[完結]愛せないから白い結婚をしようと言われた伯爵夫人は白いモフモフの優しい愛に包まれる

くみたろう

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 マリーが伯爵夫人となって3ヶ月が経過した。
 フリーダとレイモンドに恐妻と思われたマリーのその力は遺憾無く発揮されている。
 金の流れに不審な点は無かったが、どうやらメイド長の権力が強くなりすぎて周りに合わない仕事配分をしたりと好き嫌いで決めていた御局様なメイド長。
 その人をサクッと切り捨てたマリーに、また恐怖に震えたフリーダ。
 いつか自分にサクッとヤラれるのでは……と嫌な恐怖感を感じた夜、フリーダは怪しく笑うマリーがナイフを持つ夢を見たようだ。
 マリーの恐怖政治だと思われたが、幅を利かせていたメイド長が居なくなり働きやすくなったとメイド達は喜びに震えていたらしい。
 現在はメイドに笑みが零れて以前よりも屋敷の中が明るくなった感じがするとフリーダもレイモンドも驚いていた。

「……あー、マリー」

「はい、なんでしょうか」

 椅子に座り先月の帳簿をちょうど書き終わったマリーは顔を上げる。
 この3ヶ月、2人は最低限の交流として1週間に1度お茶会をしている。
 お互いの事をある程度知っていないと社交界で揚げ足を取られるからだ。
 だがら、今言いずらそうに顔を歪ませているフリーダの言いたいことが何となくわかった。
 ペラリ……と帳簿を1枚捲って金額の確認をする。

「……シェリーさんへのプレゼントですか? そうですねぇ、先月はお花4回にドレス1着と指輪ですね。金額は問題ありませんが……今月は抑えてください。3ヶ月後の舞踏会用に旦那様の正装を新調しますのでシェリーさんへのプレゼントを控えないと……随分と恥ずかしい仕上がりになりますよ」

「………………なんとかならないかな」

「どちらですか? シェリーさんへのプレゼントですか? そうですねぇ……旦那様の好きなワイン等を我慢すればシェリーさんにドレス1着分程は大丈夫ですよ」

 完全に財政を握ったマリーは使える金額を提示する。
 ただし、ドレスの金額も好きなだけでは無い。しっかりと上限を伝えている。
 以前これを無視した時、支払いの連絡を聞いたマリーは容赦なくドレスをキャンセルした。
 キャンセルなどしたら伯爵家の恥になる! とフリーダはマリーに怒鳴り込んだが笑ってない瞳をフリーダに向けてニッコリした。

「でしたら、旦那様の私物でも売ります?」

 いつもよりも低く這うようなマリーの声にビクリと体を震わせたフリーダは、小さく首を横に振る。

「…………い、いや……すまなかった……」

「金額は決められています。財源は湯水のように湧いては来ないのですよ。どうしてももっと買い与えたいなら、貴方の私物を売るなりあなた名義の事業をして金策するなり帳簿から離れたお金を使ってくださいな」

 そう冷たく言った恐妻の存在に逆らえなくなっているフリーダは、もう勝手に金額を引き上げたりはしなかった。
 だからこそ、使える金額を最初にマリーに相談するようになった。
 たった3ヶ月で伯爵家を牛耳ったマリー。
 だが、以前よりも伯爵家の財源は上がり働き方改革もされている。
 だからこそフリーダも強く逆らえなかった。

「なぁマリー。ワインの値段を下げて俺が好きそうなのはあるかい?」

「んー……そうですね」

 立ち上がりワインのカタログを取り出す。
 好みに合った個人で楽しむワイン……と悩むマリーをフリーダは黙って見つめた。
 あの強烈な結婚後数日間を過ごしたフリーダは、今の穏やかなマリーにやっと慣れた。
 理不尽に怒り自分の意見を言うマリーの姿は恐ろしいが、夫人として立ち回り笑顔を浮かべるマリーにはフリーダも好感を持っている。

「…………そうですね、ここら辺は如何です? 似た風味だと思いますが、なにぶん料金の差がありますので味わいが下がるのを理解してくださいね。他はこれとこれ……と」

 と、指を指すマリーの指先で示されるワインを見る。
 ふむ……と頷くフリーダは、最初のワインを指さした。

「まずはこれを試してみる」

「わかりました。では明日外に出かけますので帰りに買って帰りますね」

「ん、いいのか?」

「はい、構いません。ワインの店の前を通る予定ですので数本購入します。夜をお楽しみに待っていてください」
 
 にこやかに笑うマリーに、フリーダも笑った。
 寝入る前に楽しむワインなので一日に何本も飲むものでは無いが、1日1本はあけるだろう。
 そうなるとひと月30本でマリーが提示したドレス4着は作れる程には高価なワインだ。
 それもフリーダが私的に利用する財源から出されている為、量を減らしてランクを下げたらドレスの1着か2着は作れるだろう。
 シェリーの為にワインを我慢できるならとマリーは考えてお金を浮かせた。

「…………わかった、ありがとう」

 そう言ってから部屋を出て行ったフリーダを見送ってからマリーは椅子の背もたれに寄りかかった。
 3ヶ月休みなく伯爵家の内情を調べて動き続けたマリーは、さすがに疲れていた。
 ある程度は理解もしたし、レイモンドも以前より仕事が楽になったと喜ばれたのだが、仕事の調整もしたから1度休憩をする事に。
 なにより癒しが欲しいのだ。

「……そういえば、確認し忘れましたね。平民の愛人にドレスっているのかしら。いつ着るの……? まあ、旦那様が好きでプレゼントしているのだから私はどっちでもいいのですが……あぁ、甘いのが食べたいわ」
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