[完結]かぼちゃ頭と夜のハロウィン

くみたろう

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 鏡に中に映る自分の顔をみて、軽く頬を撫でた。
 その後、肩を落として深く長い息を吐き出した。
 目の前には使い終わったコップ。さっきまで口をゆすぐのに使っていたものだ。
 まだ半分ほど入っているそれを勢いよく流してため息をついた。

 嘔吐したことによる口腔内の不快感は少し緩和されたが、やはり思い出すとムカムカしてくる。
 ため息しか出ないこの状態に、頭を抱えると、触れる髪に違和感があった。

「……?」

 顔を上げて鏡越しに見ると、生えぎわに境界が無くなっていた。
 紫のウィッグが違和感なく地毛のように頭皮から生えている。
 それどころか、耳や尻尾を触ると感覚があるのだ。
 耳は擽ったいし、尻尾を触ると何だかゾクゾクする。チェシャ猫と同じようなコスプレではあるが、猫になりたい訳ではない。

 さぁ……と血の気が引いた。
 人体にも何らかに影響があるだなんて、タクロウもマリカも言っていなかった。

 これは、聞いていいものなのか。0時がすぎたら元に戻るのだろうか。
 別の不安が胸に広がっていく。

「……大丈夫か?」

 開いた扉に数回ノックするのはタクロウだった。
 壁に寄りかかって首を傾げながら聞いてくるタクロウに、小さく頷いて口元を拭う。

「……なぁ」

「なんだ?」

「この仮装の服とか、脱げるよな?」

「ん?」

「ウィッグが、地毛みたいになってるし、耳と尻尾に感覚があるんだ。これ、大丈夫なのか?」

「……感覚がある?」

 歩いてカナトの前に行ったタクロウの指先が伸びてくる。
 タクロウが優しくクニクニと耳を触ると、先程は擽ったかっただけなのに、今は痺れるような感覚が走った。

「んっ……」

 思わずもれた声に口を塞ぐと、タクロウの眼差しが仄暗く光る。
 腕で顔を隠すが、じわじわと赤く染まる顔はどう頑張っても隠せない。
 へにゃりと垂れ下がった耳には、まだタクロウの指先があって、視線を逸らしたカナトを見ながらまた指先を動かした。
 ふわふわと少し長い毛に覆われた耳を優しくもんで、親指を中に入れるとビクリと体が跳ねる。

「ちょっ……なに、……やめ」

 気付いたら、カナトはタクロウによって壁に追い詰められていた。
 耳を触りながら、腰を撫でつけてくる。
 足の間に膝が入り至近距離で密着されたカナトはパニックに陥った。
 なにより、耳を触られる度に駆け巡るのが快感だと分かり動揺が凄まじい。

「やめ、ろ……って!!」

 ぐっ……と肩を押すが、ビクともしない。
 顔を見るため上をむくと、違和感を感じたカナトは眉をひそめ、じっと顔を見る。
 すると、腰を撫でていた手が臀部に行き、ギュッと握ってきた。

「っ!! ちょ、おまえ! やめ……っ! んぁ?!」

 抵抗していたはずのカナトの力が抜けた。
 体がゆらぎ、前に傾くカナトを抱きしめながら、タクロウの手はまだずっと撫で、揉みこんでいた。

「やめっ……! っ、んっ……あぁ……ん」

 触る場所は一点だけ、尻尾の付け根だった。
 指先でさすり、クニクニと左右に降ったりギュッと握ったり。
 その度にカナトから甘い声が出て、足の力が抜けていく。
 唇を噛みしてなんとか抑えようとするが、尻尾への刺激が強く口が開く。

「や……、め……」

「…………そうだな、確かに感覚がありそうだ」
  
「! ……、そん、な調べ方す、る……ひつよう、ない、だろ!」

「…………いや、相性を調べるには大切だろう」

「なに、言って……」

 くぅ……と漏れそうな声を口の中にとどめる。
 これは、今までに感じたことが無い感覚で、抗うのが難しいと腰が揺れそうになった。

「っ、こんな、ことしてる、場合じゃな、ないだろ!!」

「…………そうだな」

 苦し紛れで言ったカナトだったが、思いのほかあっさりと手を離されて、密着していた体が離れた。
 火照った体は、離れた事で一気に冷たい風が吹き込む感じがする。

 力が抜けている体は支えを失って座り込みそうになった時、体を支えるのはタクロウで。
 恨みの籠った眼差しを送ると、困ったような苦笑が返ってきたのだった。


 5分ほと休憩をした後、広間に戻ったカナトとタクロウ。
 カナトは、先程のなんとも言えない雰囲気になったことに微妙な感情を抱えていた。
 耳や尻尾を触っただけだなのに大袈裟な程に反応したことは可笑しいのではないか、あんな声が出ただなんて……と、この現状の中なのに思考がぐにゃりと歪む。

 眉を寄せて考え事をしている時、そっと差し出されたのは、ペットボトルのお茶だった。
 変わらない表情で「ん」と目の前にあるお茶を軽く振ってきた。

「……ありがとう」

「お茶好きか?」

「え? まぁ」

 急に聞いてきた内容に、ペットボトルを口にくわえながら不思議そうに頷いた。




 このセーフティに入ったのは随分と早かった。
 入った際に問題は起きたが、それを差し引いたとしてもゆっくり出来る時間が取れるくらいには休憩が出来た。
 今回のセーフティは前回の一軒家とは違い、ガランとした室内に椅子と机、数本の飲み物があるだけの場所で言ったらハズレなセーフティの場所だった。
 トイレや洗面台があって良かったと安心したくらいに何も無かった。

 こんな場所でも命を繋ぐための大事な場所なので、有難く滞在したのだが。

 そんな安息の地が、もう時期無くなってしまう。
 22時までもう10分を切っていた。
 セーフティの場所が変わるから、そろそろ出る準備をしなくてはならない。

 この場には、現在5人の食彩がいる。
 先程の二人は憔悴していたが、それでも時計を見て怯え、移動の準備を初めて居たので大丈夫そうだ。
 先に来ていた女性は、原色の紫に近いポリスの格好をしていて、途中どこかで転んだのだろう。膝が痛々しく怪我をしていた。

 カナトも飲んでいたお茶を起き、ブーツの靴紐を結びなおしていると、扉を開く音が聞こえた。

 それに全員がビクッと体をふるわせて振り向いた。

 

 
 

 
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