420 / 588
プレゼント交換
カナンクルでは毎年行われるプレゼント交換。
芽依はプレゼントを渡したい人の人数がそれなりに多いためケーキセットにしようと考えていた。
様々な仕掛けが出来るこの世界のケーキ。
それをこっそりと用意するのが楽しみの一つだし、1年に1回の対価を必要としないプレゼントを貰える日だ。
誕生日ともまた違う嬉しい日。
「………………あれ、誕生日ってお祝いしてないね」
ふと思い出す芽依。
この世界に誕生日という概念はあるのだろうか。
いや、歳をとるからあるのだろう。
それをお祝いすることが無いのかもしれない。
「ねぇフェンネルさん。皆は誕生日のお祝いはしないの? 」
「誕生日のお祝い? なぁに、それ」
「あ、知らないのか」
首を傾げて聞くフェンネルに、常識の違いがまたひとつ。
「私たちは誕生日おめでとうってお祝いをするの。ちょっと豪華なお料理に、プレゼント貰って生まれてきてくれてありがとうって」
「………………へぇ、素敵なお祝いだね。生まれてきてくれてありがとうかぁ」
「うん。でも、みんなは無いんだね」
「うん、そもそも誕生日って年初めにみんな迎えるでしょ? 」
「……………………なるほど、昔の日本的な感じか」
つまり生まれ月や日は関係なく、元旦にみんな歳をとる考え方が主流のようだ。
個別の誕生日は存在しなく、一律みんな歳をとる。
そこにお祝いをするという概念はない。
「私たちは生まれた月日を誕生日としてお祝いしてるんだよ。だからみんなそれぞれバラバラなんだぁ」
「生まれた日ぃ? …………覚えてないなぁ。もう2000年以上前だし……」
ここで初めて聞いた年月に芽依は吃驚した。
そういえば、最初にセルジオが言っていた。
人外者の最上位ともなれば寿命はないようなものだと。
そう思うと、メディトークもシュミットもそうなのだ。
まだ3人より年若いハストゥーレは中位の妖精の為寿命が決まっているようなもの。
そんな4人から祝福を受ける芽依の寿命も、既にいくらかわからない。
たぶん、殺されない限り死ぬことはないだろう。
「………………私、凄い人達と家族になったんだね」
「え? 僕って凄いの? 」
キョトンとするフェンネルは、2000年を超える期間を生きた妖精には見えないくらい美しく透明だ。
普段一緒に芋を掘っているとは思えないくらい綺麗な妖精。
「…………うん。凄いね。そんな果てしない長い時間を過ごすのはしんどい時もあるでしょ? 」
フェンネルの大事な友人だって見送ったし、胸が軋む思いも沢山したんだろう。
フェンネルは優しすぎるから、それを消化出来ないこともあったのだろうな、と芽依は艶やかなフェンネルの頬を撫でる。
「……なぁに? 」
「ご褒美。2000年も頑張ってきたフェンネルさんに」
「…………うん。僕ね思うんだ。きっとこの長い年月を狂っても生き続けたのはね、メイちゃんに会うためだったんだろうなって。いつか、僕が死ぬ時はメイちゃんの手で殺して欲しいな」
「それは無理だよ。どんな事があっても私がフェンネルさんを殺すことなんてないよ」
「…………そっかぁ、じゃあ僕は未来永劫メイちゃんの隣にいるんだね。こんな幸せな事ってないね」
ギュッ……と抱き締めて芽依の頭にフェンネルの頭を乗せる。
小さくふにふにする芽依を抱き締めて、息を吐いた。
「僕、メイちゃんの奴隷になった時に一生分のプレゼントを貰ったね」
「……可愛いなぁ、フェンネルさんは」
「えー? 」
クスクスと上機嫌に笑うフェンネルに、芽依も笑った。
寂しい人生を送っていたフェンネルには、奴隷という暖かな場所と、愛おしいご主人様のプレゼントでもう隙間もないくらいに幸せいっぱいだ。
「そんなフェンネルさんには、今年も素敵なプレゼント」
そう言って渡したのは、雪の降る日に同じ毛布に包まれて眠るフェンネルと芽依が砂糖菓子で飾られた可愛らしいケーキだった。
目を輝かせてそれを見るフェンネルは、すぐさま時間停止をする。
「大事に飾るね!! 」
「いや、食べて? 」
こうして、フェンネルだけでなく家族や庭の住人、領主館にいる人たちやセイシルリード、ニアにヘルキャット、ユキヒラたち移民の民とその伴侶等、お世話になっていた人達ひとりひとりに用意したケーキを渡した芽依は、幸せな気持ちで胸をホコホコさせた。
頂いたプレゼントは、大体は消耗品だった。
可愛らしいハンドクリームだったり、良い香りバスボムだったりと芽依を大層喜ばせる。
カナンクルだからと解禁された酒に酔った芽依がバスボムを持ってハストゥーレの腕に絡みついた。
「えへへへぇ、良い香りだよぉーお風呂行こっか、お風呂ぉぉぉ」
「ご主人様……あの、引っ張ってはいけません……あの……」
お風呂場に連れていかれるハストゥーレをすぐさまフェンネルが回収してメディトークの有難いお叱りが開始されるのもいつもの事だった。
あなたにおすすめの小説
【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。
夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。
真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。
そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。
数量は合っている。
だが、なぜか中身の重量だけが減っている。
違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。
そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。
しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。
それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。
「では、正式な監査をお願いいたします」
やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり――
隠されていた不正はすべて暴かれる。
そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。
これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、
“正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。