[完結]かぼちゃ頭と夜のハロウィン

くみたろう

文字の大きさ
4 / 24

4

しおりを挟む

「一体、どうなってるんだ」

 座り込んだカナトを見た女性は、階段を見る。
 そしてまた、カナトの手を握った。

「まずは上に行きましょ。座る場所くらいはあるでしょ」

「…………あぁ」

 カツカツと音を鳴らしてビルの階段を上がる。大きな窓からは外の様子が見えて、必死に逃げる人や追いかける人がいるのだが、不思議な事に毛むくじゃらの手足で四足歩行をする人や、大きな黒い翼をはためかせて空を飛ぶ人もいる。

 こんなの、仮装でできる代物じゃない。

 足が止まって外を見るカナトに気付いた女性は、地獄のようよね。と話した。

「………………なんで、あんな」

「人間じゃないからよ」

「…………は?」

「吸血鬼と狼男かしらね」

 まるで当然のように言った女性に目を向ける。
 無表情で、嘘をついているようには見えなくて、言われた意味を噛み砕いて理解するには情報が少なすぎると、カナトはかえって混乱した。

「…………だから、説明するってば。ほら、行こう」

 女性に促されて歩きだしたカナトは、チラリともう一度だけ外を見る。
 同じ様に首の鈴を掴んで走る紫の服を着た男性が、必死の形相で走っていった。



  
 階段を上がり、フロアに出ると電気が付いていて明るい雰囲気が包んでいる。
 女性はぐるりと周りを見て、迷いなくある一室に向かう。

「見て、必ず紫の電球があるの。これがある部屋は休憩スペースとして作られているから入って構わないわ」

 そう言って扉を押し開いた先には、3人のハロウィン参加者が座っていた。

「…………危なかったわ、もう3人いたのね」  

 ホッ……と息を吐き出した女性に、中にいる男性はヒラヒラと手を振った。

「マリカか」

「あら、タクロウじゃない」

 ほら、入って。そう促されて入室したカナトは、優雅に足を組むタクロウと呼ばれた男性と、震える女性2人を見る。
 手を引いて走ってくれた女性は、どうやらマリカと言うらしい。

「マリカ、向こうに茶があるぞ」

「あぁ、あなたも飲む?」

「……あ、あぁ」

「じゃあ、座ってて」

 髪をふわりとなびかせて離れていったマリカは、冷蔵庫を開けて中を見ている。
 そんな後ろ姿を見ていると、タクロウが椅子を叩いた。

「ほら、座れって」

「………………あ、はい」

 戸惑いながら座ると、すぐにマリカが帰ってきてお茶を差し出してきた。

「緑茶でいい?」

「はい、ありがとうございます」

「いいえ」

 隣に座ったマリカは、ペットボトルを開けて一気に半分飲み干した。
 そして、はぁぁぁぁ……と息を吐き出す。

「イラつくわね、わかってても毎年毎年」

「まぁなぁ。お前何回目だよ」

「8回目よ!!」

「俺ぁ12回目」

「………………よく生きてるわよね、私たち」

「まったくだなぁ」

 勝手知ったるといったふうの二人を見て、首を傾げたカナトは二人に聞いた。

「……あの、これなんなんですか?」

「……あぁ、追加者かぁ」

「そう。呆然としてたから引っ張った」

「優しいなぁ、お前」

「目の前で連れて行かれたら胸糞悪いじゃない」

「口悪ぃ」

 嫌いじゃねぇけどなぁ、とカラカラ笑うタクロウに、フンと鼻を鳴らすマリカ。
 そして、我に返ったようにカナトを見る。

「…………あぁ、ごめん。説明するわ。まず、私はマリカね。あなたは?」

「あぁ、俺はカナト……ん?」

「大丈夫よ、名前の違和感は仕方ないの。上手く言えないけど、漢字じゃなくてカタカナ表記されてる、みたいな。気にしなくていいわ」

「…………あ、あぁ」

 よく分からない、と思いながらとりあえず頷いた。

「あなた達は?追加者?」

「…………私は、2回目」
  
「そっちの嬢ちゃんは追加者だ」

「なるほど」

 2回目とか、絶望感凄いわよね……としみじみ言ってから、カナトを見た。

「じゃあ、説明するわ。これは現実で、嘘じゃない。信じられなくても飲み込むのよ」

「………………」   


 真剣な顔で話すマリカは、信じられない話を始めた。

「まず、ここは私たちの世界じゃないわ。ここは二つの世界の中間の広間。私達がいる世界と隣り合わせに、よく物語とかで聞く吸血鬼とか、グール、ゾンビ……そんなファンタジーな生き物が住む世界が横並びにあるのよ」

「………………え?」

 なんて? と言い返したいが、この場にいる追加者と呼ばれるカナトともう一人の女性以外驚く人はいなかった。

「でね。その二つの世界が年に一回交じり合うの。ほんの少し、ちょっとだけ。そこは異空間となって、このハロウィン会場を作り出す。そう、それが、今日10月31日なの。0時が過ぎた時点で、世界は交わり私たちはこちらに引き込まれるのよ」

「…………は」

 あまりにも突拍子のない話。
 意味がわからないとゆっくり首を傾げたカナトを見てから、マリカは外にある巨大な時計を見た。18時25分を示していて、小さく息を吐いた。

「時間がないから、しっかり聞いて。ここはね、彼らの狩場なの。餌は私たち、呼び出されるのはランダムではあるんだけど、1度呼ばれた人は次回呼び出される頻度が高いわ。あなた、朝から変な感じしなかった?」

「……見られてる、感じはした、かな」

「! そう、もう目を付けている怪異がいるのね」

「え?」

「怪異は参加者、私たちは食彩と呼ばれるわ。食彩である私たちは、ある共通点がある。それは参加者が用意しているこの紫の配色がある衣服を身につけ、首に鈴を付けること。この衣装、違和感なかった? なのに疑問もなく着たでしょ? すでに0時がすぎて世界は交わり、私たちに違和感を気付かせないように意識を溶かしてるの。18時から始まるパーティまで、穏やかに過ごさせるために。だって、気付いて自殺なんかしたら食彩が減るでしょ? それを防ぐために」

「……意味が、よく……」

「わかるわ。はぁ? ってなるわよね。でも聞いて。ちゃんと11月1日に帰れるように」

 その言葉が、なによりも不穏だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!

くすのき
BL
最初に謝っておきます! 漬物業界の方、マジすまぬ。 &本編完結、番外編も! この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!

うちの魔王様が過保護すぎる

秋山龍央
BL
主人公・折本修司(オリモトシュウジ)は転生恩恵女神様ガチャにはずれて異世界に転生して早々、つんでいた。 「異世界で言葉が分かるようにしてくれ」と頼んだところ、相手の言葉は分かるが自分は異世界の言葉は喋れない状態となり、 「平和な国に転生したい」と頼んだところ、平和で治安のいい国に転生をすることはできたものの、そこは人間のいない魔族だけの国だったのである。 困っていた主人公の元に、異世界の"魔王"である紅の髪と角を持つ男があらわれて―― 「まさか――そっくりだとは思ってたけれど、お前、本当にシュウなのか?」 異世界転生魔王様×異世界転生主人公 幼馴染年下攻めだけど年上攻めです

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

処理中です...