[完結]かぼちゃ頭と夜のハロウィン

くみたろう

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 彼女の言う話は常識から離れた、それこそファンタジーの世界だった。

 二つの隣合う世界が近づき、混じり合い小さな空間を作る。 そこに選ばれた参加者と食彩が0時に集まる。
 このハロウィンパーティには、招待状が必要で、食彩はこの衣装が招待状になるのだとか。
 自然とハロウィンパーティ会場に集まり、その際、参加者から食彩は品定めされる。
 あの温度のないガラス玉のような瞳に晒されたのは、まさに品定めをされていたのだ。

 そんな食彩は、ごく稀に朝から視線を感じる時がある。
 それは、ある参加者から見つめられている証拠。
 お気に入りを見つけて目をつけたことを示す。
 カナトは、目をつけられたのだ。

「私達ができるのは、ただひたすら逃げるだけ。捕まらないように、0時を超えるまで逃げる。これだけよ」

「…………捕まったら、どうなるんだ?」

「今まで見ていた限りだと、喰われる9割、連れ去られる1割だなぁ」

「………………」

「もういやぁぁぁぁ! やっとの思いで逃げ切ったのよ!! 去年の事なの! それなのに! またこんな場所に呼ばれるなんてっ! いやだ! 帰りたい!!」  

「泣いても意味ないわよ。まずは死なないように、捕まらないようにするしかないわ」

 そう言ったマリカは、カナトを見た。

「捕まったら、広場の中心にある巨大な時計の場所に連れてかれて、1時間恐怖を味わってから喰われるらしいわ。流石に私は近付けないから詳しくは知らないけど、助けに行った人がいたのよね」

「助かったんですか?」

「………………捕まっていた人はね。助けに入った人は逆に捕まって食われたわ」

「………………」

 静まり返る室内。
 そんな中、声を出したのはタクロウだった。

「なぁ、カナト。お前は目をつけられているから、特に気をつけないとだめだぞぉ? 連れ去られる1割は、目を付けられてる食彩だからなぁ」

「…………連れ去られるって、何処に」

「連れ去られた人が帰ってくることはないから憶測だけど、あっちの世界じゃない?」

 サラッと答えたマリカの声に、カナトはブルっ……と震えた。

「18時から0時まで私達は逃げ続けるんだけど、ずっと走り続けられないわ。だから、そんな時のためにセーフティがあるの。一際むらさき色にギラギラしている建物で、複数あるわ。建物の中に入れる人数は5人。それ以上になると入り口の灯りが消えて、セーフティの役割は消えるの。先に入っている人は別よ。時間まで安全に過ごせる」

「……じゃあ、もう大丈夫……?」

 そう安心して言ったカナトだっだか、首を横に振られた。

「セーフティが使えるのは1時間なの。1時間経ったら建物は薄ピンクに戻るから、セーフティが別に移った目安にもなるのよ。大時計が教えてくれるわ。だから、時間が切れる前に出て、次のセーフティを探すの。街中は広いわ。参加者に見付かってトリックオアトリートって言われたら、イタズラされるかお菓子をあげる。つまり、喰われるか。その前に必死にセーフティを探すの。ずっと傍にはいられないわ。逃げる時に離れる事も、セーフティの人数制限で離れる事だってある。忘れないで、0時まで逃げたら勝ちよ」

 腕を掴まれて言われたカナトはコクリと喉を鳴らすと、マリカ越しに目を見開いている女性を見た。
 今回の追加者と言われた女性だ。
 それは、カナトも含まれる。

「……追加者って?」

「あぁ、それはこのパーティで呼ばれる新規の食彩の事よ。この夜のハロウィンパーティを知らない新規の参加者。大体は経験ありの食彩が6割くらい、残りが追加者。ある程度人数が決まっているのでしょうね。私が参加した時は32人とか、必ず30~40人くらいいたわ」

「参加者が多いから、食彩もある程度数がいるんだろうねぇ」

「といっても、年間30人以下、ハロウィンパーティで居なくなってもきっと小さなニュースになるだけで終わりよ。実際このパーティ、だれも知らないでしょ?」

「知らないな…………夜のハロウィンパーティって?」

「これよ。ここは狭間の空間みたいなもので、夜のこの時間で食彩の未来が決まるから。皮肉よね、誰が言い始めたのか夜のハロウィンパーティって通称で呼んでるのよ」

 はぁ……とため息をついて、また喉を鳴らしてお茶を飲むマリカは外を見た。
 19時まであと10分。かなり話し込んだわね……と呟いたマリカは、立ち上がった。

「もう時期セーフティの場所が変わるわ。あと5分休んだら逃げるわよ」

 マリカが全員を見て言うと、頷くだけの返事が全員から返ってきた。



 

 この時、非現実すぎる今を受け止められなかった。
 短時間にぐるりと世界が回るように、まるで全てが変わったのだ。
 カナトは、言われるがままに足を動かした。
 この安息の地を抜け出して、次のセーフティまで足を止めることは無い。
 
 じゃないと。じゃないと。

 響く泣き声を後ろに聞きながら、カナトは唇を噛み締めて走った。
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