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第2章 種族の優劣 命の重み
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しおりを挟む「……………ベル」
「はい、 ご主人様」
居間にあるソファに項垂れて座るカーマインに、 ベルライナは静かに答えた。
ここには時計のカチカチとなる音しか聞こえない。
その音を無意識で追いながら、 カーマインは深く深く息を吐いた。
「…………スタンピードだって…モンスターがなだれ込んで来るって……そんなバカなこと…バカな…ことが、 起こるんだな」
「………………」
今から逃げても間に合わないことはカーマインもわかっていた。
生き延びる術はもう立ち向かうしかないのもわかっていた。
「……大丈夫です」
「…………ベル?」
「大丈夫です。ご主人様はベルが守りますから。…だから、 大丈夫です。」
慈愛に充ちた笑みを浮かべるベルライナに、 カーマインはジワジワと涙を浮かべる。
そして俯き眉を潜めた。
カーマインが座る足元にはポタポタと涙が落ちるのをベルライナは見ていた。
「…………俺は、 弱い…ベルを守るって言ったのに結局俺は何も出来ない!」
「そんなこと、 ありません」
ゆっくりとベルライナは歩き、 カーマインの足の間に座る。
ベルライナの膝にカーマインの流す涙がポタポタを落ちて濡れる。
「あるよ、 おれはベルの主人なのに何もしてやれない…」
「いいえ、 いいえベルは守って頂きました。他のリアルド様達からの心無い言葉の刃から、 ベルの心を幾度となく守って頂きました。ベルはそれが何よりも嬉しい」
「……ベル」
「顔を上げてください」
カーマインの頬に手を当てて顔を上げさせると、 今まで見たことも無い情けない涙に濡れた顔だった。
「…………………………」
「ベルはいつもいつもカーマイン様に守られて来ました。だから、 今度はベルの番です。ベルにカーマイン様を守らせてください。」
「死ぬかも、 しれないんだよ?」
「死にません、 ベルは生きてカーマイン様の元に戻ります。だから、 カーマイン様は笑顔でベルにいってらっしゃいと言ってください」
ベルライナの言葉に、 優しい笑みに、 眼差しに困ったように笑った。
「……笑顔で、 か…それはとても難しいな」
「カーマイン様が笑顔で言ってくださったら、 ベルは嬉しくて元気になります。そうしたらモンスターなんて指先でチョチョイと倒して、 やりましたよ、 とベルはカーマイン様にドヤ顔で言ってやるのです」
「ふふっ……指先で?」
「はい、 ベルは強いですから朝飯前です!」
「それは、 凄いな」
泣きながら笑うカーマインに、 ベルライナは頬に手を当てたまま目を細めた。
「だから、 言ってください。行ってこい、 と。ベルにスタンピードを止めてこい、 と。」
「…………ベル、 ベルライナ……倒してくるんだ。 だが、 絶対に死ぬな。俺の所に必ず帰ってくるんだ。かな……らずだ!!」
カーマインの腕輪とベルライナの首輪が光る。命令をした、受けた為だ。
それを見たカーマインは涙を止めることが出来ず、力の限りベルライナを抱きしめた。
小さい頃以来初めてだろう、 カーマインは声を上げて泣いた。
そんなカーマインをそっと抱きしめ返した。
「……必ず帰ってきます、 カーマイン様の元に………」
数日後にせまるスタンピード、 生きて帰ることをベルライナはカーマインに誓った。
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