[完結]かぼちゃ頭と夜のハロウィン

くみたろう

文字の大きさ
11 / 24

11

しおりを挟む


 鏡に中に映る自分の顔をみて、軽く頬を撫でた。
 その後、肩を落として深く長い息を吐き出した。
 目の前には使い終わったコップ。さっきまで口をゆすぐのに使っていたものだ。
 まだ半分ほど入っているそれを勢いよく流してため息をついた。

 嘔吐したことによる口腔内の不快感は少し緩和されたが、やはり思い出すとムカムカしてくる。
 ため息しか出ないこの状態に、頭を抱えると、触れる髪に違和感があった。

「……?」

 顔を上げて鏡越しに見ると、生えぎわに境界が無くなっていた。
 紫のウィッグが違和感なく地毛のように頭皮から生えている。
 それどころか、耳や尻尾を触ると感覚があるのだ。
 耳は擽ったいし、尻尾を触ると何だかゾクゾクする。チェシャ猫と同じようなコスプレではあるが、猫になりたい訳ではない。

 さぁ……と血の気が引いた。
 人体にも何らかに影響があるだなんて、タクロウもマリカも言っていなかった。

 これは、聞いていいものなのか。0時がすぎたら元に戻るのだろうか。
 別の不安が胸に広がっていく。

「……大丈夫か?」

 開いた扉に数回ノックするのはタクロウだった。
 壁に寄りかかって首を傾げながら聞いてくるタクロウに、小さく頷いて口元を拭う。

「……なぁ」

「なんだ?」

「この仮装の服とか、脱げるよな?」

「ん?」

「ウィッグが、地毛みたいになってるし、耳と尻尾に感覚があるんだ。これ、大丈夫なのか?」

「……感覚がある?」

 歩いてカナトの前に行ったタクロウの指先が伸びてくる。
 タクロウが優しくクニクニと耳を触ると、先程は擽ったかっただけなのに、今は痺れるような感覚が走った。

「んっ……」

 思わずもれた声に口を塞ぐと、タクロウの眼差しが仄暗く光る。
 腕で顔を隠すが、じわじわと赤く染まる顔はどう頑張っても隠せない。
 へにゃりと垂れ下がった耳には、まだタクロウの指先があって、視線を逸らしたカナトを見ながらまた指先を動かした。
 ふわふわと少し長い毛に覆われた耳を優しくもんで、親指を中に入れるとビクリと体が跳ねる。

「ちょっ……なに、……やめ」

 気付いたら、カナトはタクロウによって壁に追い詰められていた。
 耳を触りながら、腰を撫でつけてくる。
 足の間に膝が入り至近距離で密着されたカナトはパニックに陥った。
 なにより、耳を触られる度に駆け巡るのが快感だと分かり動揺が凄まじい。

「やめ、ろ……って!!」

 ぐっ……と肩を押すが、ビクともしない。
 顔を見るため上をむくと、違和感を感じたカナトは眉をひそめ、じっと顔を見る。
 すると、腰を撫でていた手が臀部に行き、ギュッと握ってきた。

「っ!! ちょ、おまえ! やめ……っ! んぁ?!」

 抵抗していたはずのカナトの力が抜けた。
 体がゆらぎ、前に傾くカナトを抱きしめながら、タクロウの手はまだずっと撫で、揉みこんでいた。

「やめっ……! っ、んっ……あぁ……ん」

 触る場所は一点だけ、尻尾の付け根だった。
 指先でさすり、クニクニと左右に降ったりギュッと握ったり。
 その度にカナトから甘い声が出て、足の力が抜けていく。
 唇を噛みしてなんとか抑えようとするが、尻尾への刺激が強く口が開く。

「や……、め……」

「…………そうだな、確かに感覚がありそうだ」
  
「! ……、そん、な調べ方す、る……ひつよう、ない、だろ!」

「…………いや、相性を調べるには大切だろう」

「なに、言って……」

 くぅ……と漏れそうな声を口の中にとどめる。
 これは、今までに感じたことが無い感覚で、抗うのが難しいと腰が揺れそうになった。

「っ、こんな、ことしてる、場合じゃな、ないだろ!!」

「…………そうだな」

 苦し紛れで言ったカナトだったが、思いのほかあっさりと手を離されて、密着していた体が離れた。
 火照った体は、離れた事で一気に冷たい風が吹き込む感じがする。

 力が抜けている体は支えを失って座り込みそうになった時、体を支えるのはタクロウで。
 恨みの籠った眼差しを送ると、困ったような苦笑が返ってきたのだった。


 5分ほと休憩をした後、広間に戻ったカナトとタクロウ。
 カナトは、先程のなんとも言えない雰囲気になったことに微妙な感情を抱えていた。
 耳や尻尾を触っただけだなのに大袈裟な程に反応したことは可笑しいのではないか、あんな声が出ただなんて……と、この現状の中なのに思考がぐにゃりと歪む。

 眉を寄せて考え事をしている時、そっと差し出されたのは、ペットボトルのお茶だった。
 変わらない表情で「ん」と目の前にあるお茶を軽く振ってきた。

「……ありがとう」

「お茶好きか?」

「え? まぁ」

 急に聞いてきた内容に、ペットボトルを口にくわえながら不思議そうに頷いた。




 このセーフティに入ったのは随分と早かった。
 入った際に問題は起きたが、それを差し引いたとしてもゆっくり出来る時間が取れるくらいには休憩が出来た。
 今回のセーフティは前回の一軒家とは違い、ガランとした室内に椅子と机、数本の飲み物があるだけの場所で言ったらハズレなセーフティの場所だった。
 トイレや洗面台があって良かったと安心したくらいに何も無かった。

 こんな場所でも命を繋ぐための大事な場所なので、有難く滞在したのだが。

 そんな安息の地が、もう時期無くなってしまう。
 22時までもう10分を切っていた。
 セーフティの場所が変わるから、そろそろ出る準備をしなくてはならない。

 この場には、現在5人の食彩がいる。
 先程の二人は憔悴していたが、それでも時計を見て怯え、移動の準備を初めて居たので大丈夫そうだ。
 先に来ていた女性は、原色の紫に近いポリスの格好をしていて、途中どこかで転んだのだろう。膝が痛々しく怪我をしていた。

 カナトも飲んでいたお茶を起き、ブーツの靴紐を結びなおしていると、扉を開く音が聞こえた。

 それに全員がビクッと体をふるわせて振り向いた。

 

 
 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!

くすのき
BL
最初に謝っておきます! 漬物業界の方、マジすまぬ。 &本編完結、番外編も! この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...