The 25th Hour -祓霊庁第七支部事件録-

くみたろう

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第四章: 新人教育

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 ここで神具の説明がされ、特に殺傷能力の高い直接的に攻撃する神具には、元々浄化作用がされている等、個別の効果があると伝えられた。
 三人は一般人では知りえない内容に驚気と共に興奮を覚える。
 武器や特殊能力には血が騒ぎ興奮する人が多く、この三人も例に漏れずで瞳を煌めかせた。

「それで、この神具を利用した戦闘スタイルが、さっき言ってたこの3つっていうことなんだよ」

 ホワイトボードにも書いた神具使いアルマ・デイ祈祷師オラトル複合型ハイブリッドの字の下に赤いペンで線を引く凌雅。
 誰よりも柔らかな声質の凌雅に、三人の視線が集まった。
 優しそうな笑顔に、ニコがホッと吐息を吐き出すと、甘やかな笑みが返ってきて、トクンと心臓が跳ねる。
 その様子を見たジュディの冷たい眼差しが凌雅を捉えていた。

 月島 凌雅。
 親切で穏やかな気質だが、その反面甘いマスクと甘言に女性の心を攫っていく。
 新も、またやってるよ……と呆れを含んだ顔で頬杖を付いた。
 ジェイクに向ける盲目的な感情ではなく、ポッと暖かくなる気持ちに薄らと心の一部に凌雅という存在が住み着いた。

 これは、ニコだけじゃない。多くの女性が陥る何とも悪烈な魔性の男だった。
 

「んん! まずお前たちには、この3つの性質を理解してもらい自分に合うスタイルを選んでもらう。それによって、戦闘の仕方が変わるからだ!  また、自分のバディのスタイルを知り、戦いの形を模索する為にも、全タイプ頭に叩き込むように!」

 凌雅の醸し出す甘い雰囲気を散らすように、アルベルトが咳払いをしながら本日のメインを話す。
 今後は、このスタイルに合わせた教育も入るので、早くに決めなくてはならないのだ。

 だが、言葉だけでは上手くイメージ出来ないのか、三人の表情は険しい。
 何となく理解は出来るが……と言った所だった。

「……ジェイク先輩はどのスタイルですか?」

 ニコは一度見た事のあるジェイクの戦闘スタイルを聞いてみた。
 実際に見たからこそ想像がしやすい。
 その質問んい、ジェイクはあっさりと答えた。

複合型ハイブリッドだ」

複合型ハイブリッド……ジェイク先輩は何を基準に決めたんですか?」

「元から複合型ハイブリッドと、神具使い《アルマ・デイ》の要素しか無かったから、すぐには決めないで現場を何度か経験してスタイルを決めたな。最初から神具は拳銃タイプを使おうと決めていたから、実際に扱ってみて使用時の様子を見極めた。リロードの時間のロスタイムが出るから、その間に祈りで効果を底上げさせた。弾丸や特製祈祷煙草サンクティタスは毎回購入する必要があるから、一発の効果を上げたかったのも理由にある」

 選択した時を思い出すように斜め上を見ながら話すジェイクに、新人三人だけじゃなく、全員がへぇぇぇ……と聞いていた。
 神具や戦闘スタイルを確定するのは簡単なことではない。
 一度決めたら、それをより磨くために切磋琢磨する必要があるので、コロコロと変えるものでは無いからだ。

「ちょっといいすか? 例えは考えているスタイルが、バディと相性の悪い感じだったら、どうなるんすかね」

 ノートに何度かペンでトントンとしながら首を傾げたリアムに、ジュディはこてりと同じように首を傾げる。

「そのための前衛、後衛よ。スタイルは違っても、前衛は攻撃重視、後衛はサポート特化が多いわ。だから、能力的な問題だったら滅多な事じゃ相性が悪いとかは無いはずよ。__例外は勿論いるけれどもね」

 チラリと視線を向けられたのはジェイクや新。
 中には、オールマイティに動ける祓い師もいるのだ。
 最初に前衛か後衛か決める時に、どちらも適性がある場合がある。
 そういった祓い師が稀に現れ、熟練度が上がると、どんなタイプの祓い師ともバディを組む事が出来る
 時に殉職した祓い師の穴埋めとしても動ける為、こういったどちらにも対応可能な祓い師はフリーの祓い師として重宝される。
 
 ヴァンガード級からフリーの祓い師となれる為、セラフィエルと組む前のジェイクもフリーの祓い師として登録されていた。
 だから、セラフィエルの固定砲台のような祓い師としての動きに対応出来ているのだ。

「…………そう、なんですね。ちなみにセラさんはなんなんですか?」

 興味本位に聞いてきたニコに、丁度飲み物を飲もうとストローをくわえたセラフィエルが顔を上げた。

「僕は祈祷師オラトルです」

 あまり対象者が居ないと言われている祈祷師オラトルが、思ったよりもすぐ側にいた事に三人は驚いた。
 元々盲目なセラフィエルがどうやって祓うのかと不思議に思っていた所での回答に、ニコは思わず口を噤む。
 体質によって出来る人と出来ない人が明確に分かれると教えられた祈祷師オラトル
 それをセラフィエルが行っているからこそ、一番に思いつくのは身体的ハンディキャップだった。
 だが、そんな事流石に口には出せない。

 だがここで、ニールとはまた違ったタイプの頭の足りない男、ティモフェイが口を開く。

「何かハンデがある人がなるのか? 祈祷師オラトルは」

 考えがそのまま口に出たのだろう。悪気なく言った言葉は、ジェイクのまとう雰囲気を変えた。
 あからさまにジェイクから怒りが滲みだし、目付きが鋭くなる。不快感はジェイクだけじゃなくジュディもで、眉に力が入り表情が険しくなった。

 ジュディが口を開こうとした時に、ティモフェイの後頭部に強烈な一撃が降り注がれ、「うぐぅ!! 」と悲鳴がもれる。
 かなり痛かったのだろう、目を細めて頭を抑え、机に額を当てるティモフェイはふるふると震えている。

「体質的な問題だと言っただろう阿呆。コイツのこの目は侵蝕痕であって体質じゃねぇ。あとお前、もう少し言葉に気をつけろ? 餓鬼みてぇに何でもかんでも思いついたことを言っていいわけじゃないからな?」

 グイグイと大きな背中を足で軽く蹴る新は相変わらずである。
 初対面であってもまったく態度を変えない様子にセラフィエルは苦笑した。 
 後頭部の痛みはありそうだが、苦痛に呻く様子はなく、大丈夫そうだと確認する。
 こんな大魔王なのに、なぜか場の雰囲気が悪くならないのは、東洋人の可愛らしい見た目からか、何なのか。
 少しの笑い声すら漏らしながらセラフィエルはティモフェイの言葉を否定した。

「違いますよ。祈祷師オラトルとは、神具を増幅装置のように扱う事で、他の2つよりも強力な祈りの力を宿くことが出来るようになります。力を宿す媒体を自らの体を使って行うスタイルの事を言います。」

「え、じゃあそっちの方がいいじゃないですか。何で皆さんやらないんですか?」

 ニコが目を輝かせて聞くと、ジュディは怒りを吐息で逃がしながら、そんな簡単な事じゃないのよ、と首を振った。

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