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103話 初物の呪い(挿絵あり)
しおりを挟む芽依は分かりやすく顔や態度に出る。
家族には最大級の愛を。
それはもう、まわりよりも分かりやすい独占欲だ。
そんな家族以外にも芽依は大好きな人外者達はいて、その最上位にセルジオとシャルドネがいる。
残念ながら、あの時セルジオの思いに答えることは無かったが芽依の中では特別に変わらない。
軽く肌に触れ、その風味を伝えることも多少の血液をあげることも厭わない。
シャルドネに至っては、家族以外に唯一噛む動作を自らする相手である。
リリベルは緊急時、だが、シャルドネはお酒のお供に噛みたい対象。
既に芽依の中では噛む事も愛情表現のひとつになってきている為、それにうっすら気付いているシャルドネが拒むことは無い。
『この世界に来て初めに世話になったヤツと、それに近いヤツってなったら、メイには特別なんだろ。世話になってるしな』
「…………なるほどねぇ。 それなら私も早く会いたかったよ、あんな風に触れてくれるなんて羨ましいね」
頬杖をついて見ているアキーシュカをシュミットが見る。
「…………お前は駄目だろう」
「なんで」
ジロリと睨まれるアキーシュカは、ムッとしてシュミットを見る。
人のを取るお前を近づける訳ないと言い切ったシュミットにアキーシュカの怒りがゆらりと上がる。
その2人の間に真っ黒い目をしたメディトークがコトリとお皿を置く。
『……もう争いごとはやめろ。うんざりだ』
流石に今回の事には嫌だったメディトークは、嫌そうにお皿を指さした。
それは、あの、サメ、で。
「…………」
「これ、なんだい? この間もあったよね」
「なによそれ」
アキーシュカとメロディアが興味津々に見てくると、芽依から離れたフェンネルが来てお皿を見る。
「うわっ……サメだ」
「サメェ?!」
予想外の言葉に周りで聞いていた人達も目を丸くする。
それは食べ物じゃないと口々に言うが、家族達は全員芽依を見た。
「…………まさか、メイのお願いか?」
恐る恐る聞くアリステアに深く頷く家族たち。
なんとも言えない顔をしていると、現代から来たユキヒラやミチルはあら? と見ている。
「まさかのサメかぁ」
「キャビアとか食べた事ないから気になっちゃいますね」
「キャビア! 高級品だ」
笑っているふたりに化け物を見るような眼差しを向ける人外者達やアリステア。
サメを食べる習慣のない人達から見たら、驚愕どころでは無い。
「………………これ、君たち問題ないの? 本当に?」
フェンネルが恐る恐る聞くと、2人は不思議そうに見てくる。
「……まぁ、高級食材だから日常で食べるのではないけど……」
「食べた事ないし」
「高級食材?! サメが?!」
「食べてみたらいいんじゃないかな?」
そう言ってユキヒラがフェンネルの口にグイッとサメを入れる。
普段のユキヒラからは考えられない行動に思わず飲み込んでしまったフェンネルは、あ……と声が零れた。
すると、ビキリ! と体が硬直してからメディトークを見る。
「…………な、なんか……変だよ……体」
『……あー、だろうな』
微妙な顔をしているメディトーク、さらに少し離れた場所で芽依がフェンネルを見て絶句している。
そして響き渡る叫び声。
「いゃぁぁああああ!! なにそれぇぇ! えっちぃ!!」
『ちげぇだろ!!』
黒光りする足が芽依の頭の上に来るが、ピタリと止まった。
いつものように頭を軽く叩くつもりがメディトークがそれ以上動けなくなる。
あの、殴って吹き飛ばされた芽依が一瞬頭をよぎって動きを止めたのだ。
すぐに分かった芽依は、手を伸ばしてその足を引き寄せる。
「………………メディさん足。足、うんうん」
上にある足を掴んで頭に置くと、満足そうに笑う。
そんな芽依を見て、メディトークがむぎゅりと抱きしめてきた。
巨大蟻のメディトーク相手では芽依の体が完全に周りから隠れてしまい埋まってしまうが、むしろ大好きな蟻に体全体を支配されて芽依は気付いてしまう。
「………………わ、これどこもかしこもメディさんに絡まっていて……幸せすぎるんだけど……」
『……いや、まぁ……いいんだけどよ……普通人型のがいいんじゃねぇの?』
「えっ?! こんなに素敵な蟻なのに?! こんなイケてる蟻いないよ?!」
『…………あー、お前がいいなら、いいわ』
そう言ったが、やっぱり人型のがいいんじゃねぇの? と人型に変わると、バッグハグされてる芽依は不満そうにふりかえった。
「…………あ、わりぃ」
気に入らなかったらしく、直ぐに蟻になると、また満足そうに埋まって全員が微妙は顔で芽依を見ていた。
フェンネルは、ハストゥーレとシャルドネに体内の状態を見てもらっていた。
ギシギシと体が軋み上手く動かないフェンネルは、柔らかなソファを庭に出して横たわっている。
体には何かひび割れているような跡があって、動きが緩慢。少しだるい。
どうやらサメを食べたことによる呪いのようで、シャルドネが振り向きメディトークを見た。
その顔は苦笑である。
「…………そうですね、食材として食べれるけれどある意味ゲテモノとして考えられているサメを食べる最初の1人に……同じく気味の悪い見た目をといった呪いらしく」
「でも、1日ほどで呪いは自然と解けるようです」
安心したように笑って言ったハストゥーレだが、ユキヒラは少し申し訳なさそうだ。
「……あー、えと……ごめんね」
ソファの前でしゃがみ込み謝るユキヒラにため息混じりに頷いた。
「……まあ、どっちにしてもメイちゃんが食べる前に誰かが食べてたし……まあ、仕方ないよ」
「ごめんね、こんなにえっちな体にし……いったぁぁぁ!!」
『だから! ちげぇって!!』
お叱りを受けて流れるように土下座する芽依を見て、全員が苦笑していた。
「…………とりあえず、できる範囲でフェンネルさんのお世話するね。ごめんね」
「うん、ありがとう」
「………………きょう、よる、へやに、いくね?」
「あ……あれ、なんだか身の危険を感じるよ……?」
えへへ……と笑ってソファに寝るフェンネルを見て頭を撫でる芽依は、女神のように綺麗に笑っている。
だが、その胸の内は女神なんか住んでいないのだ。
「…………うふふふふ」
「ちょっ……まって! 僕動けない……もぅ、仕方ないなぁ……」
夜は深く闇がたち込むが、2人は変わらず穏やかに笑みが浮かぶ。
(挿絵はイメージです)
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