[完結]かぼちゃ頭と夜のハロウィン

くみたろう

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 明らかにおかしい。
 同じように困惑している人たちも、一人きりでいる人が多く、誰かに聞くことも出来ずに視線をさ迷わせている。


「やぁやぁ、みんな。今宵は年に一度の特別は日。そう、ハロウィン!! こちらの世界に好きにきて、好きな食事にありつける! さあ!パーティの始まりだ!!《ムラサキ》を捕まえられるのはだぁれかな?!」

 その声は何処から聞こえるのか分からない。広場全体に響く声に、参加者の叫びに似た声に地響きが起きた。
 困惑するのはあのガラス玉のような目で見られていた人たちばかり。

 カナトは喜びに叫んでいる人達を震えながら見ていると、その人たちはピタリと一斉に動きを止めた。
 かと思ったら、ゆっくりと首だけで振り向き沢山のガラス玉の視線に晒される。


 ……………………ゾクリ


 光のない瞳に見つめられて、悪寒が走った。
 何かがおかしい。 いや、最初からおかしいことだらけだった。

  
 生地の変わった服、街並みのオブジェクト、ガラス玉の瞳、女性の言った言葉、現れた巨大な時計、そして、街中全てを薄紫とピンクに染める怪奇現象。


 
「…………なんだ、これは」

 
 ガラス玉の瞳が、嬉しそうに細まる。 それは不気味に見えて、ジリジリ……と後ろに下がった。
 だが、元から端にいたカナトは、すぐに壁にぶつかる。

 もう下がれない。 ちらりと後ろを視線だけで確認したカナトは、すぐに前を見据えた。
 舌舐りしたり、ゴクリと喉を鳴らしたり。
 明らかにおかしい精神状態だとわかるハロウィンパーティの参加者たちに、こみ上がる恐怖がカナトを襲う。


 ここにいるのはマズイ。


 無意識に警報がなる。
 わからないが、これは、まずい。

 防衛本能ともいえるのだろう、瞬時に浮かんだ危機に、カナトは身を翻して走り出した。
 その方向は出口で、その一瞬に女性の悲鳴が響く。


「きゃぁぁぁぁぁぁあ!! いゃぁぁぁあ! 助けてぇ……助けてぇぇぇぇぇ!!」


 一体何が起きているのか、女性の身に何が起きているのか。
 確認する余裕もなかった。
 だって、カナトのすぐ後ろにも手を伸ばして追いかけるガラス玉の瞳を持つ参加者がいるのだから。
  

 履きなれない少し厚めのブーツは走るのに向いていない。
 まるで女性が好むような編み上げのブーツで、ガツガツと音を鳴らしながら必死に逃げる。
 首に着いたチョーカーには鈴があって、走る度にリンリンと音を鳴らした。
 それがまるで呼び鈴みたいに周りに響き、余計に追いかける人数を増やしているのではないかと不安が広がる。
 鈴をぎゅっと握り、音を出さないようにしながら走っていると、カナトを追いかける足音は次第に聞こえなくなっていった。

「…………っ、はぁ、はぁ」

 ゆっくりと足を止めて後ろを振り向く。
 誰も居ないことを確認したカナトは、しゃがみこみ荒い呼吸を繰り返す。

 薄ピンクに彩られた地面を見つめたまま、混乱する頭で思考を巡らせた。
 とはいえ、なんで、どうしてこんなことに……? と疑問しかわかないのだが。

 そんなカナトが5分ほどそうしていただろうか、呼吸が少し整ってきたころ、おなじく首に付いた鈴を掴んだ女性が走ってきた。
 青ざめて必死にヒールで逃げている女性は、薄紫色のドレスを着ていた。
 カナトに気付いた女性は目を見開き、小さく舌打ちする。
 
「立って! ここにいたら見つかる!!」

 腕を掴まれて引っ張られたカナトは、意味もわからず手を引く女性に声をかけた。

「あの! これなんなんですか!! なんで襲ってきてるんですか!!」 

「あなた、追加者なんだ!まずはセーフティまで走って! 話はそれから!」

「………………なん、なんだっ」

 必死に走る女性について行くカナトは、一際濃い色のビルを見つけた。
 それを見た女性が、目を輝かせて、あった!! と叫ぶ。
 そんなビルの向こうから、何かを探しながら歩く女性が見えた。
 それは、先程声を掛けてきたゾンビの仮装をした女性。

 手を引く女性は、急ブレーキをかけて建物の影に隠れる。
 震える手で鈴を握りしめ、叫びたい気持ちを抑えるように唇を噛み締めていた。

 チラッと確認すると、女性はまだフラフラとしている。
 あちこち眺めて小さくため息を吐いた女性は、すぐ右に曲がって離れていった。

「っ…………はぁ、はぁ」

 呼吸すら止めるような緊迫感。 体に力が入っていたのが、すっ……と抜けた感じがしたが、手を引く女性のきつい眼差しが突き刺さる。

「まだよ、逃げ切るまで緊張を解かないで」

 そういった女性に、また手を引かれて走り出し、濃い紫のビルへと身を滑らせた。

 扉を開いて中に入った女性は振り向き、入り口の上にある紫に光る電球を見た。息を吐き出し、大丈夫。と呟いたあと、やっとカナトの手を離し胸に手を当てて深く息を吐いたのだった。

 
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