[完結]かぼちゃ頭と夜のハロウィン

くみたろう

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 急に力一杯開いた扉にカナトは肩が飛びあがった。
 目の前には逃げていた食彩だろう、豪華な仮装をした三人の男女が荒い呼吸を繰り返していた。
 三人は汗だくで全速疾走をしていたようで、恐怖に引き攣り青ざめる三人の眼差しが、二人を捉える。
 ここに二人いたから、あと三人入れると安心したのは、21時を15分だけ過ぎたからだろう。まだ大丈夫、そんな確証のない安心を感じていた。

 足早に玄関を同時に抜けてホッと息を吐き出した時だった。

 
 玄関の頭上にある、電球が、消えた。

  
 少し無骨なこの建物も、明るく当たりを照らしていたのに、電気すら消えたのだ。
  
 初めて目の前で消えた電球に、全員の表情が消えた。

「消え、た……」

 誰がどの順番で入ったかわからない。
 それくらい、三人は必死だった。
 早くセーフティに入りたくて、どうしようもなくて。

 だが、この消えた電球は現実なのだ。
 一体何人、誰が弾かれたのだろうか。

 ビクッと体を揺らす三人の顔色が青くなる。
 表情が一気に恐怖に染まりカタカタと震えだしていた。
 顔を見比べて、それからカナト達を見た。

「助けてください。このままだったら死んじゃう」

 恐怖に震えた声が鼓膜に響く。
 それは、かわりにセーフティから出てくれと言っているようなものだ。
 助けるなんて出来るはずがない。いつ死ぬか分からない恐怖はカナト達だって同じなのだ。
 
 小さく首を横に振ると、泣きそうになっている三人の後ろに、ぬぼぅ……と現れる影。
 巨大な花嫁の姿の女性ゾンビがジーッと眺めてから、にたぁと笑ったのがベール越しにわかった。

 美しかっただろう、豪華な花の飾りがちらばった純白のドレスは煤けて汚れ、髪飾りで飾られていた髪は、無惨にもボロボロになっていた。
 左右の花飾りのボリュームが違うから、どこかで落としたのかもしれない。
 破れたベールに隠れたこのゾンビの顔は、一体どんな顔をしているのだろうか。

 三人はガタガタと震えながら、ゆっくりと後ろを見た。
 青ざめた顔は真っ白になり、見下ろす花嫁を絶望の表情で見上げた。
 膝がガクガクと大袈裟に震えながらも、ジリジリと後ろに下がろうとするが、足がもつれて随分とたどたどしい。

 カナト達には一切視線は向けられなかった。
 ここにはいない者と思われているのか、1ミリも興味は無いようだ。
 
 花嫁は、ゆらりと体を左右に揺らしながら、血に濡れてボロボロになったウエディングドレスを翻して室内に入ってきた。
 カナトの隣をゆっくりと通っていく。
 その時、一瞬だけベール越しに目が合った。
 美しい、空色の瞳をした女性だった。


 ゆらりゆらりとウェディングドレスのスカートを引き摺りながら歩いてくる女性。
 その眼差しは、左にいる男性を見つめていた。
 にたぁと笑っていて、輝く空色の瞳だけがギラギラとしていた。

「う……うわぁぁぁぁ!!! 来るなあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 恐怖で錯乱したかのように、頭を掻きむしりながら家の奥に走って行った。
 それを追いかけるように花嫁がスルスルと追いかけて行った。


「…………あ、あぁ」

 残った二人は絶望に打ちひしがれていた。 座り込み、顔を抑えて泣く二人はカツカツと聞こえてきた音に顔を上げた。

「カズヤ……」

「カズヤァァァァァァ……」

 そこには、ドレスを少し持ち上げて真っ赤なヒールで歩く花嫁が引きずるようにカズヤと呼ばれた男性を連れて戻ったところだった。
 殴られたのだろう。顔が腫れ上がり、出血している。
 意識が無いようで、白目を向いているカズヤの片足を掴み穏やかに歩く彼女は、まるでバージンロードを歩くかのように幸せそうに笑っていた。まるで先程とは別人。

 ピタリと足を止めて、カナトを見た。
 カクロウが思わずと言ったように少し前に出ると、にこりと笑った花嫁は軽く頭をさげ、お辞儀をしてから建物を出ていった。

 ピン……と音がなり、入口の上にある電球が紫に染まる。

 これで正真正銘の定員だ。
 なるほど、こういった時だけセーフティに入れるのか……と、恐怖でブルッと震えると、タクロウに肩を叩かれた。

「休むか」

「……そうだな」

 疲れたように息を吐き出しながら答えたカナトはチラリと床に座り込んでいる二人を見た。
 声をかけた方がいいのだろうか、と悩んでいるとタクロウがそっと背中を押して歩くように促す。

「……今はそっとしておいた方が良いかもなぁ」

「……そうだな」

 泣き崩れる二人をみて、そっと視線を離した。

「……………………」


 カナトの背中を押しながら歩くタクロウの何を考えているか分からない眼差しが、泣き崩れる二人を見た後、顔を背けた。
 
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