The 25th Hour -祓霊庁第七支部事件録-

くみたろう

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第四章: 新人教育

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 じわりと怒りを滲ませているジェイクの手を探し、優しく握って宥める。
 あまり怒りの雰囲気は好きじゃありませんよ? と、体を寄せて耳元で囁くセラフィエルに「分かってる」と言葉が返ってきた。
 そんな様子をチラリ見たジュディが言葉を繋ぐ。
 
「まず、これは体質的な事なんだけども。祈りはとても強力なもので、体を媒介にして簡単に使えるものでは無いの。神の力として借入れた力に体は蝕まれる結果となって、そのままにしていたら命を縮める結果となるわ。使えば使うほどに疲れだったり、体調が著しく悪くなるのよ」

 今まで聞いてきた中で、一番のハイリスクハイリターン。
 そんな自らを削る戦い方なんて、だれも選ばなさそうなのに。セラフィエルは自らそれを選んだと聞き、三人は目を見開いていたのだった。

祈祷師オラトルの条件とは即ち、神の力を宿しても壊れない適応できる体であるかどうかよ。その数は極めて少ないの」

「元々体の適応は勿論だが、昔は祈祷師オラトルを喰ったら階級が跳ね上がるなど馬鹿馬鹿しい迷信に踊らされた悪魔が祈祷師オラトルを狙って根こそぎ喰らい尽くした事が何十年と続いた。だから、そもそもなろうとする者が少ない上に…………体内に溜まる神の力の負荷で、悪影響を及ぼす肉体を定期的に浄化する作業が必要なのだ」

 最初に聞いた二つより、あまりにも注意事項が多い。
 その内容も中々ハードじゃないのか……とニコは説明してくれたジュディとアルベルトを見ながら恐る恐る手を上げた。

 
「…………あの、それを分かっていて、セラさんはどうしてそれを選んだんですか?」

「……一番は、見えない僕にも出来る祓い師としてのスタイルだったからです。武器タイプの神具を使用しても、直接的な攻撃は現実的に僕には難しいのです。かと言って、十字架などの近距離では、緊急時回避出来ません。何よりジェイクが許してくれませんでした」

 思わず苦笑して言ったセラフィエルに、ジェイクが当然だろうを、声を挟む。
 まったく、と、思わず笑ってから唇を湿らせて話し出した。

「何より体への負担は辛いものです。ですが、緩和する方法もあります。いずれバディが祈祷師オラトルになるかもしれません。フリーの方と組む時もあるでしょう。その時に最低限の対応方法を知って頂けたら、僕としては嬉しいです」

「勿論、祓い師としての等級や、スタイルによって個別に差があるの。だから、誰が相手であれ常日頃からコミュニケーションをとっておくのをオススメするわ」

 組んだことのない人と急遽組むこともこの世界では良くあることよ、とジュディに聞かされて、全員が何か考えることがあったようだ。
 書きかけのノートを見つめながら、ニコが三種類のスタイルが書いてある場所を、ペンでトントンと軽く叩いた。


 新から休憩の声がかかった。
 あまり時間が経っていない感じがしていたが、既に二時間が経過していたのだ。
 ニコは立ち上がり、セラフィエルの前に来る。

「聞きたいことがあるんですけと、いいですか」

「はい、勿論」

「あの……出来たら、祈祷師オラトルの話を聞きたくて」

 まだ迷っている様子があるが、ニコにはよく分からない祈祷師オラトルという存在を知りたかった。
 それは、やはりジェイクのバディを諦められなかったから。
 資格があるなら、自分も祈祷師オラトルになりたいと思っているのだ。

「私にも、祈祷師オラトルになる事って出来る……?」

 その声は随分と響き、近くにいた人たちの視線を集める。
 セラフィエルは首を傾げて微笑んでから口を開いた。

「説明にも有りましたが、体質的な適性が無くてはどうとも言えないのですが……」

「……適性は、どうやって調べるんですか?」

「適性検査は、センチネルの方に立ち会いして頂き確認をするんですよ。その確認は時間がある方が対応して下さいます」

 それを聞いて直ぐにニコはジェイクを見た。面倒そうな雰囲気がすぐに漂ってきて少し息を吐く。
 この祈祷師オラトルについて、一番話さなくてはいけない内容を先程に教育の時間に伝えていないのだ。

「……祈祷師オラトルの適正があってもやりたがらない人が多いんだが、その理由を聞いてから適性検査をする方がいいと思うぞ」

「……理由?」

 それは、接触を多分に必要とする行為が含まれているから。
 その意味をしっかりと理解しているのならニコが祈祷師オラトルを選択する事に否定はしない。
 ただ、その選ぶ契約相手を誰に望むのか、なんとなく予想が出来るのでジェイクは気分が重い。

 「体内の循環を整えるのに他人に手を借りる必要が出てくる。その内容が体液の交換なんだが、それが出来るか? これが出来ないと祈祷師オラトルが緊急時、危険な状態になる。だいたいはバディがその役割を担うんだが、お前の場合はジュディに頼む必要があるな」
 
 「た、体液交換?!」

 「これが祈祷師オラトルの適正があってもやらない理由だ。自分自身は勿論、この契約をする相手が良しとしなかったら意味がないからな」

 新人三人は目を見開いた。体液交換、それはどんな方法で行っているのか。
 ニコは茫然とした表情のまま、セラフィエルを見た。それは、ジェイクが納得してセラフィエルとの体液交換を行っていると言っているのと同義だ。

 「セラさん、もしかしてジェイクさんと……」

 「契約していますよ」

 初めて聞く人は驚くだろう。たとえ体の為とはいえ、夫婦や恋人ではない人と身体的接触をするのだから。
 だが、古くからこの業界に身を置いていたら不思議なことではない。それほど、儀式というものが多種多様で、様々な効果を発揮するからだ。

 まさかの内容に、ニコは勿論他の二人も驚き混乱している様子だった。
 
 
 

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