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第二章:セントクレア郊外・少女憑依事件録
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しおりを挟む警察署内に、悪魔科という部署がある。
祓霊庁と警察は完全に管轄が違うのだが、お互いの仕事に深く交わる場所がある。
そのため、警察署内に祓い師専属の対応部署が設けられた。
悪魔関連の事件を担当する専門部署。
現場の封鎖・証拠確保・初動捜査を担い、その後は祓い師と連携を取る部署で、主な仕事としては_______
- 現場の悪魔痕跡確認
- 生存者・遺体の搬送
- 痕持ちの登録・監視
- 市民への秘匿処理や情報規制
等、多岐にわたる。
そんな悪魔科には、あまり新人が入らない。
悪魔に関わる仕事を怖がり倦厭されがちなのだ。 だから、派遣される痣持ちが大半で構成されている。
それでも、やはり1度はあの恐怖を味わっているから嫌がる痣持ちも多かった。
そんな中、久々に入ってきた新人2人。
マイヤー刑事は、大事に育てようと手を尽くしているようだった。
悪魔に関連する仕事場にはすぐに出さず、事務処理を中心にしていた2人が、今回初めて祓霊庁に来たのには訳があった。
「警察からの持ち込み案件か」
「ああ」
マイヤー刑事がカバンの中に入れていた書類を取り出してライオネスに預ける。
A4サイズの茶封筒に入っている書類を取りだして、じっくりと眺めていく。
「………………悪魔憑きか」
「聞いた限りだとその可能性があるんじゃないかなって思って」
祓い師が請け負う仕事は、大きく分けて2種類の間口がある。
ひとつは、前回のように依頼主がアポイントメントを事前に取り祓霊庁に直接依頼をするタイプ。
そしてもうひとつが、警察署に直接「助けてください!」と相談に来た場合。
この場合は、警察署内で内容を確認した後に祓霊庁に持ち込まれて、悪魔関連の仕事かどうかの判断を仰ぐのだ。
今回の依頼は、 セントクレア郊外にある一軒家。 そこに住む一人娘の様子がおかしいとの事だった。
トレイニー・コールマン 8歳。
4日前から、頬をかきむきる行為が始まった。
そこから奇声を発したり、暴れながらまるで男のような低くしゃがれた声で話をするようになる。
暴れる体を抑えると、柔らかさは全くなく、ものすごく強い力で簡単に引き剥がされた。
ふと意識が戻ったように周りの様子を見て泣き出すトレイニーの様子も書かれている。
書類制作は昨日なので、正確には5日前なのかとライオネスは頷いた。
「かなり高確率で悪魔憑きの可能性が高いな」
テーブルに書類を置いて、元々持っていたファイルを開く。
「………………24件目か」
ふむ……とライオネスは、ひとつ頷いてマイヤー刑事を見た。
「分かった、今回の件はこちらが受け負う」
「あぁ、助かったよ。まだ8歳の女の子なのになぁ」
マイヤー刑事は書類に添付された、あどけない笑みを浮かべるトレイニーを見て眉を下げる。
それに、その場にいる祓い師たち全員が、静かにその少女の写真を眺めた。
____________
セントクレア郊外。
大都市の中心から少し離れた郊外で、道幅は広く、住宅街と小さな公園、学校が点在しているセントクレア郊外。
古めの煉瓦造りの家や、木造の小規模住宅が混在していて、人との繋がりが強いどこか暖かな雰囲気がする場所。
通りには並木道が続き、現在15時、子どもたちの声や犬の散歩の人が目立っている。
穏やかな昼下がりに、祓い師としての正装であるローブを着たセラフィエルとジェイクが、新人2人に連れられて依頼主の家に向かっていた。
「…………穏やかな場所ですよね」
ポツリとエリオットの声がする。
今回は新人2人が対応するらしく、マイヤー刑事は同行していない。
初の現場だが、大丈夫だ! と自信満々に言うマイヤー刑事にジェイクは微妙な顔をしていた。
初めての仕事で、全てが上手くいくはずがない。
だからこその俺たちなんなんだろうな……と内心ジェイクは毒づいた。
「……どうしてこんな大都市から離れた場所を狙うんですかね」
エリオットが住んでいたのも郊外で、このようなのどかな場所だったようだ。
悔しさが滲んだ声がセラフィエルの耳朶を揺らした。
カツカツと、白杖で床を叩くセラフィエルは、ジェイクの腕を強く掴んだ。
チラリと視線だけがセラフィエルに向かう。その変化を目ざとく感じ取るセラフィエルは少し強ばった体から力を抜いた。
「少し奥まった場所や古い住宅街の方が、異常事態や怪異が発生しやすいんだ」
「そう、なんですか」
「……たしかに、悪魔出現場所の6割程は郊外だったり密集地が多いかも……なんでですか?」
少し考えるようにエリオットがいい、クラリッサは首を傾げる。
それに教えられてないのか……とジェイクが言ってから、2人の新人へ顔を向けた。
「悪魔の好む場所があるんだが、それが郊外やこの間の工場地帯も条件を満たしている。だから、悪魔出没率が高いんだ」
そういったジェイクに、悪魔出没率……と2人の声が重なった。
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