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年末に向けてのお節準備
カナンクルが終わると一気に年末年始のムードに変わる。
お節というものが無かったこの世界に芽依が準備したものだから、その爆発的な人気は凄まじい。
色鮮やかな料理が1つのお重にまるで芸術品のように並ぶ。
ツヤツヤ光る豆や栗きんとんはあまりこの世界では食べられていなかったが、お節で口にした人達は、まるで取り憑かれたように食べていたようだ。
「うまぁ! 豆うまぁ!! 」
「うまっ!! うまっ!! 」
さつまいもが出来た事で作れた栗きんとんも、かなりの人気である。
最初は甘いじゃがいもで代用したが、やはり栗きんとんとはいかなくて。
さつまいも凄いと目を輝かせたのも懐かしい思い出だ。
その爆発的な人気の為に今年は栗きんとんと煮豆は別売りも準備した。
「…………やっぱり、工場ほしいね」
フェンネルが、んー……と言いながらお重にいれる。
食べるだけじゃなく、行事の際の販売量が最近格段に増えメディトークたちだけで作るには限界が来ている。
数日前から作ってはいるが量が多い為にメディトーク、フェンネルにハストゥーレの3人体制だ。
その間は芽依が庭の手入れを一任している。
箱庭があるからこそだし、なにより料理では完全なお荷物だ。
「工場ね、早く買わないとなぁ」
「来年の害獣騒動が終わった頃には工場が買えるぞ。すぐに買うのは2機分だな」
パソコンで収支を出すと、黒字がずらりと並んでいる。
シュミットが来たことにより、シュミット個人資産も端の方に書いてあり金額は倍増。
その額は計り知れず、工場2個分どころか10個分買ったとしても揺らがない。
「な…………なんと、凄い金額」
「俺のもついでに入ってるが……メディトークとフェンネル、ついでに一切使ってないハストゥーレの溜め込んだ給料も入れたら計り知れないぞ」
「……………………え、こわ……てか、個人財産は入れないで?! 」
芽依は首を振ってパソコンからシュミットの欄を消そうとするが、すぐに手首を掴まれた。
「全額ではないから気にするな」
「全額じゃない?! これで?! え、こわ……」
「…………何千年生きてると思ってる」
「メイちゃんねぇ、いくら言ってもお金使ってくれないんだよねぇ。僕はメイちゃんのなんだから、遠慮しないで使ってくれたらいいのに」
シュミット同様使い切れない程に溜め込んでいるフェンネルが唇を尖らせながら言った。
「いやいや! あくまでこれはお仕事だから! 個人資産は共有財産じゃないからね?! 」
芽依が慌てるように言うが、そもそも物欲のないハストゥーレや芽依以外に使い道がないフェンネルなんかは増える一方だし、既に何千年生きているかわからないメディトークやシュミットは崩壊した国を一から作り直しても有り余る財産を所有している。今さらなのだ。
「………………で、どの工場買うかはセイシルリードと相談だな、予算は? 」
『気に入るのがありゃなんでもいいだろ?』
「上限無しだな」
「ねぇ、聞いてる? あれ? 」
勝手に話が進んでいく。
最初は芽依がワイン工場を無断で買って怒られたのに、シュミットが加わり更に手を広げられるようになった庭運営は既にメディトークとシュミットの独断と偏見で運営されそうだ。
良いものならなんでもいい、金に糸目はつけない。全ては芽依の為に。
「ねぇ、金額凄すぎて怖いって……」
ハストゥーレの服を握ってメディトークたちを指差す芽依にハストゥーレは苦笑する。
そんな困ったような笑みすら出来るようになったハストゥーレを見上げていると、フェンネルも隣に立つ。
「もうさ、メイちゃんが大好きだからメイちゃんがやりたい事させてあげたいんだよ。工場購入はメイちゃんがやりたいって最初に言ってた惣菜販売に必要だからね」
「え、もうみんな大好きすぎてどうしてくれるの……」
眉をひそめて言う芽依に、フェンネルは笑う。
「来年楽しみだね」
「うん……でも、いつでも買うとか甘やかさないでね」
「……………………うん」
なんだか含み笑いするフェンネルが間を置いて頷いた。
(………………なんか買ってそう)
芽依はじとっと見ているが、ニコニコしているだけのフェンネル。
その笑顔を見ると、仕方ないなぁ……と笑ってしまう。
『よし、ほらお節作んぞ』
「はーい」
用意されたお重は1段、2段、3段と3種類あり、人数で好きに選んで貰えるようにしてある。
予約数はそれぞれ200個を上限に予約受付したら直ぐに予約枠いっぱいになってしまった。
足りないと言ってくる人もいるし、貴族からは500個注文などとカテリーデンに言いに来る人もいたのだ。メディトークが追っ払ったが。
「あとは茶碗蒸しだね」
お重は綺麗な雪景色のイラストが描かれているのだが、茶碗蒸し用の陶器の器は可愛らしいキャラクターものだ。
ファンシーなウサギの女の子がフリフリのワンピースを着て、スカートを翻しているものだった。
カナンクル用パッケージを売ってくれた人の所で買ったのだが、芽依が作るお重を真似て販売する売り子が増えたらしくお重販売に需要があるのだとか。
「今年は色んなお重がありそうだよね」
「そうだねぇ」
「業務用の蒸し器もいるな」
「あれ、いきなり……」
茶碗蒸しの個数を見て考えるシュミットは無意識に呟いていた。
どうやら来年は、新しい工場が増えそうだ。
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