サクリファイスⅡ~2人のジーヴス

くみたろう

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第1章

孤独

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いつもそばに居た人が居ない、 胸にぽっかりと穴が開くとはこんな感じなんだ…

そう思いながら、 自室のベッドに呆然と座り込む少女、 クーフェン。
彼女は15歳の時から一緒にいるジーヴスが居なくなり気力をなくした。

スタンピード
それは大量のモンスターが現れ街を飲み込んでいく。
既に村や里が飲まれたと聞いていた。
だから、 戦闘力のあるジーヴスが止める。

種族の有無の関係なしに、 戦えるからと言う理由で決まったジーヴスの参戦にクーフェンは最後までサテライトが行くのを嫌がった。


だって、 嫌な予感がしたんだ。
サテラが帰ってこないような、 そんな予感。

サテライトは、 他のジーヴスは行ってるのに俺だけ行かない訳には行かないとそう言っていた。

「……私の場所を守ったって……君がいなきゃ意味が無いじゃないか!」

写真を握りしめて言うクーフェン。
力が入りすぎて写真は歪み涙がぽたぽたとたれている。
写真を伝って床に落ちる涙をクーフェンは足で拭った。

スタンピードが来てから3日たったがクーフェンは帰らないサテライトへのショックをまだまだ受けていた。



泣き疲れて眠ったクーフェンが目を覚ました時、 シワシワの写真を顔の横で握り締めていた。
笑っていた筈なのに、歪んだサテライトは困った顔をしている。

「……君はいつも、 私をそんな顔で見てたよね…困ったご主人だって頭を撫でてさ……

最初君を買った時はそれはそれはボロボロでさ!私の話なんかちっとも聞いてくれやしなかったよね!すーぐにかしずくし、 私の顔を見ないし!……まぁ、 そう調教されてたんだろうけどさ」

写真を伸ばしながら言うクーフェン、 だれも聞いてはいないのにそれでもサテライトとの思い出を話し続けた。

忘れないように、 まだここにサテライトがいるかのように。

そして、 今冷静になって考える。
サテライトが居ないのはとても悲しい。
だけど、 ボロボロになって帰ってきたベルライナに私はなんて言った?


「……私、 最低じゃないか」


頭を抱えてうずくまるクーフェンは、 すぐに立ち上がり走り出した。
アポなんて取ってない。
だけど、 それ以上に謝りたいんだ。
私たちリアルドを死ぬ気で助けてくれた、 必死で帰ってきてくれたジーヴス達に、 ベルライナに。

両親と、 両親のジーヴスがいきなり部屋から出てきたクーフェンに目を丸くした。

「クー!あなた 、 もう大丈夫なの?」

「大丈夫なんかじゃないよ!今も胸が引きちぎれそう!でも、 同じくらい傷付けた友人に私!謝らないといけないんだ!!」

バタバタと走っていき家を飛び出したクーフェンに、 母親は慌てて追いかけようとするが小説を片手に持つ父親が眼鏡を外しながら言った。

「ちょっ……クー!?」

「母さん、 行かせてやりなよ」

「お父さん!」

「クーフェンの顔を見たか?泣き腫らした顔をしてたがちゃんと前を見る意志の強さがあったろ?前のクーフェンと同じように。止めても無駄だろ」

「……………大丈夫、 かしら」

あまりの憔悴ぶりに母親は心配していた、 その泣き腫らして浮腫んだ顔をした娘を。
でも、 確かにクーフェンの顔は生気が戻っていた。

「………少しは元気になったのかしら」













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