[第一部完結]美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

文字の大きさ
40 / 588

定例会議 4

しおりを挟む

 今までにない2組の移民の民達が穏やかに話、笑いあっている姿を全員が見ていて信じられないと目を見開いている。

「…………わらってる」

「ナギサ?」

「どうして私はこんなに孤独なのに……寂しくて寂しくて仕方ないのに……死にたくなるのに」

 ツーと流れてきた涙にパートナーは目を見開きハンカチで涙をふいてあげている。
 なぜいきなり泣き出したのか分からなくオロオロしている所にアリステアが近付いてきた。

「…………何をしているのだ」

「アリステア様、プリンやヨーグルトをおすすめしたらカオスです」

「……」

 なぜプリンやヨーグルトでこんな状況になるのだ、と目が物語っている。
 しかしその答えは芽依から帰ってこないのだがアリステアが挨拶して回った移民の民の数人の表情が少しだけ変わっているのには気付いていてた。

「…………ナギサ最近の様子はどうだろうか、恙無く生活は出来ているか?」

「アリステア、私たちはいつもと変わりは無い。それよりこの新しい移民の民はなんなんだ、浮気はするわ私の花嫁に手を出すわ。なぜ諌めない、パートナーはどうした」

「浮気って……ここの常識は本当に困ったもんですね」

 はぁ、と息を吐き出しテーブルからヨーグルトを取っての蓋を開けた芽依は、ガミガミ騒いでいる人外者をアリステアに任せナギサの前に来る。

「はい、あーん」

 唐突にトロリとしたヨーグルトを差し出されナギサは涙で潤んだ目を見開いた。

「……え」

「ヨーグルト嫌い?」

「……好きよ」

「じゃあ、はい、あーん……口開ける!」

「えっ!はい!…………美味しい」

「美味しいものは笑って食べよう、はいどうぞ」

 あまりにも無反応だったので埒が明かないと無理やり口に入れた芽依に驚きながらもナギサはそれを食べた。
 ユキヒラみたいに自分から話しかけてくれるくらいギリギリでも頑張ろうとしてくれたなら無理やり口にねじ込む事はしなかったのだが仕方ない。

「…………久しぶりに……久しぶりにヴィラルキス以外と話をした……こんなに楽しい事だったんだよね……ヨーグルトとっても美味しいよ」

「…………どうしようセルジオさん胸がギュッとして泣きそう」

 うるっ……とする芽依の側にそろりと1人、また1人と近付いてくる移民の民。
 その人達はあの場所でユキヒラたちを見ていた人で緊張しながら近付いてきた。どうやら伴侶は止めたりしなかったようだ。

「……なんなんだ、なんで……」

  ナギサの伴侶、ウィラルキスは集まりだした花嫁や花婿に呆然とすると小さく笑ったナギサを見て目を見開く。
 初めて会った時の綺麗だと言って見せてくれた弾けるような笑みは数ヶ月で消えて、1年経った今会話すらあまりしない。
 最低限しか動かないナギサに悲しい思いをヴィラルキスもしていたのだが、芽依はそんなナギサを一瞬で動かした。
 それが信じられなかったのだ。

「………………メイが教えてくれた、あれが移民の民への正しい接し方のようだ。日に日に笑みをなくして無気力になるのは、メイ達移民の民は病に掛かるようなもののようだぞ。常識が接し方が、何もかもが私たちとは違うようだ」

 花嫁や花婿達は、定例会議に出席する前に徹底的に他者との繋がりを切られていたようだ。
 話すな近づくな触れるな着いていくな。
 守るために言われ続けた言葉や力に雁字搦めになった花嫁達は定例会議で合う同胞にすら話し掛ける事が出来なくなっていた。
 まだ来て数ヶ月や 1番新しい数週間の人ですら表情は陰っている。

 そんな時に現れた伴侶の居ない芽依という存在は花嫁達に昔当たり前であった日常を思い出させてくれた。
 ユキヒラと話していたのが1番効果が高かったのだろう。
 芽依に促されて自分で動き出し皿に食事を取る様子は、それすらも見ない光景だったのだろう、ウィラルキスだけじゃない皆が驚いていた。
 少しづつ笑みが戻りだし自分の意思で動き、中には食べ物を取り分けサーブしている姿に浮気だと騒ぐ人外者はいなかった。
 いつの間にか移民の民が全員集まり、話していなかった為の拙い会話をしながらも談笑している姿。それは花嫁や花婿がずっと望んでいた事で、やっと触れ合う事が出来て泣き出す人もいる。それぞれが慰めあっていて、そこにはやっと手に入った幸せがあった。

「ねえセルジオさん!みんな笑っていた方が幸せでしょ!」

 みんなで集まって話していた芽依は振り向き少し声を張り上げて言うと、眩しそうに目を細めたセルジオが小さく笑った。

「…………ああ、そうだな」





 こうして移民の民への認識を少し改めた領主と移民の民を呼んだ人外者達が自分の伴侶が笑う姿に感化され話をし触れ合う事を少しずつだが増やしていった。
 まず最初は移民の民同士でと、集まり話す場を設け、少しずつだがこの世界の人間や人外者とも話をし始めた。
 しかし、やはり等価交換が基本で捕食対象である事に変わりは無いので、パートナー達の気苦労は倍増されたらしい。
 しかし、日に日に笑みを増やしていく大事な伴侶に満更でもないようだ。
 そしてアリステアの領民や人外者たちは移民の民への対応を改める様言われ戸惑いながらも態度を変えていった。
 少しずつ元気を取り戻し他領や他の国から追随を見せないほどの移民の民の生存率を誇ることになる。
  
 それは、今後この領地に現れる移民の民の幸せを考え束縛を禁じ自由に過ごす努力をしたから。
 しかし、国の保護を受けないアリステアの手から離れてしまっている移民の民にはなかなか伝わらず、変わらない自我の喪失や自殺者は後を絶たないという。
 いつか、移民の民に優しい世界になって欲しいのだと芽依はアリステアに話していた。




 
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

処理中です...