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6(フリーダside)
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フリーダにはマリーとの婚姻の話が来る前からシェリーという恋人がいた。
平民とは言っても元男爵令嬢で没落貴族だ。
夜会の時に出会い愛を交わしたのだが、その時には家が傾きどうする事もできない状態だった。
まだ当時は両親が健在で伯爵としての権利もない伯爵令息のフリーダには手を貸すことも出来ずに平民落ちするシェリーを見ているしか出来ずに涙を流したのは今でも覚えている。
もしフリーダがその当時伯爵家の当主であったとしてもシェリーの家全てを救済することは難しいのでシェリーを輿入れさせて、領地の返却と家の売却をさせて婚姻の代わりに金を持たせて静かに余生を過ごす手助けしか出来なかっただろうが、今のように没落して生活に苦心する事は無かっただろう。
決定権のないフリーダには、何も出来なかった。
没落する後ろ盾のない娘を嫁にする貴族は余程の繋がりがない限り難しい。それは勿論フリーダの両親もだ。
数回舞踏会などであったシェリーとの婚約を認めることは無かった。
だから、秘密裏に付き合いを続けて自分の使える範囲の金銭でシェリーに支援した。
そこには、そのシェリーの両親も含まれる。
すでに没落してから数年が経過していて、今では伯爵となったフリーダは以前にもまして支援に力を入れた。それは現在にも続いている。
「…………こんにちは」
そっと訪れたフリーダを迎えたのはシェリーの母だった。
平民にしては上等な一軒家で、フリーダの名前を出し賃貸として利用している家族たち。
以前は伯爵家の財政から家賃も払っていたフリーダだが、現在伯爵家の財政を握るマリーはそれを許さない。
フリーダが個人的に使用出来る金から支払われている。
毎月の支給と貯めていた金額も相当ある為、現在も続けられる支援なのだが、フリーダはあまり深く考えてはいないようだ。
いつかはそこを尽きるというのに現実から目を逸らしている。
「まぁまぁフリーダ様、いらっしゃい。シェリーも今帰ってきたわ」
以前よりも痩せて平民の服に身を包んだシェリーの母のリリアはにこやかに笑った。
この両親は珍しくも善良な夫婦で貴族の汚い場所を見ては心を痛めるあの世界には向かない気質の人達だった。
だからか、平民落ちして生活は苦しいのに今も十分楽しいわとのほほんと笑うのだ。
2人揃って仕事に向かい、日々の生活費を稼ぐ。
手入れされた肌や手は汚れ働く人の体に変わったが、昔よりも生きている実感があると満足そうに笑っていた。
そんな2人に毎月それなりの金銭を援助し続けていた。
食費や他にも入り用だろう。
服が必要だろう。
交通費がないな。
医者を呼ぶ金も。
そう様々な理由をつけて毎月支援した。
夫婦は十分すぎるから、もう大丈夫というが、愛おしいシェリーの生活の為にもと強引に渡されていた。
シェリーも行くことの無い舞踏会用のドレスを持ってこられ、最初は喜んだが今は使いどころがなくて困りだしている。
「フリーダ」
「シェリー!!」
「来てくれてありがとう!! 嬉しい……」
シェリーの部屋に入ったフリーダは、直ぐにシェリーの小柄な体を抱きしめた。
2人で身を寄せあい、口付けを交わして笑う。
幸せはやはりシェリーの側だ……と実感するフリーダは、そのままベッドに倒れ込もうとするがシェリーに止められた。
「だ……だめよ、お母様がいるわ」
「…………そうだね」
すでに体の関係があるフリーダとシェリー。
ゆっくり椅子に座った2人は手を繋いで体を寄せる。
「…………どうですか? 新しい奥様は」
「マリー、か。うん、適切な距離で対応しているよ。大丈夫、夫婦とはいっても愛は無いし勿論部屋も別々だ。社交の為に最低限の茶会はしてるけど、それくらいだよ。俺が好きなのはシェリーだけだ」
「そう、ですか……やはり、奥様がいるとなると不安になりますし……私達の関係は歓迎されるものじゃないですから。それにお金が大変なのではないですか?」
結婚してから伯爵家の財政は、恐妻マリーが牛耳っている。
今までシェリーの為にと湯水のように使われてきた伯爵家の財政は枯渇状態に近いくらいに減っていた。
婚姻して1ヶ月たったマリーは、その全てを明らかにして怒りが滲む笑顔でフリーダに詰め寄り子供も分かるほど馬鹿丁寧に、伯爵家の現状を伝えた。
「そうですね、このままいけば1年後には使用人の半分はお給金が払われず辞めて頂き、食事は質素に。毎月のワインは勿論却下で購入品は品質低下で量も減ります。勿論、愛人の方の支援など以ての外です。したいのなら没落覚悟でなさってくださいね。その前に離縁の書類にサインを。一緒に心中などしませんから」
帳簿を叩きつけて現状を知らせるマリーにフリーダは頬をひきつらせた。
再三レイモンドから言われていたが、恋に浮かれるフリーダには余り効かなかったのだ。
だが、それで許すマリーではないし、マリーは取り仕切る女主人であって使用人ではない。
うるさいと一喝しようものならマリーの怒りに触れて、没落したくないでしょうと月に支払われるフリーダの私用出来る金額を全カットすらするだろう。
この現状を知らないシェリーは、支援金が減った事で妻となったマリーが使って大変なのでは……と心配したのだ。
むしろ使っているのはシェリーの家への支援なのだが。
可愛らしいシェリー。
その頭の中は平民になり生活費を考えるただの令嬢ではなくなったが、伯爵家を牛耳るマリーの莫大でいてパズルのように組み立てられた全使用人含めての生活を考えるものとはやはり違う。
月日は早く3ヶ月がたった頃に、やっとシェリーとマリーの違いに気付くフリーダの浅はかさに、なんともモヤモヤとした感情が胸に広がる事になる。
なんてことないのだ。
フリーダしか見てないシェリーと、伯爵家さらには使用人すべての生活を肩に乗せているマリーとの責任は当然同じじゃないし、だからこそキツくもなる。
優しいだけじゃやっていけないのだ。
不満は拭えないフリーダ。だが、言っている言葉が正論だからフリーダは文句も言えないし納得させられる。
あきらかに、伯爵家の嫁としての器はマリーに軍配が上がるのだ。
第2夫人にシェリーがなったとして、その一端を担う事をシェリーに出来るのか甚だ疑問に思うフリーダだった。
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