探検サークル存続のためにダンジョン配信をはじめたら、人気のJKインフルエンサーを助けてバズってしまった件

橘まさと

文字の大きさ
3 / 51
第一章 大岳ダンジョン編

第3話 一か月遅れの彦星

しおりを挟む
■奥多摩 大岳ダンジョン 1階層

 ”どうしようもならなくなったら大声で叫んでくれ”

 別れ際にそういう言葉を告げたサグルの顔を思い浮かべながら、姫野はダンジョンの外へ出ようと息を切らして少し早歩きで進んでいた。
 スライムに服を溶かされて、下着姿の彼女には貰った【DAI】製の防寒・防塵ジャケットはありがたい装備である。
 だが、毒への対処をしていないので、外のダンジョンに併設された救護施設へ向かいたかった。

「クリーニングして返さなきゃ……ね。はぁ……大和田大の探検サークル部長のサグルさん、か……まさにダンジョンに入るためのいるような……名前」

 疲れながらもクスクスと笑い、ぽよんぽよんと跳ねるスライムを避けて出口を目指す。
 まともに戦える状態ではないので、早く脱出したかった。
 それに配信で服が溶けてしまったのは流れてしまったので、すぐに切ってアーカイブにもあげてないが、ここに視聴者が来ないとは言えない。
 優しい視聴者の多い姫野チャンネルだが、多くの人が集まれば中には悪い人もいる。

「おーう、織姫ちゃーん♪」
「彦星がお迎えにきたよぉーん」
「グヘヘヘ」

 今、目の前にいるようなのがその筆頭だ。

「すみません、ファンの方でしたら今は緊急事態なので脱出させてください。冒険者のマナーとしてありますよね?」

 毅然とした態度を崩すことなく、姫野は目の前の男たちを見る。
 すぐに見えるのは3人だが、まだ他にいそうではあった。
 入口付近も見張りを立てて、ダンジョンへ入らないようにしていることだって考えられる。
 目の前にいる男たちはそういうことを平気でしそうな顔をしていた。
 
「何度もいいますが、どいてください……」
「そんな冷たいことをいうなよ、大変な状況なんだろ?」
「だから、助けにきてあげたじゃーん」
「グヒ、だから僕ちゃんたちと休憩できるところいこ? ギュフゥ」

 ググっと姫野の握る拳に力が入る。
 だが、今の恰好では自由に動けないのが現状だ。
 ブラッドスライムからの毒もまだ完全に抜けきっていない状態なので、不利である。
 ゴクリと唾を飲み込み、姫野は意を決した。

「誰かぁァァァァ! 助けてぇぇぇぇぇ!」

 姫野の大きな声が洞窟内に響き、驚いた男たちが武器を構えて姫野に迫った。

「ちぃっ! おとなしくついて来てくれりゃあ、手荒な真似はしないで済んだものをよ」
「グヒィ! し、しばって運ぼう、グフュグフュ」
「見張りの奴らもくるだろうから、 さっさとやっちまおうぜ! いくらBランクといっても俺らもDランクだ。戦いは数だぜ!」

 物陰に隠れていたり、入口からやってきたりと男達の数が増える。
 姫野の納めている古武道は1対1を基本としたものであり、数を相手にすることには向いていなかった。

(万全だったら、何とかなったかもしれないのに……)

 姫野はせめて背後を取られまいと、岩壁に背を当てて息を整えて構える。
 いざという時のためにステルスモードで飛ばしていたドローンへ配信撮影の指示も【Dphone】で出していた。
 
「追い詰めたぜ、さぁ、行こうか織姫ちゃーん」

(助けて、サグルさん!)

 織姫が願ったとき、背後の岩壁から手がにゅっと出て来たかと思うと、姫野を掴んで沈んだ。
 プールに潜ったような息苦しい感覚があったのちに、地上へと出てくる。
 周囲を見渡せば、背後には外の光が差し込む出口、姫野の前には仁王立ちになっているつなぎ姿のサグルがいた。

「サグルさん!」
「言いつけ通り、叫んでくれて助かった。ケイブワームから〈地中移動〉を取っていたのを思い出したので、一気に来れたよ」
「相変わらず……無茶苦茶、ですね」

 思わず涙を流しだした姫野をサグルは黙って見下ろしてから、手を振って下がれと相図する。
 姫野もそれに従って入口の方へ下がっていったが、ステルスモードのドローンとサグルの様子を見守ることにした。

「おっさん! どけよな、いいかっこしてんじゃねぇよ!」

 背負っていた六角棒を軽々と振るい、喧嘩を売ってきた男がサグルを睨む。
 サグルの顔はぼさぼさの髪で隠れているのでみえないが、動いてないところを見る限り大丈夫そうだ。

「洞窟で騒ぐのはマナー違反だ。静かに潜れ」
「グフュゥ、静かにするにはそっちの織姫ちゃんを渡すんだな!」

 太った男がスライムのように跳ねながらサグルに襲いかかる。
 危ないと姫野が思ったのもつかのま、サグルは〈収納〉からスコップを取り出すと、掬いあげるようにして出口へと転がした。
 どんな力があればあれだけのことができるのか、姫野にはわからない。
 あての体重はざっと100Kg以上はあるはずだった。

「まだやるか? 俺には708のスキルがあるので、お前たちを倒すくらい造作もないぞ?」

 スコップを肩に担いでトントンと叩いている。

「嘘つけ! そんな数のスキルを得られるはずがねぇだろうが! やっちまえ! うぉぉぉ!」
 
 リーダー格の男がサグルに向かっていくが、サグルはスコップを上手に使って防御や攻撃をして男たちを片付けていった。
 
(かっこいい……)

 トクンと姫野の胸が鳴り、目の前のサグルに釘付けとなっている。

(一か月遅れだけれど、彦星に出会えたよ)

 姫野はサグルと共に大岳ダンジョンを後にした。
 見惚れていたために、ドローンがずっとその様子を撮影配信していたことに気づいたのは、たくさんの通知が届いてからである。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵
ファンタジー
 ーーある日、平穏な世界は終わった。  そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。  そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...