18 / 588
目指せ 牧場経営物語
「うむ!素晴らしいのではないか!」
芽依は預けられた牧場の様子に満足そうに笑った。
日々少しづつ場所を整地し必要な物を管理人メディトークと共に揃えていく。その過程で失神する位に驚いた巨大蟻にも慣れて普通に話をするくらいまで芽依は態度を軟化させた。
広々としていた敷地内の中には建物が新しく出来ていて充実した職場環境が整えられている。
物凄いホワイトな職場が完成していた。
実は、セルジオを含めた様々な人に移民の民は本当に帰れないのか?と再度確認したが皆口を揃えて帰れないと否定されている。
それならば、芽依は元の世界への帰還を諦めこの場所で少しでも居心地のよい地盤作りに邁進した結果が素晴らしい施設を作り出すきっかけとなったのだった。
どう庭を発展させるのか、ある程度の方針は決まったのだが芽依の一番のやりたい事の準備がまだ出来ていなかった。
一番やりたい事、それは芽依のこよなく愛するお酒関連、さらには日本食の再現である。
色々と工夫をしてくれて以前よりも食べれるようになってはいるのだが、やはりお米が恋しい。
そして、大好きなお酒や、美味しいおつまみが欲しいのだ。その為には先立つものが必要である。
「飲めないなんて、死んだも同然」
無いなら作ればイイじゃない!という単純明快な考えを持った芽依の職場は生憎牧場である。
卵、牛乳等の乳製品に各種肉を作りたい放題。
好きなだけこだわっておつまみを作り、その為に必要な資金はお仕事と共にがっぽりする予定だ。
他にも農業も出来るから、探し出したらお米がどこかにあるかもしれない。
日本食には欠かせない調味料もなんとかしたい。芽依の8割りは煩悩で出来ていた。
「そういえば、移民の民が移動出来るくらいだからなにか運んだりとかは出来ないの?」
大きな俵型の藁を持ちメディトークに聞くと、丁度搾乳中の手を止めて大きくバツをして答えてくれた。
「ダメかぁ」
『この世界に移民の民以外の異物を入れたら世界の均衡が崩れっからな』
「私の均衡が崩れそう」
『なんだ、なんか欲しいのか……?あ?故郷の味?……あー、なるほどなぁ』
どこからともなく取り出したコップになみなみと入っている牛乳を芽依は受けとった。
普通の牛乳よりも少し黄色味が強くトロリとしている。
「ありがとう……メディさん、たまらないこの美味しさ」
『そりゃそうだろ、こいつはガガディの特濃ミルクだからな』
「あ、本当素晴らしいレア素材」
穏やかな眼差しで乳絞りをさせている雌牛、ガガディ。
雌牛の中でもレア種であり、とても濃厚な『特濃ミルク』を作り出す。
1日10Lしか作れないガガディの特濃ミルクは、芽依の恩恵を受けて50Lまで増量していた。
しかし、ガガディは高い。
普通の雌牛の20倍程の金額が購入時にかかる為、メディトークと相談し初回は2頭のみとした。
このガガディは繁殖のしない種であり更に購入後3ヶ月しか生きられない個体なのだ。
3ヶ月が経つと自動的に消えてしまうらしい。
なので、その前にガガディのお肉を美味しく頂くのがガガディの飼育方法のようだ。
かなり美味しい肉になるらしく芽依は今からヨダレが止まらない思いだ。
「…………ジャーキーになるんだよ、美味しいプルコギやユッケになるんだよ、楽しみにしているからね」
まだご存命のガガディの体を優しく叩きながら酒の肴になるのを心待ちにする芽依にガガディは哀愁を漂わせ、メディトークは低くいい声で「いい酒で乾杯しようぜ」とヤル気だ。
そして、牛乳工房に運ばれた特濃ミルクと、通常種のディの搾乳した牛乳は加工されチーズやヨーグルトに変わる。
こちらは買った工房が自動で作ってくれるのだが、つくる種類も豊富で選ぶことが出来る。
今はスタンダードなプレーンヨーグルトと、バニラヨーグルトを作っていて、チーズはプロセスチーズと蕩けるチーズの作成中だ。
バニラヨーグルトを作る為に生クリームも作成中である。
工房にもっとお金をかけれるようになったら種類を増やしたい。
まだまだ芽依の煩悩は尽きることは無い。
更に豚の放逐場所を見に行くと、こちらも元気に走り回り足がギュッと引き締まっている。
いい豚肉になりそうだ、とほくそ笑むと、やはりメディトークも豚肉にはなんの酒が合うか……と考え込んでいる。
こちらは良い酒友達になりそうだ。
いつか夜に月見酒をしたいと言うといい顔でまかせとけ、と張り切っていた。蟻だが。
次は鳥である。
すでに卵を産んでいて10個入りケースに生卵が入っている。
生まれた卵はそのまま卵ハウスと呼ばれる建物に収納されケースに入れられていく。
それがベルトコンベアに運ばれてダンボールに入れられるのが卵ハウスの仕事らしい。
お金は掛かるが人経費は掛からないので初期費用さえ頑張れば後は楽になる。
初期費用は素晴らしき領主様のアリステアが払ってくれているのだが、メディトークと話し合いあれこれと買った芽依の納品書と領収書に顔を引き攣らせていた。
時期にプラスにしてみせるから、と庭に来てその搬入量の多さに愕然とするアリステアにメディトークと共に拝み倒し了承を得たのだった。
「もう卸先見つけてくれてるんだよね?」
『既に契約は終わってるよ、昨日搬入済み。喜べよ、品質良好で予想よりも高く買取してくれた』
「メディさん素敵!卵パーティしなきゃね!」
『半熟味玉ならもう用意済み、冷えてるな』
「うわわ!楽しみすぎる!」
『そのうち燻製所買うか、燻製卵作れっからよ』
「はぁぁ……酒がすすむヤツだ」
『任せとけ、いいヤツ作ってやるからよ』
メディトークのあまりにも男らしい姿に芽依はメロメロになりながら、黒光りするメディトークの体にしがみついた。
「酒仲間、さいっこう……」
『しがみつくんじゃねーよ』
メディトークが牛乳工房の冷蔵庫からタッパを持ってきた。
そこには綺麗に色付けされている味玉が行儀よく並んでいてツヤツヤと輝いている。
『食ってみろや』
「……いただきます」
ゴクリ……と生唾を飲み込み1口食べるテカリのある卵は黄身がトロリと半熟で甘さが際立っていた。
さらに味玉の味付けが素晴らしく、正しくご飯3杯は軽くいけそうだ。
「………………メディさん、この味付けって……」
『なんだ、苦手だったのか?』
「違うの、これ私が生まれた場所の味に凄く似てる」
『食べ慣れた味か!そりゃ良かったじゃねぇか!てことはよ、似たような調味料があるってことだな』
まってろ、探してやるから。とやる気をだすメディトークに心の底から嬉しく思った。
なんて心強い同業者を手に入れたんだ!と酒が絡まなければ比較的冷静で叫ぶこともない芽依がメディトークの前で弾けていた。
『これはよく使う調味料のひとつだから、また作ってやるよ。同じ店の調味料も試してみっからまってろよ』
「…………メディさん、すき」
こうしてメディトークの力を借りつつ食事の改善を図る芽依。
いずれは日本の心、米にたどり着けることを願って次に買いたい施設の乗っているパンフレットを眺めるのだった。
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました
恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」
交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。
でも、彼は悲しむどころか、見たこともない
暗い瞳で私を追い詰めた。
「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」
私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、
隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!