異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと

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三杯目 疲れた体にガッツリチャーシュー麺

第8話 ラーメン屋、炎の妖精と交渉をする

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■フェルハイム村

 翌朝、朝食を作り配給をしていく中で、俺はカリンや、ダリウス達に一晩寝かせた美味さがでているフレイムホッグチャーシュー麺をだした。
 肉厚チャーシューをキッチンカー内臓の電子レンジで何とか作れたのは素直にうれしい。
 キッチンカーの機能拡大も金をかければなんとかなるので、また稼いでいろいろしたいものだ。
 話がそれた、チャーシュー麺らしく麺やスープが見えないほどに肉をのせて提供を行う。
 スープは醤油で固定、もやしもちょっとのせていて見栄え重視にした。

「どれどれ、んん!? フレイムホッグの肉はただ焼くだけでは固いんだが、柔らかくもうまいぞこれは」
「本当ね。タケシの料理へのあくなき探求心には感心するわ」
「タケシ様のらぁめんは最高ですわ」
 
 チャーシュー麺を食べたカリン、ダリウス、エリスは口々に褒めてくれたのでうれしい限りだ。
 朝食を終えた後、ダリウス達はヴァルディールの冒険者ギルドへ現状報告を行いに戻る。
 ラーメンを食べたことで、朝から元気に村を後にした。

「火山地帯へ行きたいのならば、念のため人を分けていきましょう。私と回復役でリンダがタケシと一緒に火山地帯へ。残りは村に残って警戒や、塀の作り直しを手伝ったりしてほしいわ」
「わかったわ、こちらは私たちに任せていって来なさいな」

 カリンの指示にサブリーダーのセシリアがうなずき、送り出してくれる。
 早く移動をするため、キッチンカーを出して走らせることにした。

「ちょっとというか、かなり狭くなるが助手席に乗ってくれ」
「乗り心地の良さはエリス様から聞いているから、ちょっと楽しみね」
「ほんとだよ、じゃあよろしく頼むさね」

 助手席にカリンとリンダが乗り込むのを確認したら、俺は運転席についてキッチンカーを走らせる。
 村人が手を振りながら俺達を送り出してくれた。

■火山地帯

 体が密着した状態で走ることになった道中は、いい匂いが充満した座席の空間で俺が理性を保てるかどうかという状態ではあった。
 それ以外はモンスターをクラクションを鳴らして逃がしたり、不壊属性なのをいいことに轢き逃げしたりと、日本で見つかったら免停じゃすまないような運転をしながら急いで走りきった。

「ちょっと狭かったけど、ウマより早かったから助かったわ」
「ほんとだねぇ、ゴブリンをそのままつぶしたのには驚いたもんさ」
「それにしても火山地帯というには熱くないな……」
「多分、さっきの料理でバフがかかっているんじゃないかしら?」

 俺がカリンのステータスを〈鑑定〉するとフレイムホッグチャーシューの効果で【耐熱】のバフがかかっている。
 朝に食べて来て正解だが、モンスターをうまく調理してラーメンなどに使っただけでもこの効果は知られたら大騒ぎだろう。

「じゃあ、バーナムとやらを探すか。ルーミラ」
「はーい、じゃあ呼び掛けてみるね」

 ルーミラが虚空から現れて、目を閉じて意識を集中させはじめた。
 妖精同士の呼びかけの儀式みたいなものだろう。
 しばらく、周囲を警戒しつつ待っていると炎をまとった小人が姿を見せた。
 バーナムと呼ばれる妖精なのだろう。

「お前がバーナムか?」
『うん、僕がバーナム』

 バーナムは俺とルーミラでしかわからない妖精語で話してきた。
 〈多言語翻訳〉のスキルがあってよかったと思う。

「フレイムホッグが村を襲って困ったんだ。お前がここに来たことが理由のようなんだが、知らないか?」
『僕の住処が危険。火竜の目覚め、近い』

 俺の聞き取りが悪いのか、バーナム自身があまり話すのを得意としてないのか端的な言葉しかわからなかった。
 ただ、ヤバそうなことだけはわかる。

「この山で眠っていた火竜が復活しそうで、そのためバーナムも住処を追われたらしい」
「火竜!? そんな上位のモンスターの対応なんて、私達だけではどうにもできないわ」
「そうさねぇ、そうなるとこの問題の解決をするには冒険者ギルドに依頼を出して大々的な火竜討伐をするしかないさねぇ」
「そうか、あの村を守るにはそうするしかないんだな……」

 俺はカリンとリンダに事情を説明したあと、バーナムのほうへ向き直って話をつづけた。

「わかった、俺達で火竜を何とかしてみる」
『本当? 嬉しい』

 顔も火でおおわれているので表情はわからなかったが、聞こえてくる声からは喜んでいる様子が伝わってくる。
 ただラーメンを作っていたいだけなんだが、ドラゴン退治までやることになるなんてなぁ……。
 【人生は小説よりも奇なり】とはよく言ったものだ。

「ドラゴンの肉ってうまいのか?」
「ほんと、タケシって……」
「「ぶれない」」

 カリンとリンダに言われて俺は頭を掻く。
 戦闘がどうなるかは置いておいて、俺はラーメン作りのためになることならば全力を出せる。
 だから、美味いものを作ってふるまう準備だけは整えようと俺は心に決めるのだった。
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