着させた。俺は何も出来ずにじっと息を潜めるだけだ。
「覗いたら目ん玉潰すからな。……まぁ、聞くだけなら許してやるけど」
「えっ? た、天和──」
 言うなり天和が俺の唇を塞ぎ、中で舌を絡めてきた。今朝されたような息苦しいキスではなく、……ゆっくりと甘く、愛おしむような動きで。

「ん、っ……」
 同時に片手で尻を揉まれ、もう片方の手で耳の付け根を柔らかく揉まれる。唇は離れているのに舌先は触れ合ったままで、俺はとろけるようなキスがあるということを生まれて初めて知った。──僅か二度目のキスなのに。
「は、ぁ……」
「エロい気分になってくるか? このままひん剥いて犯してえけど、流石にトイレが渋滞しても後が面倒臭せえからな……」

 俺を解放した天和が便座に足をかけて上り、個室ドアの上の隙間から外を覗いて言った。
「てめぇら今すぐどっか行け。抜くなら教室でヤッてこい」
「わ、分かったよ。……勝手な奴だな……」
 すごすごとトイレを出て行く生徒達を見届けてから、床に降りた天和が個室の鍵を開けて俺の手を取った。

「購買で昼飯奢ってやる。まだ多少時間あるし、炎樽の教室で食おうぜ。あのチビも待ってんだろ」
「う、うん。……あれ、でも天和、今朝コンビニで俺の飯買っといてくれたんじゃ……」
「そんなモン、二時限目には食い終わった」
「……あ、あっそ……」
 何とも色々な出来事があったけれど、当初の目的だった「ゆっくり飯を食う」という目標は何とか達成できそうだ。

 俺は唇に残る天和の熱にそっと指で触れ、その瞬間確かに聞こえた胸の鼓動を無理矢理心の奥へと押しやった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...