67 / 69
第四章: 新人教育
閑話
しおりを挟む点字の書類に目を通す。
本日も新人教育の対応ではあるのだが、それは常に張り付いているわけではない。
セラフィエルたちもやらなくてはいけなことはあるのだ。
前回の事件について、やはり悪魔召喚をしたことの重大さをしっかり理解していなかったトレイニーの現状は、やはり父親からの抑制が強く、恐怖のあまりの出来事であった。
女性刑事が身体確認を行ったところ、悪魔からの攻撃によるものか虐待からくるものか分からないほどの裂傷や打撲痕があったという。
悪魔災害被害者達の身体確認を数えきれないほどしてきた彼女も、今回は酷かったという感想しか出なかったようだ。
まだ目が覚めていないトレイニーについては、まずは体を癒すところから始まるだろう。
父親、母親に関しては、すでに精神錯乱が診られているらしい。
常日頃から、鬱憤を幼いトレイニーに向けるしか心の平穏を保てなかったチャールズは、元から臆病者だったようだ。
そんなチャールズに虐待される母、マーガッレトも、日々の恐怖と守れない娘に対しての懺悔。それでも、娘に向ける贖罪。
どちらも親になるにはあまりにも稚拙で身勝手だった。
場所は違えど、同じ建物内で更生するためにそれぞれ辛い生活が待っている。罪を認め、贖罪の日々を送るだろうし、トレイニーには浸蝕痕が顔にくっきり残るだろう。それは、生涯消えることはない。
きっと、これから三人で暮らすにはあまりにも長い年月が必要になる。
それがトレイニーにとって良いことなのか、悪いことなのか、確定など出来はしないのだが、少なくとも悪魔召喚をしようとした時のような限界状態にはならないだろう。
「何を見てんだ」
点字の書類は、さすがにジェイクには理解が出来ない。
じっくりと読み込んでいたセラフィエルに視線だけを向けるジェイク。そのジェイクの手元には祓魔リバルバーがあって、分解掃除を行っていた。
使用時に不都合がないように、定期的に手入れを行っている。
「トレイニーさんの現状報告ですよ」
「ああ、まだ意識が戻らないんだってな」
「はい。早く目を覚ませばいいのですが」
「あれだけ負担がかかってる状態で耐えてたんだ。そう簡単には目も覚めないだろう」
ガチャと音が鳴り、祓魔リバルバーを組み立てたのが分かった。
乗っ取られて衰弱したトレイニーは、体の回復が追い付いていない。
「目が覚めたらお見舞いに行きたいですね」
「目が覚めたらな」
パサリと、書類を新しいファイルに閉じて息を吐く。
まだ幼い少女に科せられた罪は深く、悪魔からの刻印は色濃い。
彼女の将来は狭められ、悪魔関連のものしか就職は出来ないだろう。それが今後彼女にとってどう作用するのかはわからないが、セラフィエルは、先に通じる道に光あれと願うことしか出来なかった。
32
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
終焉の晩餐会:追放される悪役令息は、狂欲の執事と飢えた庭師を飼い慣らす
河野彰
BL
かつて、ローゼンベルグ家の庭には白薔薇が咲き誇っていた。嫡男リュシアンは、そのバラのように繊細で、風が吹けば折れてしまいそうなほど心優しい青年だった。しかし、名門という名の虚飾は、代々の放蕩が積み上げた「負の遺産」によって、音を立てて崩れようとしていた。
悪役になり切れぬリュシアンと彼を執拗にいたぶる執事のフェラム、純粋な愛情を注ぐ?庭師のルタムの狂気の三重奏。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
お腹いっぱい、召し上がれ
砂ねずみ
BL
料理研究家でαの藤白蒼は幼なじみで10個下のΩ晃と番になった。そんな二人の間に産まれた照は元気いっぱいな男の子。泣いたり、笑ったり、家族の温かみを感じながら藤白家の日常が穏やかに進んでいく。
そんな愛する妻と愛する息子、大切な家族のお腹いっぱい喜ぶ顔が見たいから。蒼は今日も明日もその先も、キッチンに立って腕を振るう。
さあ、お腹いっぱい、召し上がれ。
【完結】異世界はなんでも美味しい!
鏑木 うりこ
BL
作者疲れてるのよシリーズ
異世界転生したリクトさんがなにやら色々な物をŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”(๑´ㅂ`๑)ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”うめー!する話。
頭は良くない。
完結しました!ありがとうございますーーーーー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる