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愛を叫ぶ
まず、なにを重点的に調べるのかと全員で話し合った所、やはり登ることについて調べる事になった。
独り言のように話すのは無意識に今1番して欲しいことやイラつく事を言っている可能性が高いんじゃないか、と話し合った結果だ。
片足がないヴィラルキスは少し休んで足の回復を先にしようということでお留守番となった。
これにミンミンが一緒にいると駄々を捏ね時間を消費させた。
駄々を捏ねて行かないと言うミンミンにミリーナが冷めた目を向ける。
「帰えれるか帰れないかの瀬戸際で必死に動いているのに、君は何もしないつもりか? 」
「うっ……」
騎士の迫力は凄まじい。
ビクッ! と体をすくませて何度も頷いたミンミンに早くしろ! と腕を掴んで引っ張っていく。
はぁ……と芽依は関心して見てからヴィラルキスの隣に行った。
「何か軽食置いていきますよ。どれくらい時間がかかるか分からないから、時間潰しにでも」
「寝てるから構うな」
「駄目ですよ! 貴方は元気に帰らないといけないんですから! 」
キッ! と睨んで言う芽依を黙って見ているヴィラルキス。
そして、小さく頷いた。
「……そうだな、帰らないといけない。こんな場所で死ぬ訳にはいかないからな。足なら明日には回復するだろうから……血をよこそうとするなよ」
「………………わかってます」
苦笑して頷いた芽依。
どうしても必要なら食事に混ぜようかとも思ったが、そんな事をしたらヴィラルキスも依存して大変だし、家族が怒り狂うだろう。
芽依はそんなことはしないと頷いてから立ち上がった。
「安静にしててくださいよ? 」
「私はガキか」
「ふふ」
笑ってヴィラルキスの頭を撫でてから芽依は離れていった。
ナギサにすらされた事のない頭を撫でる行為に呆然としている間に家の中には誰もいなくなっていた。
「いいのかい? あんなことをして」
「どんなことですか? 」
「ヴィラルキスの頭を撫でてじゃないか。あんなのを見たら独占欲しかないようなアイツらが怒るんじゃないかい?」
「…………頭、撫でてました?」
「無意識かい? 」
「…………おっそろしい、毎日ハス君撫でてたからかな……」
手をワナワナさせる芽依を面白そうに見ているリリベル。
芽依は、私の天使ぃぃぃ!! ごめん! 浮気じゃないからぁぁぁ!! 私の天使はハス君フェンネルさん少年だけだよー!! と空に向かって叫ぶ。
そこにニアがちゃんと含まれているあたりが芽依である。
「…………何がいいんだよ。人外者は所詮俺たちとは違うだろ。考えも俺に向ける執着や対応の仕方も、存在そのものが違いすぎるだろ! なんだよ! こっちに来たら来たで話が全然違うじゃねぇか! 自由なんか一つもない! 意味わかんねぇ独占欲しかねぇじゃねーか!! 」
手を握り締めて叫ぶ翔真に、トーマスは青ざめる。
だが、その顔は同意見らしく瞳に力が宿った。
芽依はそんな2人を見て、うーん……と悩む。
「種族の違いは日本人とか、アメリカ人とか……それくらいの違いでしか考えてなかったからあんまり気にならなかったんだよね。もう見た目から違うから同じ人種とは思えないし、そもそも人外者だし。独占欲とかは今更だし……」
「だろっ!! だから! だからさ、ここから出たら一緒に暮らそうぜ!! 俺がお前の生活サポートするからさ! 部屋だって、今も汚ぇんだろ? 不摂生なんだろ? 俺が見てやるから!! 」
「部屋……汚いのかい? 」
「汚くないですっ!! セルジオさんがいるのに汚いわけ無いです! いつでもピカピカです! 」
「……それはセルジオが片付けてるって事かい? 」
「おっと、口が滑った」
パチッと口に手を当ててリリベルから顔を逸らす。
ママなセルジオは、いつも勝手に片付けをして服の整理から下着の管理までしている。
女子として如何なものかと感じるが、既に至れり尽くせり過ぎて言葉もない。
これに関しては独占欲の塊なメディトークですら口を出さなかった。
かわりに、家族からは沢山の服や下着がセルジオに持ち込まれてセルジオの額に青筋が浮かんでいるのを芽依は知らないのだが。
「とにかく、私はその独占欲も含めて家族が好きで好きで愛してるからいらない世話だよ、翔真。彼らなら私、何されてもいいし。なにより移民の民を本当の意味で大事に慈しむのって伴侶だけだと思うよ。私の場合は家族だけどね。激重なのは認めるけど、あんなに愛してくれて自分しか見ない可愛い生き物なんていないよ? ちゃんと向き合ってみれば? 」
「………………なんだよそれ!! 」
芽依を睨み付けて叫んだ翔真に、ため息がもれる。
「俺の時はそんな事言わなかったじゃねーか!! 何が違うんだよ! 何がお前を動かしたんだよ!! 」
「存在そのものが愛おしくてたまらないの!! 今すぐ噛みつきたいくらいに!! 」
「…………か、かみつ……え? 」
「…………またいらないこと言った。あー、もう! 早く帰りたい!! 」
ドスドスと足音を立てながらリリベルの手首を掴んで歩いていった。
ポカンと芽依を見る翔真とトーマス。
そして、興味深そうに芽依を見ているアーシェにミリーナ。
ミンミンだけが、ヴィラルキス狙いじゃないと分かってホッとしていた。
そして、この会話を聞いていた会場はザワついていた。
人数が纏まりだして、芽依たちの傍には既に大半が集まっている。
映し出される姿は芽依を含めてそのグループが多いから、会話も自然と多く会場に映されていた。
「………………あのバカ」
『そう言う割には嬉しそうじゃねーか』
「…………嬉しくないわけじゃない」
『素直じゃねぇなぁ』
「さすが芽依ちゃん、大好き!」
「ご主人様……早く撫でて欲しいです」
会場中に響く大声で家族愛を叫んだ芽依。
皆に溢れるくらいの愛情を伝えていた芽依だが、いない場所でも惜しみない愛を叫んでいたと知ってシュミットは耳まで赤らめている。
メディトークは当然だなと笑い、フェンネルはニコニコご機嫌。
ハストゥーレは、撫でて欲しいとほんのり頬を赤らめて微笑んだ。
4人全てがヴィラルキスの出現に驚き、頭を撫でた姿にぶち殺そうと思っていたが、ハストゥーレを撫でていた弊害から来たと知り、4人はスン……と無表情になった。
全員がむしろヴィラルキスが哀れだな……と感じていた。芽依だからである。
「……撫でるなら私にしてください」
「本当だよね、浮気かな」
天使2人は少し不機嫌になったものの、浮気じゃないと叫んだ芽依に、また、ふはっ! と笑った。
離れて不安しかないのに、画面を通していつも通りすぎる芽依に安心する。
大丈夫、絶対に帰ってくる。
4人がほっこりしている時、会場は様々な感情が渦巻いていた。
実際に移民の民である翔真の心の内が叫ばれ、会場にいる移民の民の伴侶たちは、無表情で動かない大切な伴侶の姿を慌てて見る。
黙って芽依達のやり取りを見ていた人外者は慌てだし必死に伴侶に声をかけるが反応はない。
また、これから召喚したいと思っている人外者は色々と考え出す。
芽依みたいなタイプは珍しいのだ、大体が自我を失う。 なら、どうするべきかあの移民の民に聞くべきか……など、様々な思惑が渦巻き出した。
既に芽依の存在は知れ渡り、ドラムストの移民の民が穏やかに笑っているのも知っているからこそ春呼び祭りから移住を検討する伴侶の人外者も出てきていた。
そんな中、実際に芽依を見て家族に愛を叫ぶ姿に衝撃を受けた。
中には、そんな芽依が欲しいと目を細める人もいる。
分かりやすい変化にメディトークの機嫌が下がっていった。
そんな場所で、思わぬ伴侶の気持ちを知った翔真の伴侶は気絶しそうなくらいのショックを受けていたのだった。
「……まったく見向きもしてないのは分かるが、元カレか……」
「殺しちゃう? 」
『場合によってはありだな』
「…………毒キノコ等山から採取しましょうか」
目を据わらせた4人が静かに話していたのを翔真の伴侶が聞いて身震いしていた。
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