[完結]かぼちゃ頭と夜のハロウィン

くみたろう

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 カナトは仮装した状態で家を出た。
 街中はハロウィン一色で、この日は朝から仮装して練り歩くのがこの地域の恒例なのだ。 普段着の方が違和感が強い。
 チープな格好の人もいれば、本格的なコスプレ会場のような集まりもあって楽しそうに写真撮影をしている。
 街中はカボチャのランタンに明かりが灯り、広がり出した闇をほのかに照らしていた。

 街中がハロウィン一色で、つい物珍しく見てしまう。
 年を追うごとにハロウィンパーティは規模を大きくしていき、オブジェクトも派手になる。
 カボチャのランタン、大きなチョコや飴のオブジェ、薄紫やピンクといった色味が街全体を支配していて、街全体でのイベントすげぇ……と感想が漏れた。
 ここ数年ハロウィンパーティに参加していなかったカナトは、ただ関心するように街中を見る。
 去年に少しでも参加していたら、これが異常なのだと気づいたのだろうが、それを判断する情報をカナトには持ち合わせてなかった。

 周囲の非現実を見ながら歩く事20分程だろうか、規制線がされているスクランブル交差点に到着した。
 ここら辺一体がハロウィンパーティ会場の中心部となる。もう楽しそうに集まり笑い声を出してい集団が所狭しとして、みんな早いんだな……と呑気に思っていた。
 カナトも友人たちを探そうと中に入っていくと、今まで楽しそうに笑って話していた人たちが急にピタリと止まって無表情でカナトを見た。
 その異様な光景にビクリと肩を揺らして、え……と声が零れた。
 一人や二人ではないのだ。この場にいる全員が、透明な温度のないガラス玉みたいな目で見てくる。
 下から上に、全身を舐めるように見てくる参加者にカナトは不快感が体を駆け巡った。

「…………な、なんだ」

 沢山の人の目が気持ち歩くて視線を外すと、不思議な光景が目に入る。
 参加者全員が仮装をしているのだが、耳や尻尾がまるで本物のようにゆらりと動いているのだ。
 そして、目を引くのは全員が同じピンブローチをしている。
 今はこんなに手の込んだ仮装をするのかと違う場所で感心していると、ふと目に止まったカボチャ頭。
 
 本物だと見間違えそうなほど精密に作られたカボチャの被り物を被ったスリーピース姿の男性。
 ハロウィンらしく盛装で身を飾ったそのカボチャ男は、被り物で目線など分からないはずなのに、何故か見られていると分かる。
 パリッとノリの効いたシャツに、限りなく黒に近い灰色のスリーピース。フリルが施された大判のクラヴァットに、磨かれた茶色の革靴。

 上質な服装のそのかぼちゃは、小さなステッキをくるりと回した。
 その姿があまりにも様になっていて、同性相手にカッコイイなぁ……と内心思う。
 カボチャの被り物をしてガラスのような瞳が見えないのが余計に不快感を消しているだろう。
 カボチャの不思議な魅力に吸い込まれるように眺めていたカナトは、あの不快な視線がなくなっているのに気づいた。

 あれから不快な視線は無いものの、他にも来た参加者に同じ目線を向けられる人は何人もいた。
 その人たちも困惑しながら約束をしている人を探しはめたり、場所を移動したりと動き出している。

「おかしいな、なんでいないんだ」

 あれだけ何度も一緒に行くと言っていた友人たちが一人も見つからない。
 人が溢れる場所で見つけづらいのは想定済みではあった。 だから、分かりやすい場所で約束したのだが、見つからないのだ。

 もう18時になる。約束の時間になるのだがなぁ……と目を細めて腕を組むと、肩を叩かれた。
 来たか、と体の力を抜いて振り向くと、吸血鬼の仮装をした男性が立っていた。
 思わず目を丸くして「誰だよ」と言いそうになる。

「……えーっと、何か?」

「一人なら一緒に行動する?」

「は?……いや……待ち合わせがあるから……」

「待ち合わせ、ねぇ……会えないと思うけどなぁ」

 初対面相手に随分と図々しい男が、人好きのする笑みを浮かべて話しかけてきた。
 だが、その声は妙にねっとりと絡みつくような声色で、なんだか眼差しが怪しく光っている。
 そんな男の背後からゾンビの格好をした女性が来て、男の首に腕を回した。
 怒りが滲んだ笑みで、高身長の女性は青筋を立てながら「先に手を出すの禁止ぃ」と、低い声で言った。

 驚いていると、女性はニッコリ笑ってカナトを見る。 フリフリと手を振ってこちらには可愛らしい笑みを浮かべ、鈴がなる様な声で話しだした。

「急にごめん! ビックリしたよね」

「あ……いや……」

「困惑するのわかる。ふふ、もうすぐ私たちのハロウィンパーティがはじまるわ。貴方も楽しんでくれると嬉しんだけど。……どうか、逃げ出さないで、0時を超えてね」


 じゃあね! と手を振って離れていった女性と引きずられる男性を見送ったカナトは、女性の言っていた言葉に首を傾げる。
 0時を超える。 時間の事だよな? と理解し難い疑問に意味が分からないと思いながら、友人捜索を再開した。




 ボーン ボーン ボーン ボーン



 友人を探していたカナトは、いきなり鳴り響いた音に驚て顔を上げた。
 響く大時計の鐘の音。 広間には時計塔なんか無いよな? と思っていたカナトの目の前に、ズズズズズ…………と地響きを立てて薄紫色の巨大な時計が現れた。
 
 いつもよりも暗くなるのが早いなと思っていた空は、薄紫とピンクを溶かしたような不思議な色合いに変わっている。
 ぼんやり明るい空に大きな三日月と星が輝き、建物も薄紫にじんわりと色を変えていく。
 街で行うイベントの割には大掛かりすぎる、なんて言っているレベルでは無い。
 空などのどうにもならない自然現象にすら手が加わっている。
 この現象に驚く人は少なく、殆どの人はワクワクと笑みを滲ませ喉を鳴らしていた。

 この異常な状態に、カナトは数歩後ろにさがった。
 





 
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