[完結]サクリファイス~主従の契約

くみたろう

文字の大きさ
17 / 35
第2章 種族の優劣 命の重み

7

しおりを挟む
カーマインを真っ直ぐ見てリアンは答えた。
傍らに立つジーヴスを手で引っ張り前に出す。

「みんなも知っている通り、 ジーヴスには力がある。戦闘に向き不向きは勿論いるだろう。だがリアルドよりも戦力が高いのは確かだし、 何よりリアルドを減らす訳にはいかない」

「それはジーヴスだって同じだろ!同じ命だぞ!!」

「そうだな、 同じ命だ。だが、 我らリアルドとジーヴスの命の重みは違う。そうだろう?」

「違わない!死んでいい命なんかあるわけがない!!命に優劣があって言いわけがない!!
確かにこの世界はリアルドが中心になっているけど、 そもそもそれがおかしいじゃないか。サクリファイスがあってジーヴスを従える。生まれながらに虐げられる存在があってたまるかよ!!」

「……………それはカーマイン個人の考えだろう?今はそんな事を言ってる時じゃない。リアルドを優先的に残す必要があるのと同時に、
我々リアルドは非力だ。だからこそ、 ジーヴスに戦ってもらう。我々が戦いに出て何が出来る」

「…………………だからって」

「やらねば死ぬぞ、 全員がだ。リアルド、 ジーヴス関係なくな」

「………………」


 リアンの言葉にカーマインは俯いた。
血が出るくらいに手を握りしめて悔しさを滲ませるが、 言い返す言葉がなかった。

 リアルドはリアンが言ったように戦闘が苦手な種族だった。
周囲の増えた魔物の討伐や狩りはジーヴスが受け持っている。
それはリアルドに隷属されているからだけでなく、 純粋に戦闘スキルが高いのだ。
適材適所とは言ったもので、 肉体労働などはジーヴスの仕事だった。

 リアルドがこの世界で優れているのは生まれながらにジーヴスを隷属出来る、 サクリファイスを使用出来る。
ただそれだけだった。

「……皆、異論はないか」

「ないぜ」

口々に賛成の声が聞こえ、 リアンは今後の話を始める。

「今の予想ではここに到着するのは五日後、
その前の村には三日後には到着する目星が着いている。これに合わせてジーヴスたちは準備をはじめるよ!まずはあと2日で出撃の準備をしてすぐに隣の村のジーヴスと合流する。」

「合流するのか?」

「ああ、 戦力は多い方がいいだろうし、 出来たら村も守ってやりたいからな」

「………そうか、 隣の村にはリアンの好きな……」

「うるさいよ!口を閉じな!!」

 口を挟んだ男性のリアルドが頭を強く殴られる。
殴ることないだろ!と叫んでいるが、リアンは放置だ。

「………とりあえず、 みんなは余所見しないでをモンスターだけ倒してくれ。」

 はぁ、 と息を吐き出して言った。
子供、 妊婦以外の全ジーヴスは2日後朝にここに集合、 しっかりと準備をしておくように。

 やることは山積みである。
リアンは決まった内容を伝えるだけ伝えてすぐに配給にくりだした。

「ほら、 みんな腹減ってるだろ?腹が減ってはなんとやら、 だ。好きなだけ食え!」

 これから戦いに出るジーヴスへの激励にと、リアンが他のリアルドに声をかけあい準備をしていたのだ。空腹で動けないなど論外だからだ。

 備蓄のあるリアルドは嫌々ながらに差し出した。
なぜジーヴスの為に…そう思うものもいたが、 リアンに言われたら逆らえず少量ずつ差し出したのだ。
勿論、 カーマインも配給にするから備蓄があるのなら少しでいい、 提供してくれないか?とリアンに言われていた。


 群がるように寸胴鍋に集まるリアルドとジーヴス。
やはりリアルドに遠慮をしてかすぐに後ろに下がる。それをリアンはしっかり見ていた。

「今回はジーヴスの激励だから、 先にジーヴスな。わかったのかー!?」

 我先にと集まるリアルドに、 リアンはため息をつく。
そんな様子を見ていたカーマインは、 そっとベルライナの手を掴んで家に帰ろうとした。

「おーいカーマイン!良いのか?ベルライナに食べさせなくて」

「いらないよ、 みんなで食て」

 それだけ言い、 カーマインはベルライナの手を引いて小高い丘にあるカーマインの自宅に戻って行った。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

処理中です...