鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ

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ホットサンドとナポリタン

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「お待たせしましたー」

 ハイトーンボイスに華やかな笑顔を添えて、アルバイトであろう若い女の子が、コーヒーと料理の皿をテーブルの上に並べていく。

「好きなだけ食べなよ。食べたかったんでしょ? ナポリタンとホットサンド」

 彩葉に言われて、問い返す。

「なんで分かったんですか?」

「あんだけメニューの写真をガン見してたら、誰だって分かるでしょ。まぁ、和葉は気付いてないみたいだったけど。あいつは筋金入りの鈍感だからね。これから一緒に暮らすんだから、覚えといた方がいいよ。和葉には『察して欲しい』とか『言わなくても分かって欲しい』とか、そういう以心伝心なことは絶対に期待しちゃダメだから。あいつには、態度に出すだけじゃ通じない。これでもかってくらいハッキリ言葉にしないと、全然伝わらないからね」

 そう言ってから、彩葉はコーヒーを一口飲んで、こう付け足した。

「あと、うちの住み込み家政夫になるんなら敬語はやめてくれる? 家にいる時まで気を使いたくないから」

「分かりました」

「って、敬語じゃん」

「急にはちょっと……。それに、和葉さんの意見も聞かないと」

 和葉の名前を出したところで、本人が戻ってきた。

「すみません、話の途中で席を外しちゃって」

 謝る和葉に、彩葉が仏頂面で話しかける。

「どうせ梨花りかからでしょ? あの女、いっつも邪魔してくるよね」

「おい、そういうこと言うのやめろよ」

 和葉が眉間に皺を寄せる。

「で? あいつ、何だって?」

「……新しい同居人が決まったんなら、会っておきたいから家で待ってるって」

「はあ? なんで梨花に会わせる必要があるんだよ。大体、赤の他人に合鍵なんか渡すなって言っただろ!」

「もうすぐ家族になるんだから、いいじゃないか。結婚して家を出て行く時は、梨花に渡してある合鍵もちゃんと回収するから」

 どうやら、和葉は梨花という女性と婚約中で、もうすぐ結婚するらしい。

「あの……お話し中にすみません。和葉さんが結婚して家を出て行った場合、家政夫として雇われた僕は……どうなっちゃうんでしょうか……?」

 不安そうに問いかける智樹の言葉に、彩葉が笑顔で答える。

「雇い主は俺だし、智樹が再就職先を見つけて出て行くまでは面倒見るつもりだから、心配いらないよ」

 そう言ってから、彩葉は和葉の方へ顔向け
「それでいいよね? あと、一緒に暮らす相手が敬語だとリラックス出来ないから、タメ口で話してくれって智樹に頼んだんだけど、和葉もその方がいいでしょ?」
 と尋ねる。

「そうだね。年も近いし、佐藤さんがそれでいいなら敬語はやめようか」

 和葉が同意すると、彩葉はさらに注文をつけた。

「苗字で呼ぶのもやめようよ。みんな下の名前で呼び合えばいいじゃん。ね、智樹」

 彩葉から呼びかけられた智樹は、反射的にうなずく。

「それじゃあ、これからよろしくね。智樹くん」

 和葉から差し出された右手を、智樹は一拍遅れて握り返した。

「よろしくお願いします」

 智樹の言葉に、すかさず彩葉がツッコむ。

「敬語やめろってば!」

「えっと……じゃあ、これからよろしく」

 言い直した智樹に、彩葉は満足そうな笑みを浮かべた。
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