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第八章 寂しがりやに、さようなら
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「なら、アタシが残ってぶっ倒すわ。タイシを持って先に行きなさい、ユウ」
「いらないよっ! 最初にタイシを拾ったのはミサキなんだから、最後まで責任を持って面倒を見ないと駄目だろ?」
「犬猫だと思うから、重い責任が生じるのよ。これはバトン、ただのバトンよ。ほらほら、オーバーハンドがいいの? それともアンダーハンド?」
「ど、どっちかと言えばアンダーのほうが得意だけど……いや、騙されないから。最初から受け取らずに走ることを選んでるからな、僕はっ」
「大声で俺を押し付け合うのはやめろ。ちなみにバトンパスが行えるのは、テイクオーバーゾーン内だけだ。そして俺の中では、ゾーンはもうとっくに過ぎている」
「なんでバトンが勝手にルール決めてるのよっ」
ぜーぜー、はーはー。今のやり取りだけで、明らかに自分たちの体力を削ってしまった。呼吸を整えるため、三人揃ってしばしの無言タイムを設けてから、改めて口を開く。
「という訳だ、ユウ。兵士たちを連れて行くなら、突き当たりを左に進め。その先にある公園なら、噴水が利用できるうえに人気も少ない」
「! ……わかった!」
「はあ!? 勝手に話を進めてるんじゃないわよ、アタシは納得してないわよっ」
タイシの一票がユウに入ったことで、流れが完全に変わった。この勢いのまま押し通してしまおうと、ユウが声を張り上げる。
「ミサキ、お願い!」驚いて丸くなった双眸と、正面から目を合わせた。「僕にも、かっこつけさせて」
体と心の中心に一本の太い芯が真っ直ぐ通っているミサキは、人の信念も大事にできる。兵士を引きつけて走り去ったエリヤのことを引き合いに出せば、ぐぬぬぬぬと薄い唇をひん曲げた。たっぷり時間をかけて悩み、やがて諦めたように大きな溜息を吐き出す。
「……遅刻なんかしたら怒るからっ」
「大丈夫。何度か試したことがあるけど、今まで一度も成功したことがないんだ」
しばらく二人で睨めっこをしてから、同じタイミングで吹き出す。ミサキを味方につけられたのなら、怖いものはなにもない。
「バトラー、マコトとエリヤに音声通話。現状報告と、噴水公園までの地図データを送信。それと、AIインフォメーションへ迷子の捜索依頼だ」
ケータイフォン型のデバイスに向けて、タイシの適格な指示が飛ぶ。迷子という、この状況下で出てくるには、あまりにもそぐわない単語が少しだけ気になったが、詳しく問い質している時間も余裕もない。
「了解シマシタ。マスターハ大丈夫デスカ? モウ虫ノ息デスカ?」
「言いたいことはなんとか伝わるけど、それにしたってアンタのバトラー辛辣すぎない?」
ミサキの突っ込みが綺麗に刺さったところで、とうとう長い道の突き当たりが迫ってきた。右へ進めば野外音楽堂。左に進めば噴水公園。
「無理はせず、救援が来るまで耐えろ。絶対に公園からは出るな」
「了解。そっちも気をつけて」
分岐点で立ち止まったユウは振り返り、ミサキ、タイシと続けて片手でハイタッチをする。野外音楽堂への道を走っていく二人の後ろ姿を見送り、兵士たちが自分を追ってくることを確かめると、そのまま噴水公園を目指して駆け出した。
「いらないよっ! 最初にタイシを拾ったのはミサキなんだから、最後まで責任を持って面倒を見ないと駄目だろ?」
「犬猫だと思うから、重い責任が生じるのよ。これはバトン、ただのバトンよ。ほらほら、オーバーハンドがいいの? それともアンダーハンド?」
「ど、どっちかと言えばアンダーのほうが得意だけど……いや、騙されないから。最初から受け取らずに走ることを選んでるからな、僕はっ」
「大声で俺を押し付け合うのはやめろ。ちなみにバトンパスが行えるのは、テイクオーバーゾーン内だけだ。そして俺の中では、ゾーンはもうとっくに過ぎている」
「なんでバトンが勝手にルール決めてるのよっ」
ぜーぜー、はーはー。今のやり取りだけで、明らかに自分たちの体力を削ってしまった。呼吸を整えるため、三人揃ってしばしの無言タイムを設けてから、改めて口を開く。
「という訳だ、ユウ。兵士たちを連れて行くなら、突き当たりを左に進め。その先にある公園なら、噴水が利用できるうえに人気も少ない」
「! ……わかった!」
「はあ!? 勝手に話を進めてるんじゃないわよ、アタシは納得してないわよっ」
タイシの一票がユウに入ったことで、流れが完全に変わった。この勢いのまま押し通してしまおうと、ユウが声を張り上げる。
「ミサキ、お願い!」驚いて丸くなった双眸と、正面から目を合わせた。「僕にも、かっこつけさせて」
体と心の中心に一本の太い芯が真っ直ぐ通っているミサキは、人の信念も大事にできる。兵士を引きつけて走り去ったエリヤのことを引き合いに出せば、ぐぬぬぬぬと薄い唇をひん曲げた。たっぷり時間をかけて悩み、やがて諦めたように大きな溜息を吐き出す。
「……遅刻なんかしたら怒るからっ」
「大丈夫。何度か試したことがあるけど、今まで一度も成功したことがないんだ」
しばらく二人で睨めっこをしてから、同じタイミングで吹き出す。ミサキを味方につけられたのなら、怖いものはなにもない。
「バトラー、マコトとエリヤに音声通話。現状報告と、噴水公園までの地図データを送信。それと、AIインフォメーションへ迷子の捜索依頼だ」
ケータイフォン型のデバイスに向けて、タイシの適格な指示が飛ぶ。迷子という、この状況下で出てくるには、あまりにもそぐわない単語が少しだけ気になったが、詳しく問い質している時間も余裕もない。
「了解シマシタ。マスターハ大丈夫デスカ? モウ虫ノ息デスカ?」
「言いたいことはなんとか伝わるけど、それにしたってアンタのバトラー辛辣すぎない?」
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「無理はせず、救援が来るまで耐えろ。絶対に公園からは出るな」
「了解。そっちも気をつけて」
分岐点で立ち止まったユウは振り返り、ミサキ、タイシと続けて片手でハイタッチをする。野外音楽堂への道を走っていく二人の後ろ姿を見送り、兵士たちが自分を追ってくることを確かめると、そのまま噴水公園を目指して駆け出した。
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