The 25th Hour -祓霊庁第七支部事件録-

くみたろう

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第一章:ローズ街工場地区の事件録

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 ひとつの事件が終わった。
 第七支部に戻ったセラフィエルは、まず祈祷室へと向かう。
 仕事終わりのルーティンで、悪魔祓いが終わったら、セラフィエルはひとり静かに神に祈る。

 木製の柔らかな室内、丸い窓が設置されていて、部屋に入った正面には、巨大な神を模した像がある。

 祈る祭壇があり、セラフィエルはローブを払って膝を着いた。
 頭を軽く下げて指を組む。

 言葉はない。ただ、静かに祈るのだ。

    悪魔に刈り取られた哀れな命を、神のみもとへ導き給え。
 …………願わくば、優しい腕に抱いてください。

 怖かっただろう。
 突然襲われ、生きたまま体を貪られたのだから。
   セラフィエルは、悪魔祓いの度にこうして祈りを捧げる。天に召した命のために。

  「………………セラ」

「はい」

 祈るセラフィエルの後ろから、ジェイクが声をかける。
 開いた扉に指で音を鳴らしたジェイクに、セラフィエルはすぐに気付く。
 手を離し、白杖を持って振り向いた頃にはジェイクは目の前に来ていた。

 ジェイクは静かにセラフィエルの指先に優しく触れると、無言の時間が出来る。

「……………………失踪者が、見つかりましたか?」

「ああ。連絡がきた」

「そう、ですか。相変わらず仕事が早いですね」

 祓霊庁の職員であるセラフィエルやジェイクたちの仕事は、あくまでも悪魔祓いのみ。
 その後の現場の後始末は、祓霊庁と連携をとる悪魔管轄の警察の仕事なのだ。

 工場の奥、部屋の片隅に積み上げられた死体が24体、あったという。25人の犠牲者。ジョージはその最初の犠牲者で、体を奪われ使われていた。
 もう、今はその体すら残されていないが。
   残された24体からは、古いものほど腐敗臭がして、確認の時に顔を見たが、若い警察は嘔吐をするくらい酷い状態だったらしい。
 体の半分は食い散らかされており、日を過ぎていたため腐り落ちていた。
 そして、全員、恐怖に引き攣り泣き叫ぶ表情をしていたらしい。
  その中には、この事件の依頼に来た秘書のジェシカもいて、まだ体は暖かかったと報告が来ている。
 あの、最後の25人目。あの瞬間に、ジェシカは食い殺されたのだ。

「……大丈夫か」

「はい。いつもすみません」

「……祓い師だって、精神的にクるからな。俺にまで無理をする事はない」

 引き寄せられて、セラフィエルはジェイクに抱き締められた。
 この仕事を天職として働く人が多いが、悪魔との戦いは体力も精神も消耗する。
 すり減った精神をそのままにせず、神に祈る事で落ち着きを取り戻す祓い師も少なくない。

 悪魔は狡猾に、祓い師の中に忍び込み、内側から破壊しようとするのもいる。
 だから、祈祷室へと心を落ち着かせる時間も必要なのだ。

「………………ジェイク」

「なんだ?」

「フローズンコーヒーが飲みたいです」

「………………いま?」

「いま」

 セラフィエルのわがままに、「んー……わかった」と悩みながら返事したジェイクに、セラフィエルは笑顔を見せた。



 
---




 事件ファイル22

対象コード: ENV-IMP
脅威等級: 2(Trivial+)
発見地点: 第七支部管轄区域・ローズ街の工場地帯
備考: 小型憑依型悪魔。個人任務で対応可能
  内容: 名無しインプによる工場の占拠、汚染。25人の捕食確認。完全捕食ではないため一時的にレッサーデーモンに階級を上げる。交渉失敗、名付け行い、《ルフインレブル》とする。祓い師ニールアプレンティス級(Apprentice/ノービス)により討伐完了。
工場内汚染傾向(微)。聖水で清め済みのため危険なし。

 
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