異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと

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三杯目 疲れた体にガッツリチャーシュー麺

第4話 ラーメン屋、領主からのお墨付きをもらう

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■ヴァルディールの館 庭園
 
 日が落ちはじめて、庭園パーティも終了の時間がやってきた。
 俺も屋台を片付けて、終了の挨拶に備える。
 アルヴィンが館の中から婦人と子供たちを連れて現れると、拍手で出迎えられた。

「今日は皆、おもてなしをありがとう! 初参加のタケシは特にお疲れ様だ!」

 俺の隣にやってきたアルヴィンが肩をバシバシたたいて、ガハハと笑う。
 豪快な性格なところは貴族らしくないというカリンの言う通りだった。
 
「タケシには世話になった。ここへきている貴族の皆々様方からもたくさんの礼をいただいたぞ。そこで、お……私から、紋章入りを旗を渡すことにした。受け取ってくれ」

 アルヴィンが指示をだすと、両手で旗を丁寧に持った騎士たちがやってきて、アルヴィンに旗を掲げながら、膝をついた。
 旗を受け取ったアルヴィンが俺に騎士と同じように跪くことを小声で指示をしてくる。
 俺はそれに従い、跪いて頭を下げ受け取れる姿勢をとった。

「タケシよ、貴君に我が領土の旗を与える。この旗を掲げるものは領主であるアルヴィン・ド・ヴァルディールの庇護下であることを示すものである。今後とも我に力を貸してほしい」
「ありがたき幸せ、今後とも領主様に尽くします」

 パチパチと拍手が起きて祝福が起きる。
 急なことだったが、何とか対応できたようだ。
 パーティの終わりの挨拶がその後続き、俺も帰るためカリンを探す。
 すると、俺の右腕の袖が引っ張られた。
 視線を向けると、もじもじしているエリスがそこにいる。

「あ、あの……おじ様、いえ……タケシ様。よかったら、お夕食をご一緒しませんか?」
「俺? お……いや、私がご一緒してもよろしいの、です、か?」

 急に丁寧なお誘いを受けたせいか、俺はたどたどしくも丁寧に答えてしまった。

「タケシ様、もっと気楽に話していいですのに……うふふ」

 チュロスのチョコレートのお陰なのか、エリスはだいぶ元気になったようである。

「エリス、こんなところに……お前も元気になったからといっても動き回ったらまた体調を崩してしまうぞ」
「お兄様! 今日くらいわたくしの好きにさせてくださいな!」

 声の方を振り向けば、アルヴィンの息子であるフィリップがカリンの手を引いてエスコートしていた。
 その姿はさすが貴族のお坊ちゃん、上品で決まっている。
 俺がやったら絶対に似合わない自信だけはあった。
 
「ふふふ、その様子だとタケシも誘われた感じかしら?」
「【も】ってことはカリンもか、カリンがいるなら俺も甘えさせてもらおうかな」

 カリンがエスコートされてきたことから予想はしていたが、カリンも一緒に食事ができるのならば夕飯代を浮かせるために食べるとしよう。

「坊ちゃま、お嬢様、お食事の準備ができましたのでお客様を連れて食堂までお越しください」

 老執事が呼びに来たので、俺達は食堂へ向かうのだった。

■ヴァルディールの館 食堂

 用意されていたのは豪華な料理の数々。
 何の肉かわからないものもあったりしているが、昔、接待で食べたことのある高級ドイツ料理コースのようだった。
 確か一食2万円のコースだったことを覚えている。
 
「作法は気にせず、遠慮なく食べてくれ! ここには俺らしかいないからな!」

 襟元のボタンをはずして楽になったアルヴィンに従い、俺も襟元のボタンをはずして料理に手を付ける。
 ソーセージなど馴染みのあるものから食べていくが、美味かった。
 一角亭の料理も素朴で好きなのだが、それとは違う高級な食材に高級な調味料を金に糸目をつけずに使っているからでるようなおいしさである。
 
「タケシ様、こちらのサラダも美味しいですわよ」
「お、おぅ……」
「あらあら、エリスはすっかりタケシさんを気にったようですね」

 なぜか、俺の右隣に陣取っているエリスが取り分けたサラダを俺の前に渡してくる。
 その様子を微笑ましく見ているアンリさんが若干怖いんだが……。
 
「タケシはいいやつだから、エリスを嫁に出すのもアリだな……家督はフィリップが継いでくれるからな」
「ぶふっ!?」
「タケシ様!」
「タケシ、大丈夫?」

 アルヴィンが変なことを言い出したので、俺はむせた。
 むせた俺をエリスと左隣に座っていたカリンが気にかけてくれる。
 ん? いつのまにか両手に華なのか? いやいや、エリスは14歳と聞いているぞ? この世界ではもう大人になるのか!?
 俺は心を落ち着けるように深呼吸と共に脳内を整理する。
 話題を変えよう。

「それの話はまたいずれ……ええと、せっかく領主様から旗をいただいて領内の移動が自由になったようなものなので、この街以外にも出払っていきたいと考えていますが、どこかオススメはありますか?」

 丁寧で早口にしゃべり、会話の空気を俺は変えていった。
 
「それならば、1つ依頼したいことがあってな……フェルハイム村がモンスターに襲われて食料不足になっていてな、タケシの力を貸してもらいたいんだ」
「フェルハイム村はこの街から馬車で2日かかるわ。モンスターに襲われて困っているなら急いでいかなきゃいけないわね」
「ああ、先遣隊となる冒険者は送っているので村が全滅するとは思えないが、食料不足についてはタケシの力が必要だ。〈アイテムボックス〉もあるし、あのキッチンカーもあるからな」

 アルヴィンが食事の手を止めて真剣な瞳で話してきた。
 俺は中身を確認しながら、頷く。
 困っている人がいるのならば、断る理由はなかった。
 
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